第103話 「万策尽きましたわ」
拭いきれない不安が残る中、ツインデール公国軍の攻撃が始まる。
「オオオオオオオ!!」
前回に増して、猛攻を見せるツインデール公国軍。ヘルニア兵達の大半は、既に武器を捨て投降を始めている。
そして動き出す、豚の群れ。
──ザシュ!
その豚をスパスパと、一刀の元に斬り伏せるクリストフ将軍とレティシア将軍両名。
「流石ですわね、レティシア将軍。」
元々ツインデール公国には、三人の将軍がいた。クリストフ、バラン、そしてレティシア。
剣聖レティシア。その実力は、クリストフ将軍以上と言われている。
実際の所、レティシア将軍の活躍は凄まじいものがあった。あの硬い外皮に覆われた豚達を難なく倒し、次々に豚をただの肉片へと変えて行った。
特に特筆すべき点は、その速さである。その速さには、クリストフ将軍ですら驚いていた。
……しかし、レティシア将軍率いる二万の援軍を加えても。あの豚王の体に傷一つ、付ける事は敵わなかったのである。
…………。
またもや牢の中、虚ろな瞳で天井を見上げるラミス姫様。
「……やはり、強過ぎますわ。」
クリストフ将軍とレティシア将軍率いる、三万の兵ですら、全く歯が立たない怪物。八方塞がりである、もう為す術がない。
肝心の神々の力も、あれ以降何も分からないでいる。そもそも四人の中で一番強い、神々の力"猛将"の力を宿している姉リンですら。あの怪物には、全く歯が立たないのだ。
もう、打つ手が無い。
……つまり。
ラミスが強くなり、あの豚王を倒すしか方法が無いのである。
「……ですわよねぇ。」
しかし、果たして本当に勝てるのだろうか?あの様な化け物に。
しかし、他に手は無い。
だが、今のラミスは豚王所か、通常の豚ですら、その体に傷一つ負わせる事が出来ないのである。
「……で、でも。やるしかありませんわね。」
ラミスは覚悟を決めた。
そして走る、そして挑み続ける。
あの凄腕の剣士ことゲイオスに、豚に、そして豚王に……。
またラミスは、幾度も幾度も死線を潜り抜け。……いや正確には潜り抜けれず、死に戻っているのだが、それは置いといて。
ラミスはその戦いの中、ある一つの結論を導き出す。
…………。
「ムリですわー!!」
……ごろごろ、ごろごろ。
「強過ぎますわー!!」
……じたばた、じたばた。
「うわぁーん、ミルフィー!」
ラミスはとりあえず、一頻りじたばた、ごろごろを楽しんだ所で。ミルフィーの居る東の山へと走り、ミルフィーの胸に飛び込んで泣きつくのだった。