第21話 好き。
私は…親と手を繋いだりしたことがあっただろうか?
父は仕事が忙しく、厳しい方だった。小さい時から家庭教師が付いていた。
母とは政略結婚だったらしい。母はあまり家庭に興味が無いようだった。跡取り息子を産んだから、責任は果たした。そんな感じだった。
屋敷も庭園もきちんと管理されていたが、もちろん、家でも庭でも母と遊んだ記憶はない。
私は、年頃になったという理由で婚約者をあてがわれ、そのまま結婚した。そんなものなのだろうと思っていた。妻に特に興味もなかったし、父が急に亡くなったので忙しかった。フェリックスが産まれ、ジルベールが産まれても家は執事長のジャンに任せっぱなしだった。派手好きな妻は庭を金ぴかにして、その金ぴかにした庭師と出て行った。
正直、落ち着かない、嫌な庭だった。
執務室のカーテンも開けなかった。
『ぼく おとうさま すき』
魚と同レベルでもうれしいと思う。今まで息子たちに何もしてこなかったが。それでも、好きと言ってもらえた。
「・・・好き、か…。」
「どうされましたか?旦那様。」
少し、ぼおっとしていた?ジャンがお茶のトレーを持って入ってきたのに気付くのが遅れた。
「・・・いや。勉強時間は充分なようだったな。ジルにいきなり隣国語で話しかけられて驚いた。いい家庭教師が来てくれて良かった。」
「そうでございますね。ふふっ。中々いい人材です。このお屋敷に長年足りなかったものを持って来て下さいましたね。」
「・・・そうかもしれないな…。」
「そうそう、忘れるところでした。庭師の紹介で堤防の植林に詳しい者を紹介いただきました。早速、明日ですが。お昼前に公爵邸でございます。うちの庭師も同行いたします。では。」
「ああ。」
公爵邸?そこの職人なのかな?




