第10話「遊んであげますわ」
……そして、姫の脱出劇は『43回目』になっていた。
つまり、先程十数回失敗している事になる。しかし、姫はその十数回の失敗の中で脱出劇に一筋の光を見出だした。……いや、それは光等と言う様な良いものでは断じて無い。最初から方法はそれ以外無いのだから……。しかしそれはラミスに取って、唯一の脱出方法であり、ラミスはそこに活路を見出だすしか無かったのである。
……それは勿論。通路にいる兵士を倒すことなのだが、それは余程の幸運が重ならなければ到底不可能なのは理解している。確率として一万回に一回も無いかも知れない、確率なのだろう。……しかし、その確率を多少上げる事は出来るはずなのである。
──姫が今までの失敗から学び、理解した事。
一つ目は、兵士の"強さ"である。明らかに通路にいる兵士の方が強かったのである。王子付きの兵士二人は、恐らく貴族だろう。
……戦闘経験や訓練の差なのか、貴族のお坊ちゃんだからなのか。姫は兵士の強さが違うのを理解した。……しかし、これはあまり意味が無い。例え兵士の二人を倒しても、通路にいる兵士とは戦わないといけないからだ。……もちろんそのまま王子と兵士の二人を倒して、しばらく様子を見る作戦も、考えるには考えたのだが……。王子が戻って来ないとなると、大騒ぎになるのは明らかだと姫は判断した。
二つ目は、姫が全く同じ行動をすると、兵士も前回と全く同じ行動をする事である。
……つまり、全く同じ攻撃の軌道なら、来ると分かっている攻撃ならば……回避出来るのではないか?……と、姫は考えた。
三つ目は、まだ確証が無い。とりあえず今回試そうと考えた。
──その三つ目とは……。
『43回目』
……ラミスは前回と、いや何時もと同じ様に扉を少し開け、慎重に中を覗き込む。
──そして、初手ドロップキック。兵士が背中を向けている間に距離を詰める。
……タタタタタタタタッ!そして華麗にジャンプし……。
「プリンセスキーック!」
兵士が吹き飛び、倒れ込む。そしてその隙に"ココ"ここが大事。兵士がかぶっているフルフェイス式の兜を引っ張り剥がす!!
「んー!」
すると、なんとか姫の力でも兜は外れた。引っ張ると抜ける仕様で助かる姫様。
兜を投げ捨てると、兵士は立ち上がりラミスを睨み付けてくる。
「貴様ぁ……!」
──ラミスは身構える……。
……つまり、ここ!ここで兵士に一対一で打ち勝つ!たとえ何回負けようとも、たとえ何回死のうとも、たとえこの身が打ち砕かれようとも、不死鳥の様に甦り、決して諦めない!そして、一万分の一に賭け、勝つまで闘う!……それこそがラミスが見出だした、一筋の光"活路"だった。
「さあかかってらっしゃい、遊んであげますわ!」