第204話 「それとこれとは、話が別なのですわ」
──すたすたすた。
ラミスは尚も目隠しをしたまま外へと進み、次なる戦いに挑んで行く。
強敵の屍を乗り越え、心に非情の闘気を纏い。……ラミスは一人、ヘルニア兵士の中に突き進んで行った。
「ヒャッハー!!」
当然の如くラミスの周りには、沢山のヘルニア兵達が集まり始める。ラミスは瞬く間に、大勢のヘルニア兵達に囲まれてしまった。
「ああぁん?何だ、お前……。何処ぞの、お姫様かぁ?」
「ヒャッハー!!こんな所を一人で歩いてるなんて、危ねーのが分からねーのかよぉ!!」
「ぐへへへへへ……。」
「…………。」
ラミスは想う。ヘルニア兵はこうでなくては、と。
やはり、ヘルニア兵はこうで無くては張り合いがない。
絶対的な悪でなければ、心優しいラミス姫様の拳に迷いが生じてしまうのだ。
慈愛の女神の様に慈悲深く、そして美しい博愛の心と精神を持つラミスには、殴れなくなってしまうのである。
……その為、ラミスはゲイオルグを殴る事が出来なかったのだ。
…………。
……あれ?滅茶苦茶、お殴りになられてらっしゃいませんでしたっけ?姫様。
「ふふふ……。さあ、かかってらっしゃいませヘルニア兵士の皆さん。……このラミスが、痺れさせてあげますわよ!!」
──キリッ。
ラミスは、やっと気持ち良く殴る事の出来るヘルニア兵士に安心し……。
……ごほん。
目隠しをした不安な状態の中、ラミスはヘルニア兵達と言う恐ろしい存在の圧に耐えていた。……何も見えない真っ暗闇と言う恐怖が、ラミスの心に襲いかかる。
──バチッ、バチバチバチッ!
ラミスは呼吸を整え、自らの拳に雷を集束させた。
「やっと、すっきり殴れますわ!お喰らい遊ばせ、プリンセス"マグナ────!!」
ラミスは大きく振りかぶり、渾身の一撃を繰り出した。
「……お前、もしかして目が見えないのか?」
……ざわざわ。
「……ほえ?・□・」っ ?
またもや途中で"マグナム"をお止めになる、ラミス姫様。
……あれ?既視感!?何か、先程も似たような事例があったような……。おかしいな、こいつらヘルニア兵士だよね?
「ヒャッハー!!この俺が医者まで連れて行ってやろうかー!!」
「ぐへへへへへ……。俺が、お姫様抱っこで家まで安全に送り届けてやるぜー!!」
「……これは一体、どう言う事ですの?・□・」の
……ぽかーん。
この意味不明な状況に陥りラミスは、ぽかんと口を開け只呆然としていた。
……そう、ラミス姫は知らなかったのだ。ヘルニア帝国の兵士達は皆、病人や怪我人には優しい事を。
その要因は、長年に渡るヘルニア帝国に蔓延する国民的病による物だった。……ヘルニア帝国の人間は、何故か原因不明の腰痛に悩まされ続けているのである。
……何でだろう、不思議ダナー?
その為、怪我人には優しくするという教えを、常に子供の頃から徹底的に親から教わっていたのである。
……たとえ敵であったとしても、それは変わる事は無い。只し、それは全員と言う訳では無い。中には勿論、心無い人間も居るのだ。
……だがしかしヘルニア帝国の大半の人間は、怪我人には心優しい国民性なのである。
「ヒャッハー!!この俺が責任を持って、きちんと安全に家まで送り届けてやるぜー!!」
……ぽかんと口を開けたままの表情で、お姫様抱っこされるラミス姫様。
「……ほえ?・□・」っ
……最早、ラミス姫様の頭の思考回路は完全に活動を停止させていた。




