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ギャラクシー猫信仰の軌跡  作者: クロード・ニャンコスキー
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6、四代目教祖時代3 ――世界宗教への階梯2、ギャラクシー猫耳娘――

 さて、ギャラクシー猫信仰やユニヴァース猫信仰がそうであったように、三千世界の犬信仰の中でも、内部で混乱する動きが出てきました。


 トイプードルばかりが可愛いとされているのはおかしい。


 そう主張とする一派があらわれたことで、社会は騒然となりました。パピヨン党やチワワ派などが台頭し、彼らは、より多様な犬のイメージをもつべきだとしたのです。


 これでは、ほぼギャラクシー猫信仰に大接近した思想になってしまったと言えます。


 そういったわけで、自由で多様なギャラクシー猫信仰に戻ってくる者もいるか……と思ったのですが、そんなことは起こりませんでした。むしろ、三千世界の犬信仰のなかで自由で多様な一派が受容されてきていることで、ギャラクシー猫信仰は、さらに母数を減らす結果となったのです。


 さらなる劣勢にさらされる中でも、私は相変わらず何も決断できずに事態を見守ることに専念していたのですが、そうこうしているうちに、犬信仰のなかで、とんでもない過激派が登場しました。


 誤ったドーベルマン信仰をもつ者たちが、「自分たちこそ正しい」として、他の信仰を一方的に取り締まる動きを見せ始めたのです。不協和音が響き始めました。


 彼らドーベルマン過激派は、猫信仰を持つ者たちともトラブルを起こし、いよいよ対立が激化していきますが、なにせドーベルマン信仰は強大な武力を持っていたため、なかなか太刀打ちできる組織はありません。


 そんな状況がまた数年間続き、やがて犬信仰の中で大きな争いが勃発し、それまで主流であったトイプードル派がドーベルマン過激派に破れました。


 誤ったドーベルマン信仰軍団は、みずからを「正しきドーベルマン信仰」と名乗り、全ての書物や町の銅像に至るまで、トイプードルの偶像を取り払い、ドーベルマンの像や図を立てました。


 厳しい取り締まりを敢行し、別の犬を三千世界の犬として信仰しようとした場合、弾圧されます。恐怖で信徒を増やしていくという、あまりにも邪道な動きをみせたのです。


 そのような状況になって、ようやくギャラクシー猫信仰の信者が再び増え始めました。しかし、これは本当のギャラクシー猫信仰というよりは、ドーベルマン以外の犬を信仰する者たちの隠れ(みの)として選ばれていたのです。


 こうした形ばかりの信仰の鞍替えを許してしまえば、おのずと、口では「わが心のギャラクシー猫」と言いながら、心の中には「三千世界の犬(トイプードル)」がいる状況を許容することになります。


こちらから相手の抱いているギャラクシー猫のイメージがとらえられない以上、批判することもできません。


 でもね、犬を信仰するギャラクシー猫信徒がいてもいいんです!


 なぜなら、ギャラクシー猫信仰においては、宇宙全体が猫の形をしているという考え方があるからです。この視点から考えてみれば、猫でないと思われる存在や犬であっても、宇宙全体の一部であることから、そう……広義の猫とみなされるのです!


 このように、狭量な競争相手(ドーベルマン)が生まれたことと、長年をかけて根付いていた自由と多様性によって、ギャラクシー猫信仰が一気に世界の主流宗教に躍り出ることになったのです。


 ……すこし、失礼します。水を含ませてください。


 失礼しました。


 えー、我々の信仰においては、宇宙的な視野や愛によって万物をつながりの中に捉えることが重要なのです。


 これはマンチカン派も、三毛猫派も、スコティッシュフォールド派も、メインクーン派も、虎派も、犬派も、ライオン派も、すべてのギャラクシー猫信仰は、この真実で繋がっているのです。


 それでですね、そうした宇宙的な愛の自覚をするために、さまざまな儀式が生まれました、そのなかで、こんにち最も有名な例としては……猫耳娘を描くことです。


 大衆化の行き着く果ての果てといったところですが、はじめ、これは大きく問題視されました。


 なぜなら、信仰の本質から言えば、カワイイのは宇宙であり、女の子ではないからです。女の子ばかりに目を向ける結果となってしまっては本質を見失ってしまい、本末転倒と言わざるをえません。


 また、大衆化によって、猫との結婚をする者も爆発的に増え始めました。


 これは、共に暮らしている猫との結婚という古くから行われてきたものと同じケースもありましたが、それを通り越して、ギャラクシー猫やユニヴァース猫を擬人化した猫耳娘との結婚をしはじめたのです。


 全く本質を悟れていないなと思ったものでした。


 考えるまでもありませんが、猫と繋がる宇宙との相互愛ではなく、ギャラクシー猫娘への一方的な思慕を抱き、彼女らと結ばれることを目指すというのが、本当の信仰でしょうか。そうではないですよね?


 目指すのは勝手ですが、形にせず、個人や仲間うちだけで楽しむべきもののはずなのです。


 ですが、信徒たちは全く私の思い通りにはなってくれず、ギャラクシー猫娘派が新興し、教団から離脱。多数の猫擬人化キャラクターを生み出し……大人気となりました。皆さんの中にも、ファンが大勢いるのではないでしょうか。なにせ、カワイイですからね。


 これにより、ギャラクシー猫信仰は、誰もが知る世界最大のメジャーな思想になった反面、信仰の形骸化に歯止めがかからない状況に陥りました。


 でもまあ、これはこれで、本当によかったと、今となっては思います。もはや普通のことですね。猫との結婚も、猫耳娘との結婚も。


 私が認めます。猫耳娘がカワイイので、宇宙もカワイイです。



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