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ギャラクシー猫信仰の軌跡  作者: クロード・ニャンコスキー
13/19

13、茶トラとチワワ ――絢爛たるオデッセイ運動――

 みなさん、こんにちは。神聖な授業を乗っ取るような形になってしまって大変すみません。


「いえいえ、どうぞどうぞ、私の講義など、クロードニャンコスキー先生のお話ほどの価値には到底及びませんから」


 渋谷先生。いえ、そんなことはないと思いますが……。


 まあ、いいです。渋谷待公(しぶやまちこう)先生のご厚意に甘えまして、昨日の講演とは違った趣向の講義をしていきたいと思います。


 いやぁ、それにしても、失態ですね。懇親会でおそらく眠ってしまったのでしょう。起きたら私はこの教室にいました。


 昨夜のことは、あまり、というかほとんど記憶に残っていません。


 何か狼藉をはたらいていないと良いのですが……。


 ほんのすこし頭痛が残っていますので、すぐに医務室か診療所にでも行こうか、とも思いましたが、猫信仰に関連する講義の真っただ中である神聖な教室で目覚めたのも何かの縁です。


 私の心の中のお猫さまに誓いまして、全力で取り組んでいきたいと思います。


 それで、何をしていくかと言いますとね……皆さん、質問してください。


 というのも、はっきり言って、こんなふうに講義に登壇する準備など一切しておりませんのでね。そこで、ここにいる皆さまからの質問に答える形で、新しいギャラクシー猫信仰の輪郭のようなものを模索できればと思います。


 それでは、質問のある方は、猫のようにしなやかな挙手をお願いします。


「先生、質問です。私はとっても可愛い茶トラ猫を飼っているのですが、猫のなかでも茶トラ猫を中心としたグループはあるんですか?」


 ――茶トラオデッセイ。


 そんな言葉をきいたことはありますか?


「なんとなく耳馴染みのある響きです。オデッセイって何でしたっけ。海洋生物でそんなのがいたような」


 それはオットセイですかね。オデッセイというのは、長き冒険旅行のことを指します。


「茶トラ猫を連れて、いっしょに旅行を楽しむみたいなグループですか?」


 そう解釈する者もごく少数は存在しますが、少し本来の意味からズレますね。


 茶トラオデッセイの由来がわかる方、いますか?


「…………」


 そうですね、少し複雑さもあるので、答えにくいのかもしれません。


 これは、飼っていた茶トラ猫を連れて、遠くの星まで旅行していた飼い主が、その星で茶トラ猫とはぐれ、しかし十数年の時を経て、自力で自分のもとへ帰ってきたという故事が由来になっています。


 猫が帰ってくるというのは、ギャラクシー猫信仰においては、「真理への復帰」の暗喩メタファーです。


挿絵(By みてみん)


 こちらご覧ください。ギャラクシー猫信仰における真理、すなわち理想のカワイイ宇宙に気付くことを示した絵です。


「茶トラオデッセイは、ギャラクシー猫信仰の類型ということでしょうか」


 そう定める事も可能ではあります。逆にオデッセイはそこに収まるものではないと主張する者もおりますね。どちらにしても、広義の猫信仰に違いはありませんが。


 つまり茶トラオデッセイというのは、これまで気付かなかった真理が自分のもとへ戻るまでの旅路を想像し、自分だけの物語を創作するという運動のことを指します。


 これはキャッツリターン運動とも呼ばれ、特定のグループというわけではありませんが、多くの参加者と支持者を得ています。


挿絵(By みてみん)


 茶トラオデッセイに端を発した猫オデッセイ運動は各地で展開され、他者とのコラボが盛んに行われます。そうした活動も自身の心を発見する契機になり、多くの人々に親しまれています。


「先生! 俺がきいたことがあるのはチワワオデッセイだけです。茶トラオデッセイとは、どう違うんですか?」


 良い質問ですね。


 チワワオデッセイは心の癒しとなる家庭内冒険譚です。精神的に落ち込んだ人を癒やすためのセミナーにも使われることがあり、そういった場合に提示されるのが、チワワオデッセイとなります。


挿絵(By みてみん)


 この猫オデッセイは真の自己の探究。すなわち望郷。

 次のチワワオデッセイは心からの癒し。


挿絵(By みてみん)


 そうした違いがあります。


 であれば当然、描かれる冒険譚にも違いがあるということです。


 茶トラオデッセイは、家に帰る猫の旅路を描くことを中心に据えており、これは猫のイメージを通じて心の探求・創造的な発想・人生の旅路を表現しています。


 一方、チワワオデッセイは、小型犬であるチワワの生活を描くことが一般的です。家という箱庭のなかにも、大冒険はあるのです。これはより小規模なスケールで、チワワの日常を通じて癒しや心の健康の探求を促すアプローチとなります。


 いつか会いに来る茶トラと、今もここにいるチワワ。オデッセイを行う者たちの中には、両方を描く者も多いようです。


 これはほんの一例であり、さまざまなオデッセイが、茶トラオデッセイに端を発しているわけです。


 みなさんの中にも、オデッセイに取り組む方がいらっしゃるかもしれません。


「ニャンコスキー先生、自分がそうです!」


 おお、素晴らしいですね。


 オデッセイ運動は、何かを信じて自身の行動を変えるというレベルをこえて、世界を創造してやまないエネルギーをもっています。


 あなたのオデッセイは何ですか?


「ネザーランドドワーフオデッセイです」




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