第3話
「良いな。今度こそ地上を手に入れるのだぞ」
神官之人から彼や是やと注文を序でという形で頼まれつつ、魔界の神は、内心、ただただ不安しかない魔王に向かって言うと、魔王は再び、地上へと向かったのである。
「何を読んでいると思えば、家具のカタログかい」
「ええ。そろそろ新調しようかと思いましてね」
神官之人は「序でに羽毛枕に羽毛布団もお願い出来ますかね?」と、どういう訳なのか分からないものの、別世界との繋がりを持つ魔界の神に向かって言ったのだ。
「ああ。構わんぞ」
ったく魔界の神に大金を要求しながら、更にパシリのように使うとは、神官職は侮れん。
「まあまあ。そう言わずに…。中立の立場なんですから仕方ないでしょう」
命ある者には、平等に接することをモットーとしていることから、魔界にいる以上、他に楽しみはどこにあるとでも?と神官之人は、この機会に家具を新調することを決め込んだのである。
「確かに人間からすると、魔界は何も無いから仕方無いかも知れないな…」
食材もろくに育たぬ環境だからこそ、魔王には地上の世界の文化を手に入れて貰いたいモノだと思ったのだ。
「それならそう言えばいいのに…」
「そ、そうであったな」
手に入れるというよりも文化を習って来いと伝えれば良かったな…と、魔界の神は、今更の如くで命を間違えてしまったことに気付いたのだった。