第2話「脱出劇の始まりですわ」
……ラミスはなるべく音を立てないように慎重にカギを使い、牢を開ける。
キィ…。
閑散とした牢に金属音が少し響き渡る。先程失敗し、命を落とした事を考えると慎重にならざるを得ない。もちろん死ぬのは怖いし、何よりも痛い。
ラミスは音を立てないように歩きながら、失敗した3回の件を振り返った……。
──「姫様……姫様。」
先日まで私の専属だったメイドが食事を持って来てくれた。泣きながらも私の事を心配し、牢のカギまで持って来てくれたのだ。
「姫様……せめて姫様だけでも……私に出来るのはこれくらいしかありません……。」
私は何度もお礼を言った……。去って行くときも牢の中に居る私を何度も心配そうに振り返っていた。
……自分の事だけでも大変なのにも関わらず、私の心配をしてくれて、さらにカギまで持って来てくれた。彼女には感謝しか無かった。彼女の優しさと、心遣いに思わず涙が溢れ出てラミスは、泣いた……。
──ラミスは覚悟を決め、歩き出した。
『1回目』
ラミスは牢のカギを開け外に出た。牢の外は私の居た所と同じ様な牢が複数あったが全てカギは開いており、人の気配はなかった。ラミスはその奥にある木製の大きな扉に向かい、扉を開けた。
ギィィィ……。
────扉を開けた所に見張りであろう、敵兵が一人居た……。
「おい、お前!そこで何をしている!?」
───敵兵に見つかってしまった!?……いや、当然である。カギがあったからといって脱出が簡単な訳は無い。あるはず無い。考えれば、至極当然である。脱出するには敵兵に見つからないように、普通ならばコソコソとしなければならない。
敵兵はドスドスと音を立て、私に近付いてくる。
「あ、あの……」
いや敵兵なのだから、話なんてものは通じる筈もない。私は頭が混乱し何も出来なかった。
「まあいい、死ね!」
────────────。
体に激痛が走り、私は気を失った……。
『2回目』
「……………………夢!?」
意識が混濁し、頭がぐにゃーとなった。少しづつ意識がはっきりしだす。
──そして、思い出した。
「─────────!?」
「生き……てる?……どういう事!?」
一体何が起こったのか……?さっぱり理解出来なかった……。先程確かに私は剣で斬られた。しかし、体はどこも痛くもないし、怪我も見当たらない。
……………………?
分からない……。少し背中に違和感はある。少し痛みも感じる。でもどちらかと言うと心地良い痛みである。まだ頭が多少ぼーっともするので。背中の件はそこまで気にしないでいた。
はっきりと意識が戻った後も、その意味不明な現象にラミスは戸惑った……。
「……一体、どういう事なのかしら……?」
そう言いながら少し落ち着き、頭を働かせた。本来ならば一度死んだものが生き返るならば、神の奇跡と喜ぶべき所なのだが。この状況である。……そう、檻の中である。状況は一向に変わってなどいない。
──先ほどの件が夢だった可能性も、ある。
…………分からない。酷く痛みを覚えたのは記憶している。
ラミスは色々考えたものの、やはりまだ少し頭が混乱しているのもあるのだが、状況的にやらねばならないことは決まっている。気持ちを切り替え、二度目の脱出を試みた……。