第12話 「もう二度と、弱音は吐きませんわ」
……そして大の字に寝転がり、天井を眺める姫様。
あの後すぐに次の攻撃を喰らい、再び牢の中に戻されたのだ。兵士に敗北はしたものの、初めてこちらの攻撃が、兵士に当たったのだ。
……ラミスはまた一歩、脱出に近付いたと確信するのだが。……またもや姫に試練が訪れ、壁に当たってしまう。
……先ほどの戦いでは運良く3回、兵士の攻撃に対応し回避出来たものの、運が悪ければ一度目の攻撃を喰らったり、またこちらは防戦一方になり、攻撃にすら移れない。……その様な失敗、敗北を……幾度となく繰り返した。
当然ではあるが、兵士と姫の戦闘能力にはそれほどまでに差があった。
……しかし、ラミスは……挫ける事無く、果敢に挑み続けた。例えどんなに苦しもうとも、どんなに涙を流そうとも、この先にどんなに困難が待っていようとしても。……脱出するまでは決して諦めないと、決して弱音は吐かないと。……そして必ず無事であろう妹に会うまでは…………もう二度と、大の字で寝転がったりしないと……そう、心に誓ったのだ!!
──そしてラミスは、勇猛果敢に挑み……その拳を、怒りを、兵士の顔面に叩きつけた!
──────────。
「むーーりーーー!」
また、大の字で寝転がり手足をじたばたするラミス姫。
「もう、やーだーー。」
泣きながら、ごろごろ転がる姫。
「やですわーーー!」
もう、転がるしか無かった。転がるしか……それほどまでにラミスの心をへし折った、その"壁"とは……。
──時は数刻、遡り……。
ラミス姫の前回の戦いに戻る……。
『2719回目』
ラミスは、そっと瞳を閉じ五つ数える……。
そして息を吐き、扉を押し開け走り出した。
だだだだだだだだだだだだだっ!
とりあえず、初手"ドロップキック"。これは揺るがない!
「往生しやがれ……ですわ。」
即、兜を奪い投げ捨てる……。立ち上がり、セリフを吐く兵士……。
──ゴスッ!
「ぐわぁ!」
──の、顔面に一撃を叩き込むラミス。
兵士は怒り、剣を掲げながら姫に向かって走り出し、その剣を振り下ろす。
1、2……3回、その刃をラミスは華麗な足捌で回避する。
そして、隙を見て近寄り……兵士の顔に数発の拳を叩き込んだ。
「き、貴様ぁ!」
……ラミスは、兵士の攻撃をほぼ見切っていた。稀に運悪く攻撃を喰らい、力尽きる事もあるが……。そう易々とは攻撃を喰らわない境地にまで達していた……。
なおも、攻撃を華麗に舞う様に回避す姫。……そして幾度も拳を、兵士に叩き込む。
「ぐうっ!!」
その姫の姿は誰が見ても、兵士を圧倒していた。
……だが、それと同時に……ラミスは絶望していた。