第211話 「お手入れを、欠かしておりましたわ」
「と言う訳で、またまた久しぶりにゲイオスと闘いますわ!」
……むふー、と意気揚々なラミス姫様。どうやら、ご機嫌は回復した様子である。
──だだだだだだだだだっ!
疾風の如く草原を駆け抜け、西の村へと到着しゲイオスと相対するラミス姫なのだが……。ゲイオスの様子が、いつもと違っていた。
「……ぐっ。貴様、一体何者だ?」
シャララーン♪
怯えるゲイオスに対し、くるくると華麗に舞いながらポーズを決めるラミス姫様。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。容姿端麗、頭脳明晰、才気煥発、博覧強記、英明果敢、天地神明、驚天動地、拍手喝采、不撓不屈、万里一空、縦横無尽、勇往邁進、雲外蒼天、百花繚乱、明鏡止水、万里不屈、神姫鳴動、才色兼備、羞花閉月、山紫水明、眉目秀麗、傾国美女、国色天香、戦姫絶唱、仙姿玉質、画竜点睛…………(以下約、一京二八五八兆五一九億六七六三万三八六七文字省略)~のツインデール公国第三公女、天下の大プリンセス。プリンセスラミスですわー!!」
最早、余裕の表情でドヤるラミス姫様だった。……いや長い、長すぎます姫様。しかし律儀に待つ"凄腕の剣士"ことゲイオスさん。
ここは、やはり"お約束"なのだろう。
……おほほほほと、笑みを浮かべるラミス姫だが、ゲイオスは呼吸を荒げ恐怖に怯えていた。
「あっ!?」
何かを思いだし、お口をあんぐりと開けるラミス姫様。
「私とした事が、御髪のお手入れを少々欠かしておりましたわ。」
……くしくし。
一体何処から取り出したのか、ラミスは爆走して乱れた髪を手鏡と櫛でくしくしと、お手入れをし始める。
「……ぐっ。」
目の前でくしくしする"化け物"の存在に、ゲイオスは恐怖で身動き一つ取れなかった。
……しかしゲイオスは、その強烈なまでの恐怖を自らの殺気で上塗りをし、化け物と闘う覚悟を決め剣を抜く。
「ここで退けば、剣士の恥よ!!」
ゲイオスは目にも止まらない、高速の斬撃を放つ。
「あら、ゲイオスさん。少々お待ち頂けるかしら?」
──びたっ!
ラミスは手鏡を見ながら、ゲイオスの方を一度も見ずに高速の刃を指で摘まんでいた。
念入りに、髪の確認を怠らないラミス姫様。
「…………。」
「お待たせ致しましたわ。それでは、始めましょうか。……"凄腕の剣士"さん。」
……にっこり。
「…………。」
「…………。」
「……ほえ?どうしましたの凄腕の剣士さん?」
──ガチャリ。
「……投降する。」
剣を捨て、とうとう諦めてしまった"凄腕の剣士"ゲイオスさん。
「……ほえ?」
強くなり過ぎてしまったラミス姫様でした。
「腰が入っていませんわよ?もう一度、最初からやり直しですわ!」
「はっ、姫様!!」
……何故か屋敷の雑巾掛けに勤しむ"凄腕の剣士"、ゲイオスさんだった。




