第203話 「ゲイオルグさんの、ご様子がおかしいのですわ」
──九千回。
実に九千回に及ぶ闘いの日々を乗り越え、ラミスはゲイオルグに勝利し、そしてやっとこの扉を開ける事に成功したのだ。
ここから脱出する為に、何度も何度もゲイオルグに剣で斬られ、ラミスは文字通り死ぬ程の苦しみを幾度と無く味わっていた。
涙を堪え、必死に歯を食い縛り闘った日々……。
──正解は"目隠し"でした。
時には涙を流し、そして時にはごろごろし、色仕掛けも全く通用しなかった強敵ゲイオルグ。
このゲイオルグに勝つ為に、そしてこの扉を開ける為に闘った九千回にも及ぶ死闘の日々は、一体何だったのかとラミスの目から涙が零れ落ちる。
──正解は"目隠し"でした。
……そうラミスは、この扉を目隠しをするだけで通れたのである。
──ガチャリ。
ゲイオルグは持っていた鍵を使い、扉を開けた。
「さあ、鍵は開けてやったぞ。これでお主は自由の身だ。……辛い事も待っているかも知れんが、希望を捨てずに頑張るのじゃぞ。達者でな……。」
「……ゲイオルグさん。」
ラミスは頬を涙で濡らしながら、ゲイオルグの名を呼んだ。
「……お主、何故俺の名を知っておるのだ?」
ラミスは、ゲイオルグに感謝をした。
ラミスはこのゲイオルグと何度も闘い、そして幾度と無く死闘を繰り広げた"強敵"である。
……そんな強敵と呼べるゲイオルグに、こんなにも優しい一面があるのだとラミスは驚かずには居られなかった。
しかし、そんな強敵ゲイオルグは敵なのである。……ツインデール公国とヘルニア帝国。
ゲイオルグは侵攻してきたヘルニア帝国の兵士であり、そしてラミスはヘルニア帝国に滅ぼされたツインデール公国の姫君なのである。
そんな祖国に侵攻してくる、悪いヘルニア帝国の兵士ゲイオルグだが……。
たとえ敵だと理解していても、ラミスにはゲイオルグを攻撃する事が出来なくなっていた。
……こんなにも優しい心を持つゲイオルグと闘う事が、もうラミスには出来なかったのである。
「ゲイオルグさん……。」
ラミスの目には、大量の涙が溢れていた。
「お嬢……。」
──キリッ。
──だが、それとこれとは話が別である。
「オルァアアー!!」
──ばちこーん!
「ギャース!」
思いっきり容赦なく、ばちこーんするラミス姫様。
──ドゴォ!!
一切の容赦も無い、無慈悲な暴力がゲイオルグに襲いかかる。
ボディブロー、ジャブ、フック、アッパー、そしてフィニッシュブローからの"夜叉咬み"。
ラミスは怒濤の連撃にて、ゲイオルグを殴り続けた。……ここは戦場なのだ、敵に情け等不要である。
ヘルニア帝国を打倒し、そしてツインデール公国を取り戻す、その日までは……。
ラミスは、非情に徹しなくてはならないのである。
「たとえ天が許しても、このラミスが許しませんわ!」
愛する国民達を奴隷の様に扱い、愛する父を目の前で奪ったヘルニア帝国を絶対に許してはならない。
──悪・即・斬!
……悪は必ず、滅さなくてはならないのだ!
「強敵よ、貴方の屍を乗り越えて行きますわ!」
……そう。一匹の蜘蛛を助けた所で、カンダタは天国には行けなかったのである。
ラミスはくるりと周り、ゲイオルグに背を向け外へと旅立って行った。
ヘルニア帝国と戦う為に……。そして、蛇王〈バジリスクキング〉に勝つ為に。
「私は最後まで、決して諦めませんわよ!」
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