第226話 「制限が厳しいのですわ」
「ナコッタお姉様。すぐに二人の救出を、お願い致しますわ。」
「分かったわ、ラミス。」
神々の力"転送の力"で転移する、リンとゲイオス。後はミルフィーに任せれば大丈夫だろう……。
ラミスは辺りを見回し、再度状況を確認する。ヘルニア兵士は問題ない。人狼達の方も、あらかた片付いた。
つまり残すは、ヘルニア帝国の"剣王"と……。
──人狼王〈ウェアウルフキング〉のみである。
ヘルニア帝国の"剣王"とは今、バラン将軍が闘っている。……そこはバラン将軍を信じて全てを任せ、勝利を祈るしかない。
もう一方、人狼王の方はどうなっているのだろう?……とラミスはベルモント将軍の心配をし、人狼王の気配が漂う方向へと走り出した。
──ドガガガガガガガガッ!!
そこには素早い動きで翻弄する人狼王の姿と、その動きに苦戦するベルモント将軍の姿があった。
壁を蹴り、驚異的な速度で跳弾の如く飛び回る、金色の毛並みを持つ人狼王。……それは到底、人間には不可能な動きだった。
「ぐっ……。」
人狼王は、その凄まじい動きでベルモント将軍を防戦一方へと追い込んでいた。
辺りには夥しい数の、人狼の亡骸が転がっていた。恐らくベルモント将軍が倒したのだろう……。その大量の亡骸がベルモント将軍の強さと、この戦いの壮絶さを物語っていた。
そんなベルモント将軍を一方的に追い込む人狼王の強さに、ラミスは絶望を感じずにはいられなかった。
「うう……。」
何処からともなく、微かな人の声がラミスの耳に届く。ラミスは辺りを見回し、その声の主を探す。
「スレイヴ将軍ですわ。」
そこには怪我を負い、動く事が出来ないスレイヴの姿があった。
「お姉様。もう一名回収を、お願い致しますわ。」
ラミスは急いで"伝達の力"を使い、姉ナコッタに呼び掛ける。
「分かったわ、ラミス。……それで、誰を転送させればいいの?」
「スレイヴ将軍ですわ、お姉様。」
「…………。」
しかし幾ら待てども、スレイヴが転送される事は無かった。
──!?
……一体、どうしたと言うのだろうか?一向に転送されないスレイヴに、疑問が過るラミス。
「……お姉様?」
「ごめんなさい、ラミス。どうやら名前だけでは"転送の力"が使えないみたいなの……。」
「……えっ?」
神々の力"転送の力"に、そんな制限があったのだとラミスは驚いた。……どうやら、その事を姉ナコッタも知らなかった様である。
スレイヴ将軍は"剣聖"の称号を持つ実力者である。ミルフィーに宿る神々の力"治療の力"で回復すれば、かなりの戦力になる事だろう。
……スレイヴ将軍の治療が出来ない事を知り、ラミスは寂しそうな表情で憂いていた。




