第7話 お坊ちゃまたち。
執事さんと一緒に、中庭に面した2階にある子供部屋に出掛けた。
お昼過ぎの、眠くなるような時間帯だ。
執事さんがノックをしないで、そっとドアを開ける。
「フェリックス様、先ほどお教えしたことを復唱なさい!」
「・・・・・」
「ジルベール様、今はお勉強の時間でお休みの時間ではございません!」
「あ…。」
「あ、ではございません!!」
家庭教師と思われる女性が、小さい子に向かって鞭を振り上げるところだった。
声より先に、身体が動いた。ミチッ、と背中が叩かれる。
「だれですか?今は授業中です。出ていきなさい!」
「は?これがあなたの教育ですか?」
「んんんん、どきなさい。私はこの子たちの教育係です!」
「だから、何の教育だって聞いているんです。」
「無礼な、使用人風情が。平民に口を挟まれるようなことではありません。」
「位があればよろしいんですか?」
小さい子を抱え込んだまま、その女に対峙する。
「私は子爵家の娘です。侯爵殿に是非にと頼まれてこの子たちの教育係になったんですの。おどきなさい!」
綺麗に着飾った令嬢が、鼻の穴を広げて威嚇してくる。体勢的にも見下ろされる形だ。なんなの??
「まあ、どちらの子爵家の御令嬢で?侯爵家の嫡男殿に鞭を打てるぐらいの子爵家でございましたか?」
「う、うるさい!」
「あら、申し遅れました。私、ロランス公爵家の姪に当たります、ラウリー伯爵家のエメリーヌと申します。それで?どちらの子爵家ですの?」
「・・・あ…う…。」
「アウ?そんな家名がございましたか?」
「・・・・・」
「このことは侯爵殿にも報告します。もちろん、私のおばにも。今時、時代錯誤のむち打ちしながらの教育なんて、皆さまさぞや驚かれますでしょうね?ね?お嬢様?」
「え?…あ…。」
「さあ、お坊ちゃまたちはお庭の見学会が始まりますので出かけましょう。執事長、この方がお家にお帰りになりますので、すぐに馬車を用意してあげてくださいね。」
「かしこまりました。」
「・・・・・」
「さ、参りましょう。」
緊張して手汗が凄いが、ここで負けてもいられない。そっと二人の背中を押して部屋の外に出る。
「みんな待ってるからね。行こう。」
マノンの言いたかったことは、ドアを開けた時にすぐわかった。
平民風情が、と言われると、それ以上の発言は出来ない。使用人の皆さんはこの二人をどれほど心配しただろう。
「ねえ、おねえさんが新しいせんせいになるの?」
「ん?私?私はただの庭師なのよ。うふふっ。」




