第18話 観察。
開け放した窓から、風が入る。
草木の匂いがする。
お昼も執務室に軽食を運んでもらった。食べながら、帳簿を確認している。いつものこと。
ん?
手前に付いている扉を開けてもらって、息子たちが木の家に続く梯子段を登っていく。最後は見慣れない女。あれが新しい家庭教師?この前の女か?
しばらくすると木の家の窓が開けられて、笑い声が聞こえる。
笑い声、ねえ。
なんだか久しぶりに聞いた気がする。
しばらくすると、静かになった。
なんとなく、そわそわしながら報告書をめくる。何やっているんだろう?
3時過ぎぐらい。木の家から降りてきた3人は、ぶらぶらと庭園を散歩している。
ジルと女は手をつないでいる。
新しく直した池に向かっているようだな。
ジルが水面を覗き込みながら笑っている。ジルの指さしたところをフェリと女が覗き込んでいる。
・・・なにがいるの?
バラ園を横切る散歩道のゆるい傾斜を登っていく。
ジルは駆けだしていった。
前を行くフェリックスが、振り返って女に手を差し伸べる。
手を繋いでひっぱって行く。
頂上にある石造りのガゼボで、ジルが足をぶらぶらさせながら待っている。
散歩から戻ると、中庭のガゼボに女中がお茶を出してくれているようだ。
楽しそうにジルがその女中に話しかけている。
通りがかった使用人たちが、息子たちに声を掛けていく。
ジルが手を振ってこたえているみたいだ。
うちの庭は…こんな感じだっただろうか?
夕食はダイニングで取ると執事長に伝えた。
「さようでございますか。お坊ちゃまたちもお喜びになるでしょう。」
着換えて席に着く。
「お父様、お帰りなさい。誕生日のプレゼント、ありがとうございます。」
「ああ。」
「おとうさま おかえりなさい。ねえ ジャン きょうはせんせいはいないの?」
「本日はご遠慮なさっておりますよ。お父様とごゆっくりしてくださいとお言付けでございます。」
「そうなの?」
運ばれてくる料理を黙々と食べる。
「・・・夏は公爵家の別荘に呼ばれたそうだが、」
「うん。おとうさま かわがあってね おさかながいた。せんせいとみずあそびをしたの。たのしかった。」
「そ、そうか。」
「そのまえはね せんせいとごはんをたべにいったよ。うちにあるより おおきないけがあってね おおきなさかながいたの。」
「・・・そうか。」
「でもね ぼくはおうちのにわがすき。たのしいから。みんないるしね。」
「・・・そうか。」
ジルは…こんなにおしゃべりだったか??
控えている侍女や執事長がにこやかに微笑んでいる。
「フェリは?勉強はどうなんだ?」
「ええ。普通です。」
「・・・・・」
こいつはいつも通りだな。いや、待て。さっきは笑っていなかったか?
「うむ。お前は、その…好きな人が出来たのか?」
「・・・・・」
ん?耳まで赤くして…図星?ってか。
「おにいちゃんはね せんせいとけっこんするの。ぼくもせんせいと けっこんする。」
ジル?




