第207話 「特訓開始!ですわ」
──ボカッ!
「あいたっ。」
頭を木剣で叩かれ、涙を流しながら可愛く手で頭を押さえるラミス姫様。
「……くー。」
ラミスは挫ける事無く、日々鍛練に励んだ。
……しかし何度練習しても、やはり目が見えない状態ではクリストフ将軍や、姉リンには全く歯が立たなかった。
ラミスは先ず、"剣豪"の中で一番弱いゴライアス隊長と鍛練に励む事にする。
……先は長い。とても長い、道のりになる事だろう。
そんな中、ラミスは想う───。
……目隠しをして心眼を会得すれば、本当に蛇王に勝つ事が出来るのだろうか?
……そしてそれは、一体どの程度の強さが必要になるのだろうか?
恐らく最低でも目隠しをした状態で、姉リンと互角に戦える程の心眼を会得する必要があると考えられる。
ラミスは先ず、隊長のゴライアスに勝つ事を目標に鍛練を続けていった。
ラミスは、その日以降……。
北の街に到着次第、常に目隠しをして生活を送っていた。
食事をする時も、お紅茶を頂く時も、ミルフィーと楽しくお喋りをする時も、読者をする時も、踊りを舞う時も、眠る時も……。
常にラミスは神経を研ぎ澄まし、心眼を会得する為に精進し続けた。
ある時は蛇に噛まれ、ある時は蛇の毒液で体を溶かされ。……そして、またある時は蛇に丸飲みにされ、蛇のおやつとなっていた。
それでもラミスは挫ける事無く立ち上がり、勇敢に蛇王に立ち向かって行った。
蛇王に勝つ、その日まで。ラミスの心は一切折れる事無く、蛇王に抗い続けていた。
そして、ラミスは遂に───。
諦めた。
「ムリですわー!」
……ごろごろごろ。
「あんまりですわー!」
……じたばた、じたばた。
「目隠しをした状態で、あんな化け物と戦える訳がありませんわー!!」
……じたばた、じたばた。……ごろごろごろ。
ラミス姫様が絶望するのも、無理は無かった。……当然だろう。ツインデール公国が誇る二大将軍である、バランとクリストフですら倒せない伝説の化け物なのだ。
豚王すらをも打ち倒し、そして"剣王"の称号を持つ公国最強のバラン将軍が……。
心眼の才を持ち、"剣聖"の称号を持つ天才剣士クリストフ将軍ですら倒せない伝説の化け物を。
それを何の戦いの経験も無い、か弱く麗しい姫君に倒せと言うのが、土台無理な話なのである。……ラミスが絶望し、転がってしまうのは無理の無い話であった。
そこまでラミスの心は絶望に駆られ、その心は絶望の奥深くへと沈んでいった。
誰よりも争いを好まず、暴力を憎む心優しいラミス姫様なのだ。
……ラミスには最初から、戦闘や暴力など不可能だったのである。
「フヒヒヒヒヒヒィ……。久しぶりだなぁ、姫。」
「オルァアアー!!」
──ばちこーん!!
「ブヒィ!」
とりあえず、のこのことやって来たシュヴァイン王子を鬼の形相でぼこぼこに殴り付け、ストレスを発散するラミス姫様でした。
……ぽこぽこ、しますわ。




