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第4話 引き算。

早速、師匠あてに手紙を書く。


裸婦像、15体。動物のオブジェらしいもの6体。あと金ぴかのもろもろ。庭石。

どなたか必要としてくれるところに格安で売り出します。その代わり、取りに来てくださる方、限定で。早急にお願いします。



庭師小屋は中庭の奥にあった。

使用人の通用口に近く、屋敷からは見えない。

前の庭師、がこだわったのか、それ前には有ったのか、完璧に生活できるように作られていた。半分は道具置き場。道具も必要以上に揃っている。

ただ、本人は屋敷の客間で暮らしていたらしく、ごてごてとした装飾は為されていなかった。よかった。

窓に即席のカーテンを付けて、昨日から暮らしている。

食事は勝手口から入って、使用人の皆様と一緒に頂いている。



庭師小屋の小さなテーブルで、書き終わった手紙を封筒に入れる。便箋が少し湿ってしまったのは御愛嬌だ。



庭師協会の顧問をされている私の師匠、マルクさんは顔が広い。

貴族の庭園はもちろん、お金持ちの商人の屋敷や、公園、公共施設の庭。王城の庭園に口を出すこともあるらしい。私も小さい頃からいろいろな庭を見に、連れ出してもらっていた。

それぞれに個性がある。

屋敷の当主の趣味や、庭師のこだわりや。


うちの実家みたいに、寸分の狂いもなく刈りこまれた生け垣や規則正しく左右対称に植えられた樹木。面白くはないけど、お父様にそっくりだと思う。几帳面。



「さて、」


靴を作業用の編み上げブーツに履き替えて、庭園から測量を始める。

夜には図面に落とす。


まず広さ。道や傾斜の場所や、どこに何の木が植えられているか。その間隔や高さ。植えられている植物の状況。例えば、蔓バラがアーチに、とか。この花壇は一年草とか。

時々、お客様の応対室からの眺めも確認する。

裸婦像が邪魔だが、致し方ない。

正面玄関の植え込みはいじらなくてもよさそう。現状維持ね。



作業が中庭に差し掛かったあたりで、師匠が裸婦像の引き取り先を見つけてくれた。金ぴかオブジェと裸婦像と多分動物のオブジェ。滑り台、ブランコ…。まとめて引き取ってくれるところがあったらしい。

当日は師匠も駆けつけて下さった。


どんどんと運び出される品々。


「・・・お好きな方がいらっしゃったんですねえ。」

「ああ。新興の商人の屋敷なんだがな。派手なら派手なほどいいらしいが、ケチなんだ。お前の条件にぴったりだと思ってな。」

「さすがです!庭石はどうしますか?」

「庭石は今作っている公園に使う。奥の角が二面、壁でな、味気ないから。明日にでも取りに来るから。」

「ありがとうございます!師匠!!」


金ぴかのガゼボも解体して運び出された。

いるのねえ、世の中には派手好きな方が。


「噴水の池はどうするつもりだ?」

「ああ…。全体的に落ち着いた景色にしたいので、睡蓮の池にしようかと。」

「睡蓮、か。まあそのほうがこの屋敷の雰囲気に合っているかな。」

「でしょう?ですから、あの池の真ん中の裸婦像もお持ちくださいね。水はあらかじめ抜いておきました。」

「ああ。池の補修の時は専門の職人を手配してやるから。自分でやるなよ?」

「・・・はい。」


実はもう少し若い頃、自分でやれそうな気がしてタイル仕上げで池を作った。水が抜けた。苦い経験だ。ふふっ。


「この売り上げで、ガゼボも池も直せるだろう。後はなんか問題がありそうか?」

「そうですね…。中庭は子供向けでいいと言われているんですが、あんまりそれにこだわると前の庭師と同じ間違いを起こしそうで…。」

「アハハ!あんなふうにはなかなかできんぞ?」

「ですよね。」



毛布にくるまれて、裸婦像が次々と運び出されていく。

噴水から外された裸婦が最後。


作業で流石に芝生は傷んでしまった。

明日、庭石を運び出すとなると、もう少し荒れるか。しかたない。








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