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第12話 恋。

手汗。


気にするなって、みんな言ってくれた。

緊張したら、みんなそうなるものよ?って。


もちろん両親が何もしなかったわけではない。

あまりにも気にする私のために、手に塗り込むクリームを取り寄せてくれたり。

気功、というのがいいらしいと、華国の太極拳というのを習ったこともある。

良く効くというやたら苦いお茶を飲み続けたり。


ダンスの練習をすれば、先生の手まで濡らしてしまうし、それを気にして、また汗をかく。悪循環よね。


紙は物を書いても読んでも濡らしてしまうし。紙を使う仕事は早いうちに諦めた。


早々に色々諦めて、人と直接的に接触しないで済む、しかも、道具を濡らしても大丈夫なもの…土いじり。天職だと思ったわ。


小さい頃から可愛がってくださったおばさまの所に入り浸り、そこの庭師のマルクさんに弟子入りした。

いつ行っても、おばさまの屋敷の庭は、私を歓迎してくれた。


あんな素敵な庭を私も作っていきたいわ。



フェリックスが、私の手が湿気っていても嫁にしてくれるらしい。

その言葉だけでも、十分に幸せにしてもらえたと思う。7歳児だけど。


素敵な大人になって、素敵なお嬢さんと結婚するんだろうなあ。口は悪いけど。

7歳の今現在でも、将来有望な、いい男予備軍。楽しみだわ。うふふっ。



「フェリックス様、もっと腰を下ろして!」

「はい。」


中庭では朝から元気にフェリックスとジルが護衛騎士から剣術の指導を受けている。

そう。体力造り、って何がいいかしら?と考えたらこれになった。

さすがにお坊ちゃまたちに庭仕事はさせられないからね。


執事さんに頼んで、騎士さんたちに時間を作ってもらった。

朝の涼しいうちに、稽古。

その間は、私はそれを観察しながら庭仕事。


今は、植え込みのこんもりとした木を、鳥の形に刈り込んでいる。

前に使用人の皆さんに、少し殺風景ですね、と言われたのを受けて、子供向けに動物の形にした。

一つはクマ。丁度2本の枝が伸びていた木はウサギに。で、今のは鳥。

前の庭師が飾っていたオブジェに対抗するわけではないが、こっちのほうが絶対に可愛い!もう一本はジルのご希望で、魚になる予定。海の絵本が大好きだからね。


鼻歌交じりにサクサクと刈り込んでいく。

イメージはひよこ。

小さなくちばしと、キュートなおしり。


遅咲きのカモミールが風にそよいでいい香りを運んでくる。

今年の冬のために、沢山ドライフラワーにしておいた。


「休憩ですよーー!」


マノンが、飲み物を持って来てくれて、休憩。

今日は大人は冷たい紅茶にミントの葉。

子どもはレモネード。ハチミツ入り。


マノンは…16歳くらいかしら?

こげ茶の髪を一本に結んでいる。そばかすのあるかわいい女の子。

どうも、私が観察したところ、フェリの稽古をしてくれている騎士さんが好き?

紅茶を差し出すとき、少し顔が赤いような?


「マノンもおすわりよ。ね?」


ジルに勧められて、ガゼボの椅子にちょこんと座る。



いいわあ、恋って。









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