第210話 「悟りの境地に達しましたわ」
『42175回目』
日々、鍛練に励むラミス。死に戻った回数は五十回と、少ない回数ではあるのだが……。ラミスは北の街に居る三日の間、修行に励む事が出来るのである。
……単純計算、ラミス姫の目隠し修行の日々は既に半年近くが経過していた。
『42225回目』
ラミスは更に鍛練を重ねグレミオに勝利し、そして次はギリアムへ挑んでいく。
──ラミスは誓う。
必ず心眼を会得し、蛇王を倒すのだと。それまで一切の弱音を吐かず、どんな辛い修行にも耐え凌ぎ……。
必ず、自らの拳で蛇王を打ち倒すのだと。
……そう、心に誓ったのである。
『42625回目』
ラミスの死に戻りの回数は、実に五百回にも及んでいた。ラミスは約四年以上もの間、心眼を会得する為に、常に厳しい鍛練に耐え続けていたのである。
ある日、ラミスは唐突に全てを理解した。ラミスは悟りの境地に達し、そしてこの世の真理を理解したのである。
そしてラミスは、遂に───。
……転がった。
「ムリですわー!」
……ごろごろごろ。
「もう諦めましたわー!!」
……じたばた、じたばた。
「目隠しをして闘うなんて……。目が見えない状態で、あの様な化け物と闘うだなんて……。ムリにも限度がありますわー!!」
……じたばた、ごろごろ。
「もうやだー!蛇ヤダー!!ミルフィーの気持ち分かるー!今なら痛い程、分かるぅー!ミルフィー、好きー!!」
……ごろごろ、じたばた、じたばた。
涙を流し、ぎゃん泣きするラミス姫様。
今なら……。この永遠に続くバジリスクタイムと、蛇王との闘いの日々を知れば、たとえミルフィーで無くとも確実に蛇の事が大嫌いになる事であろう。
……ラミスは絶望に打ち拉がれていた。いや、最初から分かっていた事なのだ。
公国が誇る最強の"剣王"の称号を持つバラン将軍ですら全く歯が立たず、為す術もなく敗れ去る伝説の怪物に……。
武の経験が全く無い、麗しい可憐な姫君が闘える訳が無かったのである。
最初から、分かっていた事なのだ……。
ラミスの心は絶望の渦に飲み込まれ、そして奥深くへと沈んで行くのだった。そしてラミスの闘志の火は燃え尽き、ラミスは二度と立ち上がる事さえ出来ない状態にまでに陥っていた。
「フヒヒヒヒヒヒィ……。久しぶりだなぁ、姫。」
「オルァアア!!プリンセス"マグナム"!!」
──ドゴォ!!
ラミスは牢獄の檻を蹴り飛ばし、"マグナム"で壁と言う壁を全てブチ抜いた。
「ヒィィィィィィイイー!?」
その驚きの光景に飛び上がり、腰が抜けるポンコツトリオの三人。
──つかつかつかつか。
ラミスは冷ややかな視線でポンコツ三人を見下ろし、王子達に近付いていく。
──ビクゥ!!
「ヒイィィィィ……。ゆ、ゆるじでー!!」
「…………。」
ラミスは王子の前でぴたりと足を止め、無言で見下ろす。そして……。
──ぱーん!
「もうやだー!蛇やーだー!!」
泣きながら平手打ちで王子を吹き飛ばし、更に拳でぼこぼこにするラミス姫様。
──チーン。
「ふぅ……。私とした事が、少々取り乱しましたわ。おほほほほほほ……。」
お手々を優雅に添えて上品な、お嬢様ポーズで微笑むラミス姫様。
ぼこぼこに、されながらも……。
「これの何処が、少々なんだよ?」
……と突っ込まざるを得ない、シュヴァイン王子だった。




