第104話 「一人では寂しいですわ」
幾度となく繰り返す、この剣士や豚との死闘の中。ラミスの唯一の楽しみであり、心の拠り所が姉やミルフィーとのおしゃべりだった。
特に豚と戦う前の、ミルフィーとの会話の時間がラミスの心をとても癒していた。
いくら姉やミルフィーと合流出来ると言っても、ラミスは何時も牢屋の中でたった一人の旅立ちなのである。
ラミスは、それが寂しかった。それにラミスが選ぶルートによっては、会えない場合もある。
────────。
ラミスは牢の中で一人、天井を見上げていた。
「…………。」
虚ろな瞳で、ただただ天井を見つめていた。
……ぼーっ、ですわ。
…………。
ラミスはふと考える。私以外の人も生き返ったらいいのに……と。
まあ、そんな事がある訳無いのだが。……しかし、ラミスは思う。ツインデール公国が誇る二大将軍の一人、バラン将軍がもし生き返る事が出来たのなら……。
それは我がツインデール公国にとって、かなりの戦力になる事だろう。
クリストフ将軍とレティシア将軍。……そしてバラン将軍の三人が、かつてツインデール公国を支えた三人の将軍が揃う事があれば。
……もしかしたらあの怪物、豚王に勝利しツインデール公国を取り戻す事が出来るかも知れない。
ラミスは瞳を閉じながら、ふとそんな下らない想像をする。
…………。
「あー、バラン将軍と迄は言いませんから、どなたでもよろしいので生き返って欲しいですわね。」
──ぽよん。
……ま、そんな事がある訳ありませんわよねぇ。
ラミスは、はぁっと深いため息をつき起き上がる。そして牢を出ようとして振り向くと、ラミスは驚き驚愕した。
──!?
「誰っ!?」
誰か知らない人が居る!?いやっ、誰?……いや、落ち着いてよく考えなさいラミス。私はその人物の顔を知っている、名前も覚えている。……いや、しかし。何故、ここに人が?今迄こんな事はあっただろうか?……いや無い。今迄この牢を訪れるのは、シュヴァイン王子達の三人だけと決まっている筈なのだから。
「……どうして?」
ラミスは心底驚いていた。そしてその人物もまた、ラミス以上に驚き戸惑っていた。
「えっ?ええっ!?姫様っ?……えっ、ここ何処!?私、何でこんな所に。」
目の前にいるその人物は、必死に辺りをきょろきょろ見回している。
「えっ、えっ?……牢!?」
…………。
軽装の鎧を身に付けた、若い女性兵士。……えーと、名前は確か。
「ユミナさん……でしたわね。そうですわ、ユミナさんですわ。」
私に名前を呼ばれたその女性は、涙を流し泣き始めた。
「姫様が、私の名前をっ!?ひっ姫様に、私の名前を覚えて頂けてるなんてっ。私、私ぃ。感激ですぅ、うれじいですぅぅ……。」
ぽろぽろと大粒の涙を溢す、女性兵士のユミナさん。
「うえーん。」
…………。
……うん、何?この状況。