番外編 ライバルは長男坊。
「なあ、フェリ。先生をだなあ、お父さんに少し貸してもらえないか?」
「は?」
「今回、領地の堤防が完成しただろう?王城に報告に行ったら、たまに舞踏会に顔を出すように言われたんだ。なんか…嫌な予感がするんだ。」
「嫌な予感?」
「・・・見合いさせられるんじゃないかと。王族から勧められた再婚相手は断りにくい。そこでだな?」
「お父様、再婚なさればいいのではないでしょうか?僕たちのことは先生がいるので心配いりませんから。どうぞ。」
そうきっぱり言って、私の執務室を出て行こうとする長男坊を引き留める。
「いや、しかしだよ?フェリ。嫁に来る人によっては、使用人の総入れ替えをしたり、もちろん家庭教師を連れてくる人もいると聞くよ?」
「え?本当ですか?」
「まあ…聞いた話だがな。私としても、王族から勧められた人の言うことは反論しずらい。」
「・・・・・」
「そこで、だな?先生を今回の舞踏会にお父さんに貸してくれ。そうしたら、誰も声を掛けて来れなくなるだろう?いい考えじゃないか?」
「・・・お貸しするだけですよ?」
「うんうん。」
「最近のお父様は、行動が怪しいですからね。お出かけするたびに先生にお土産を買ってくるし。」
「いや。お前たちにも買ってきてるだろう?」
「僕たちが先生にお休みのキスをするとき、列に並んでるし。」
「・・・いや、それは…ただの挨拶だし。順番は守っているだろう?」
「この間は抜け駆けして、先生の庭仕事を手伝っていましたよね?」
「いや。あれは、力仕事があるから誰か手伝ってほしいと言われてだな。」
「そんなのジャンだっていいじゃないですか?なぜお父様が行くんですか?僕だってもう少し大きくなったら、お手伝いできるのに。」
「ジャンはもう高齢だろう?お前にはまだ早いし。」
「領地の堤防の並木を見に行くときも、僕たちを置いて、先生と二人で行こうとなさっていましたよね?あの時は気が付いて同行できたからいいようなものの。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「そういう訳で、じゃあいいな?その…お前から先生にさりげなくお願いしておいてくれないか?私からいきなり言うと、あの人は緊張してしまうだろうから。な?」
「・・・・・」
訝しそうに私の顔を見ていた長男が、ため息を一つついて折れてくれた。
「今回だけですよ?あの人は僕の婚約者なんですからね?」
「そのことだがな?彼女とお前は年の差があり過ぎないか?」
「たった、13歳です。お父様と先生だって11歳違うでしょう?たいして変わりませんから。」
「・・・・・」
手ごわいな。




