第107話 「痺れさせてあげますわ」
「あわ、あわわわわわ。」
……死屍累々。
──バリバリバリッ!
己が拳一つで、襲いかかるヘルニア兵を次々となぎ倒し。その屍の山を築いていく、ラミス姫の戦う姿に……大変な事になっているユミナ嬢。
「ひ、姫様。あわわわわわ。」
ユミナは驚き過ぎて、今にでも目を回して倒れてしまいそうな程だった。
……そして現れる、豚
──ズシン。
「ひぃ。こ、今度は何ですかー!?」
「ブヒィ。」
初めて見る、その恐ろしい怪物の姿に。もはやパニック状態のユミナ。いや、既にもう十分頭の中はパニックなのだろう。
「ひ、ひぇぇ……。」
「よく聞いて下さいまし、ユミナさん。ここからは、別行動と致しましょう。ロクサーヌと共に、子供達を連れて東の山まで向かって下さいます?」
「え?東の山ですか?」
ラミスはユミナに、事の詳細を……。つまり、何時ものミルフィールートの説明をする。
「ではユミナさん、頼みましたわ。という訳で、先ずこの豚さんを何とかしてロクサーヌに会いに行きますわよ。」
「ええっ。こっ、こんな化け物を!?む、無茶です。姫様ー!」
「豚さんは、慣れているから大丈夫ですわ。」
──バリバリバリッ!
ラミスの体に雷が走る。
「プリンセス"雷鳴"!!」
──ドガシャーン!!
轟音を鳴り響き、凄まじいラミスの蹴り技が豚を襲う。その雷神の如く蹴り技は、豚の巨体を吹き飛ばし、ラミスと豚の体を感電させ痺れて動けなくした。
……つまり。
「あばばばばばばば。◯△◯」あばー。
こうなる。
……ぷしゅー。
「姫様ー!?」
「あばば。о△о」……あば。
雷に撃たれ、真っ白になるラミス姫様。
「だ、大丈夫ですかっ?姫様。ああっ、綺麗なお髪が大変な事にっ!?」
「……あら?」
ラミスの髪からぷすぷすと煙が上がり、美しい金髪の大半が燃え、消し炭となっていた。
「大丈夫ですわ、このくらい。すぐにまた伸びて元通りになりますわ。」
「ひ、姫様ー。えっ……あれ?」
又もや驚くユミナ。ラミスの髪がみるみるうちに伸び、瞬く間に元の綺麗な髪へと戻っていった。
「ええっ?」
「最近、何だか怪我の治りが早いんですのよ。」
と、にっこり微笑むラミスの姿に、驚き唖然とするユミナ。
ユミナはこの日以降、並み大抵の事では驚かなくなっていた。……のは、又別の話。
ラミス達は豚が驚き目を回し、痺れて動けない間にロクサーヌと合流し、城を脱出した。