第227話 「たまに間違えますわ」
──ザシュ!
「ぐっ……。」
人狼王の爪を喰らい、追い込まれていくベルモント将軍。
「ああっ……。」
既に身動きが取れず、防戦一方となっているベルモント将軍の姿に、ラミスは悲痛な声を上げた。
……やはり"王の名を持つ獣"には、たとえ"剣王"であっても勝利する事は出来ないのだろうか?
そう心配するラミスに、クリストフは静かに話し掛ける。
「ご覧下さい、姫様。ベルモント将軍の、あの目を……。将軍の目は、まだ死んではおりません。将軍は待っているのです。反撃の機を───。」
「……え?」
クリストフ将軍の言葉に驚き、ラミスはクリストフの顔を見上げた。その瞬間───。
──ザシュ!
"剣王"の刃が人狼王の体を撃ち貫く。
「ガ、ガル……ガフッ。」
──ドサッ。
力尽き、その場に崩れ落ちる人狼王。金色の毛並みを持つ、その"王の名を持つ獣"は"剣王"の刃に貫かれ、そのまま動く事は無かった。
「勝った……のですの?」
これで終わったのだろうか?……いや、まだ楽観は出来ない。
まだ、あちらには人狼王を超える真の化け物。
──ヘルニア帝国の"剣王"が居るのである。
もしバラン将軍が敗れてしまう様な事があれば、事態は非常に不味い状況へと追い込まれてしまう事だろう。
ベルモント将軍の元へと駆け寄るラミス。
「…………。」
将軍の傷が酷い。ベルモント将軍は人狼王の爪により、至る所に深手を負っていた。
姉ナコッタに宿る神々の力"転送の力"の制限もあり、転送と治療が出来ないのが痛い所である。
しかし、今なら───。今なら、バラン将軍とベルモント将軍の二人掛かりなら、必ずヘルニア帝国の"剣王"に勝つ事が出来るのだ。
連戦続きで申し訳無い所ではあるのだが……。ラミスはベルモント将軍にバラン将軍の救援を、お願いする事にした。
「あの、ベルモント将軍……。お疲れの所、大変申し訳無いのですが───。」
「姫様っ、御下がりを!!」
──!?
突如クリストフに呼び掛けられ、ラミスは慌てて振り返る。
……そして、その異様な存在にラミスも気が付く。
先程の人狼王よりも、更に恐ろしい何かが近付いて来るのを───。
「ま、まさか……。」
ヘルニア帝国の"剣王"が!?……まさか、バラン将軍が敗れたと言うのだろうか?
「…………。」
その近付いて来る恐ろしい何かに備え、三人は身構える。
「グルルルルルル……。」
──!?
獣の唸る様な鳴き声……。いや、そんな筈は───。
そこに現れたのは、新たな色の毛並みを持つ、一体の獣───。美しく流れる様な色をした。緑色の毛並みを持つ、人狼の姿だった。
「人間風情ガ、少シハヤル様ダナ……。」
──!?
人語を理解する人狼!?……ラミスは唐突に理解した。
つい先程まで戦っていた黄色の毛並みを持つ人狼は、人狼王ではなく───。
この人語を解す、緑色の毛並みを持つ新たな人狼こそが、真の人狼王〈ウェアウルフキング〉なのだと。




