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ギャラクシー猫信仰の軌跡  作者: クロード・ニャンコスキー
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3、四代目教祖時代1 ――スぺ―ス三毛猫デブリ信仰――

 教祖を退位してからというもの、私はしばらくの間、まるで猫のように長く穏やかな眠りに就いておりました。


 そんな眠りから揺り起こされたのは、ギャラクシー猫信仰が危機に陥ったからです。


 私は再びギャラクシー猫信仰の教祖に……四代目教祖に就任しました。


 私が退いた後も、二代目、三代目と教祖が続いたのですが、その頃はすでにギャラクシー猫信仰というものが、ユニヴァース猫信仰の中の穏健派という位置づけになっていました。


 私は、まず形骸化していたユニヴァース猫信仰からギャラクシー猫信仰を切り離し、古の教えを取り戻す活動から着手しました。


 この時代のユニヴァース猫信仰は、すでに宇宙カワイイを主張するものではなくなり、言わば現世利益的な部分を追及する者が大半を占め、宇宙の中でいかに豊かに生きるか、そのために猫という動物がどのような役割を果たせるのか、と、そうしたところに意識を向けるものになっていました。


 そのような状況下にあって、ギャラクシー猫信仰の存続の危機とは何かといえば、野生の猫でした。


 ギャラクシー猫信仰のなかの一派が、猫カワイイが高じて野生の中での猫を過剰に保護する方針を熱烈に示し、結果として野良猫が爆発的に増えすぎているということでした。


 ただでさえユニヴァース猫信仰に完全に取り込まれかけていて風前の灯火となっている時に、そうした社会問題を引き起こし、そのままにしておけば、いよいよ組織の瓦解は免れないところにまで来ていました。


 私は野良猫を無秩序に増やすばかりで対処しない信者に対し、急ぎ重点的に根気強く対話を行いました。幸いに話の分かる者たちでしたので、こうした野良猫問題については、なんとか問題を解決できました。


 しかし、話のわかる人間もいれば、話のわからない人間もいるものです。この時代、ギャラクシー猫信仰の一派で、非常に大きな問題を引き起こしているグループがいました。


 スペース猫デブリ信仰です。


 彼らは、全ての宇宙ゴミは実は宇宙ゴミではなく、スペース三毛猫の化身である野良宇宙ゴミだと主張し、デブリの回収を武力を用いて阻止する活動家集団でした。彼らは、その思想を地上の社会にまで持ち込み、巷に転がる様々なゴミを家に持ち帰って祀り、ゴミ屋敷を量産していました。


 会話を拒否し続けるスペース猫デブリ信仰の活動家たちに対し、私はある提案をしました。どのようなものだったか、ご存知の方はいますか?


 ……そうですね。さすがに、この件に関してはあまり記録も残っていないので、ご存知ないのも当然です。


 私は、スペース猫デブリ信仰を持つ者たちに対して、デブリ回収活動を促すことで解決させました。


 どういうことかと言いますと、彼らの鍛え上げられたゴミを集める能力を活かしてもらうべく、ゴミの収集企業に協力を要請し、積極的に雇用してもらったのです。


 そして、彼らが集めたゴミだけを専用に集積する広大な埋め立て地をつくることで、「三毛猫デブリ島」を生み出す活動に情熱を向けさせることに成功しました。規模を大きくすることで、互いが納得のいく流れが当面の間はできました。


 これは、まさに創造的な解決というべきものでした。


 実に画期的で、歴史の教科書に載せても良い、いや載せるべき事柄のようにも思えます。


 ところが今、教科書にはスペース猫デブリ信仰者が当時どのような活動を行っていたのかなどということは一切触れられておりません。


 なぜなのか。


 それは、地上ではない場所での活動、すなわち宇宙空間での彼らの活動が関わっています。


 宇宙空間における、それまでの彼らの活動内容は、宇宙ゴミ回収を妨害することでした。それが地上での一件を経て大きく変化したわけです。


 どのように変化したかというと、「宇宙ゴミを回収し新たな星を作る」ということが彼らの新たな目標となったのです。


 皆さんお察しの通り、これは、さらなる危険な事態を招きかねない活動でした。デブリを集めて固めた物が地上に墜落なんぞしたら大惨事を招きかねません。


 何とかやめさせるために、私は交渉の席に就きました。


「せっかく皆で造った三毛猫デブリ島を取り上げられたくなかったら、星を造る活動は即刻おやめなさい」


 当然、反発を招き、一触即発です。


 しかし、人を幸福にするはずのギャラクシー猫信仰の一部が、逆に人々を危険にさらすなどということは許容できません。各政府に協力をお願いしたことで後ろ盾を得た私は、一歩も引かず、毅然として指示を行います。


「それでも星を造り出したいというのであれば、確実にリスクをゼロに近づけられるほどの技術を手に入れてからにすることです」


 武力を盾にこのようなことを言い放つなどというのは、恥ずべき事だと今でも思っています。何か他に道は無かったのかと、今でもたまに脳裏をよぎります。


 これは言い訳の仕様がなく、ギャラクシー猫信仰の隠された最も暗い歴史の一つであると言えるのですが、紛れもない事実であるため、反面教師としても、明確に記されるべきことであると考えております。


 とはいえ、悪目立ちと言えるものではありましたが、ギャラクシー猫信仰が存在感を取り戻し、ユニヴァース猫から再び分かれて存在感を取り戻す切っ掛けにもなっているので、必ずしも悪い事ばかりではなかったのですがね。




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