第23話 そしてそれから。
9月いっぱい屋敷で過ごし、領地に帰ってきた。
マルクさんが植林に勧めてくれた樹木の苗木はもう到着していた。
庭師協会で運営している苗物の会社があると言っていたが、仕事の速さに驚く。
堤防の幅を広げ、叩き、植林を行う。
10月の末に、ジルの誕生日がある。それまで一区切りつけたい。
正直…家に帰りたいと、何を買って帰ろう?こんなふうに思ったのも初めてかもしれないな。
庭は紅葉が始まっているかな?新しく植えたというどんぐりの木にはどんぐりが実っただろうか?あの日貰って帰ったブルーベリーの苗木は上手く根付いただろうか?
息子たちがエメリーヌと走り回って笑っているかな?
今までは平気で何か月も家を空けていた。ジャンもいるし、屋敷のことを心配したことはなかった。前の妻が何をしようとあまり気にしたこともなかった。
・・・今になると、もっと気にかけてやればよかったと思う。
まあ今さら、だからどうする、という気もないが。
さて、やはり10月に誕生日だといううちの庭師に、何をプレゼントしようか。
そんなことを考えながら、胸のあたりがほんわりする。
エメリーヌのことは、子供たちに色々聞いた。誕生日が10月だということも。
秋口からジルの入浴もしてくれているようだ。冬の間に乾燥してかきむしってしまうのも、恥ずかしながら知らなかった。ハーブのお湯にゆっくり入って、庭師お手製のクリームを塗っているらしい。
人見知りが激しいという彼女が、私に対して平気なのは、フェリにそっくりだから、ということまで聞いた。違うだろう?お前が私に似たんだろう?そう思ったが、貴重な情報なので黙って聞いておいた。
そうなんだ…。あのおやすみのキスは、本当にフェリだと思っていたのか?変な下心なしで。
そう、それから、なぜ、手袋が外せないかも。
ゆっくり変わっていく庭のように、私たち家族も、ゆっくり変わっていく予感がする。
領地の執務室で、庭師に持たされたよく眠れるというサシュを眺めながら、くすっと笑う。
本編 完です。番外編が続きます。




