第14話 「楽しそうなお遊戯ですわ」
姉達が無事で本当に良かった、姫は姉達の無事を心から喜んだ。
この苦しい状況の中、これほど嬉しい知らせは無いのだと。
……ラミス姫は、涙を流して心から喜んだ。
姫は何時もの様に、薄暗い牢の中でまた一人。冷たい地面の上で大の字で寝転がり、天井のただ一点を見つめて……。
…………。
──!?
「あら?」
姫が目を開くと、そこにあるのは何時もの天井では無く……。
何故かまだ兵士が二人立って居た。……ついでに王子も転がっていた。
──!?
ラミス姫様も"?"と不思議状態なのだが……。何故か兵士達二人も、困惑し顔を見合わせていた。
……?
「……あれ?おかしい、ですわねぇ。」
御付きの兵士二人は気を取り直し、再度ラミスに近付き剣を振り下ろす。
──ヒュッ!
姫は恐怖のあまりに目を瞑り、そしてそのまま振り下ろされる刃に身を任せ……。
──そして、目を開ければ何時もの天井がっ。
──!?
「……あら?」
これは、一体どういう事だろう?痛くもないし、時間も戻っていない、それ以前にまだ目の前に兵士達が居るのである。
御付きの兵士二人もかなり困惑し、また顔を見合わし。再び勢いよく姫の体にその刃を突き立てる。
──ひょい。
突き立てる!
──ひょい。
振り下ろす!
──ひょい。
切り払う!
──ひょひょい。
再度、突き立てる!
──ひょひょいの、ひょい。
「……?」
「あの……。何を、遊んでらっしゃいますの?」
姫には、"それ"が遊んでいる様にしか見えなかった。それはまるで、騎士に憧れる子供がおもちゃの剣を振り回して遊んでいるかの様に。そんな風にしか、姫の目には映らなかったのである。
それ程までに廊下の兵士と、王子御付きの兵士二人との間には強さに違いがあった。
……それも、そのはずである。廊下の兵士は毎日の様に厳しい訓練に耐え、戦場経験も幾度もある屈強な兵士なのである。それに引き換え、御付きの兵士二人は貴族のお坊ちゃんであり。戦場経験どころか訓練すら、まともにしていなかった。
ラミス姫はその二人の兵士の姿に、怒りを通り越して呆れていた。
姫は文字通り、命を懸けて廊下の兵士と死闘を繰り返している。どうすれば、廊下の兵士の攻撃が回避出来るか?兵士の攻撃を隅々まで観察し、その対処方法を常に考え頭に叩き込んできた。
……それなのに、ああそれなのに。
そんなへっぴり腰の攻撃など、今更姫に当たる訳が無い。
「貴方、もう少しきちんと剣を構えないといけませんわよ?少し腰が引けてますわ。重心を落とし、きちんと狙いを定めて斬り付け無いと当たりませんわよ?」
「……は?」
姫の言葉に、茫然と立ち尽くす兵士二人。
「……は?」
ラミス姫もまた、頭に"?"マークを浮かべて不思議そうに首を傾げる。
姫は暫く考えた後、頭にきゅぴーんと豆電球が閃く……。
──その刹那、ラミス姫の目が鋭い眼光を放つ。
「ツインプリンセスキック!!」
ラミスは弧を描くように、華麗に空中を舞う。
「ぐはあっ!」
兵士二人を蹴り飛ばし、その拍子に兜も吹き飛んだ。廊下の兵士と違い、フルフェイスタイプではなく、普通の兜なので外れやすかった様だ。
「……貴様ぁ。」
怒り、姫を睨み付ける兵士。
──ガスッ!
だが、姫の拳を喰らい敢え無く地に沈む。
「うわあああああ!」
もう一人の兵士も叫び声を上げて、姫目掛けて突進してくる。
……だが既に、姫の敵では無かった。
──ゴス!
姫は華麗に回避し、兵士を裏拳で地に沈める。
「ふぅ。」
……姫は自分の実力に驚いていた、今までの闘いは。今までの努力は、決して無駄では無かったのだと。
……そう、実感した。
そして、姫は自らの拳を強く握り締め。再び歩き出し、また戦場へと向かって行くのだった。




