第221話 「やってしまいましたわ」
「……分かりました、姫。」
クリストフはそう言いながら剣を手に、静かにリンの元に歩み寄った。
「お姉様……。」
目を背け、両手で顔を覆い隠すラミス。
「…………。」
……しかし、ラミスは何か大事な事を忘れている気がした。
「……はて?何か、大事な事を忘れている気がしますわね。……何だったかしら?・△・」ら?
頬に手を添えながら、可愛く首を傾げるラミス姫様。
……ラミスは必死に思考を巡らせながら、膨大な過去の記憶の中から違和感の元を探し始める。
「……あっ!」
きゅぴーんと閃き、ラミスは何かを思い出す。
「待ってですわー!クリストフ将軍!!」
その事を思い出し、ラミスは慌ててクリストフを制止する。
──時は少し遡り。
北の街で何時もの様に、ラミスの部屋で仲良く集まる四人姉妹。……それは四人で話し合い、今後の対策を練っている時の事だった。
「ナコッタお姉様に宿る神々の力は、ホースデール王国での戦いで大事な鍵になりそうですわね。でも"転送の力"は素晴らしい力なのだけれど……。術者本人である、ナコッタお姉様に使用出来ないのは残念な所ですわね。」
「……そうね。」
ラミスは頬に手を添えながら、何時もの様に困ったお嬢様ポーズを取る。
「それに、"守護の力"も一人だけなのも残念ですわねぇ……。私に使ってしまうとミルフィーに使えないから、ミルフィーの身が危険に晒されてしまうわ。……ミルフィーが居れば"治癒の力"が使えて、とても便利ですのにねぇ。」
「あら、それなら問題無いわよラミス。」
「……え?」
「えーと、私とミルフィーがツインデール公国に残るでしょ。そして、ラミスとリンお姉様がホースデール王国へ……。」
「ふむふむですわ……。」
「それで誰か怪我人が出れば"伝達の力"を使って私に教えてくれればいいのよ。……そうすれば、怪我人だけを"転送の力"で回収して、ミルフィーの"治療の力"で回復が可能なのよ。」
「あ……。」
そう、このミルフィーをツインデール公国に残しておく編成こそが万全の状態であり、防御面を考慮した最高の布陣だったのである。
……つまり姉の力で転送させれば良いだけなので、わざわざ姉の首を斬る理由は何一つ無かったのである。
その事を思い出し、ラミスは慌ててクリストフ止めに入った。
「お待ちになって、クリストフ将軍!」
──ザシュ!
……しかし時は既に遅く、姉リンは斬られドサリと地面に崩れ落ちる。
「…………。」
……あー。
「……姫、すぐに"蘇生の力"をお願い致します。」
……あー。
「……姫様?」
やってしまった……。両手で顔を覆い隠しながら固まってしまうラミス姫様。
……ごめんなさい。そう心の中で、何度も姉に謝り続けるラミス姫様であった。




