第106話 「バトル漫画は、インフレが激しい物ですわ」
──ギィィィ。
扉を開けるラミス姫様。
「あっ!?」
「あら?どうしましたの、ユミナさん。そんなに驚いて。」
ユミナはがくがくと怯えながら、その方角を指差す。
「……ヘルニアの鎧。姫様っ、敵国の兵士がいます!」
「……確かに居ますわねぇ。」
何をそんなに怯えているのか、全く分からず。頭上に「?」マークが浮かべ、不思議そうに頬に手を添え返事をするラミス姫様。
「こっ、ここっ。」
「……鳥さんかしら?」
「こっ、ここは、わたっ、私に任せて逃げて下さい姫様。」
ユミナは震えて怯えながらも、剣を構える。
「あら?もしかしてユミナさんは、実はかなりお強いんですの?」
ラミスは、ぱあっと明るく笑いながらそう質問する。
「いえっ、とんでもないです。私はとても弱いんです、今も手がこんなに震えて……。でっでも、姫様が逃げる間の時間稼ぎくらいは私。私、頑張ったら出来るかも……ですっ。」
ユミナは、がたがたと震え怯えていた。
「あら、それなら心配御無用ですわよ?ユミナさん。この人は、敵ではありませんわ。」
「えっ、敵じゃ無いんですか?良かったー。」
うふふと笑うラミスに、ほっと胸を撫で下ろすユミナ嬢。
「ええ、もう敵ではありませんわ。……この程度。」
ラミスはゆっくりと歩き、そのヘルニア兵士に近付いて行く。
……すたすた。
「なっ、何だ貴様らは!」
ラミスはすぅっと、息を吸い込みそのまま思いっきり兵士のボディ目掛けて、渾身の一撃を放つ。
──ドゴォ!
「夜叉咬み!!」
鎧を粉々に砕かれ、ぐったりと倒れる兵士ゲイオルグ。
──ドサリ。
「さあ行きますわよ、ユミナさん。」
…………。
「えっ、ええええっ!?」
驚き固まるユミナ。
「あら?今度は一体、どうなさいましたの。」
「いやいや、いや……ええっ!?」
あの屈強な全身鎧の重騎士を、一撃で……しかも拳で粉砕するラミス姫に。驚き戸惑いを隠せないユミナ嬢。
まあ、例えユミナで無くても驚く事だろう。
「さあ、参りますわよ。ユミナさん。」
「はっ、はい。姫様。」
ユミナは扉があるのに気が付き、ラミスよりも早く扉に向かい扉を開ける。
「姫様、どうぞ……あれ?」
──ガチャリ。
……閉まっている。
「ひっ、姫様。……どうしましょう?この扉、カギが掛かっています。」
「こういう時は、こうすれば開きますわ。」
……すたすた。
──ドゴォ!
扉を蹴り飛ばすラミス姫様。
「さあ、行きますわよ。」
「ええっ!?」
……既に、カギなど不要なラミス姫様。
先程から驚きが止まらないユミナ嬢だが、それ以降もユミナの驚きが止まる事は無かった。