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出迎え


 道中は、平和だった。何にも襲われないので、馬車に揺られているだけで私がする事がない。

 でも休憩中はフェイちゃんに稽古をつけたりした。敵はいないので、私の触手を防ぐ練習だ。そうしていると、兵士の人たちも寄って来て稽古をお願いされるようになった。なので、お願い通り相手をしてあげた。

 そんな感じで稽古をつけていくうちに、旅の一行とはちょっとだけ仲良くなることが出来たと思う。皆、とても良い人である。カトレアが選りすぐった信頼できる人たちなだけはある。まぁ中には私に反感を持っていそうな人もいるんだけど……ちょっとだけ私を見る目がアレなだけで、実害がある訳ではない。


 それで私達が向かっている場所なんだけど、デサリットとはだいぶ離れた場所にある、カラカス王国という国らしい。

 その国は標高の高い場所にあり、山々に囲まれた大きな都市がある。都市の名前は、クルグージョア。デサリットやギギルスは、国の名前がそのまま首都についているけど、カラカスは違う。カラカス王国の首都がクルグージョアで、クルグージョアに私達は向かっている。

 ザイール諸王国の真ん中くらいに位置する山の間にあるその国は、技術力がとても高いのだとか。山にある事を活かした金属採掘に、金属加工技術、それに空飛ぶ魔物を利用した空軍も存在するらしい。街並みも、デサリットやギギルスとは根本的に違うとカトレアが言っていた。

 それはちょっとだけ楽しみ。一体どんな町なのだろうか。


 でもね、めっちゃ遠いわー。何日たっても、どれだけ進んでも、寝ても覚めても目的地には辿り着かない。どれくらい経ったかな。確か今日で……そう。デサリットを出発してから、14日目だったと思う。2週間だよ。長すぎてイライラして来た。

 やっぱり、転移魔法は早急に覚える必要がありそうだ。そう感じている。


 『アリス』習得魔法一覧

 ・フィオガ

 ・フィオガバース

 ・ラグラス

 ・ラグジクス

 ・ラグネルフ

 ・ラグロフティ

 ・シャモール

 ・グラシャモール

 ・リズベシャモール

 ・ファストシャモール

 ・テラ

 ・テラブロー

 ・テラブラッシュ

 ・テラガルド

 ・テラルード

 ・テラクェール

 ・グロム

 ・グロムリーパー

 ・グロムゼロン

 ・グロムボルド

 ・ネロ

 ・ネロレック

 ・ネロエグザム

 ・ネロボルティ

 ・ガオウサム

 ・フィールン

 ・風刃

 ・ハスタリク

 ・エンドスカーム

 ・消滅魔法

 ・ジアスブロート

 ・レデンウォール


 魔法はだいぶ増えたよ。フェイちゃんとの修行の賜物だね。レベルとかの方はあまり変わってないから割愛。

 本当は闇系の最強魔法にロマンを感じて土系の魔法から上げ始めた私なんだけど、ここにきて方向転換。転移魔法を覚えるために必要な、火と雷と風の魔法の経験値を主に上げている。

 ただうろ覚えで、どの段階で覚える事が出来たか自信がない。たぶんもうちょっと火の魔法の経験値をあげていけば覚えられたような気はするけど、定かではないんだよね。もしかしたらもっと必要な物があったかも。まぁその時はその時だ。


「……目的地まで、あとどれくらい?」

「どうでしょう。あと数日といった所だとは思いますが。……でも私は何日かかっても良いのですけどね。アリス様と同じ空間に常にいられるのですから、文句はありません」


 同じ馬車での移動なので、カトレアとは今までにないくらいずっと一緒にいる。夜寝る時もこの4人は同じテントなので、4人で話をして夜も更けていく日もある。所謂女子トークというやつだ。初めての経験である。という訳で、本当にずっと一緒なのだ。


「ですが、まさか旅先でシャワーが浴びる事が出来るなんて、思いもしませんでした……」

「本当にそうですよね。アリス様のおかげで、毎日身体がキレイで気持ちがいいです」


 私はリーリアちゃんとの旅で、水と火の魔法でお湯を作り出す技術を得ている。それを利用して毎日皆にシャワーを浴びてもらう事で、皆の身体はとてもキレイだ。旅の途中で村に立ち寄り、お風呂を借りる必要もない。食料も私のスキル、亜空間操作によって大量にしまってあるので、腐る事もないので買い出しのためにどこかに寄る必要もない。

 おかげでけっこう時短になっているはずなんだけど、それでもまだつかないのだから恐ろしい。この時代、この文明の人の移動って本当に大変だよね。


「……」


 その時、私は気配を感じ取って馬車の中で立ち上がった。そして窓から外を見る。

 外は森林に囲まれた道で、視界が悪い。けど、間違いなく何かが来る気配を感じ取った。臭いもする。嗅いだことのない、良い匂いだ。


「どうしたのですか、アリス様」

「何か来る。馬車を止めて」

「馬車を止めてください!」


 私の指示をフェイちゃんが反復して大きな声で言って、外にいる兵士に伝わった。馬車が止まったのを見計らった私は、扉を開いて外へと出て行く。

 そして、何かが向かってくる方向を睨みつけた。


「な、何が……?」


 そんな私の様子を、兵士が戸惑った様子で見ている。彼らには分かっていないようだけど、確実に何かが来ようとしているので、彼らにもその事を伝えるように指をさしてあげた。

 少しして、甲高い獣の鳴き声が聞こえて来た。声はまだ遠いと思ったら、それが高速で私達の上を通りぬけて風が巻き起こる。風といっても、大した風じゃない。ちょっと草木が揺れただけ。

 身体がちぎれそうなくらいの風を経験している身としては、こんなの風とも呼べないかな。と、ドヤ顔で語ってみる。


「……どうやら、お迎えが来たようですわ」


 馬車から降りて来たカトレアが、そう呟いた。彼女は空を通り抜けた物の正体を知っているようだ。

 そんな彼女の傍では、フェイちゃんが剣に手を当てて警戒している。ちゃんと護衛をしていて偉いね。


「旗を掲げ、森が開けた場所まで進みます。アリス様。アレは敵ではないので、ご安心してください」


 敵じゃないのか……。なら、食べる必要もないね。

 兵士達はカトレアに指示に従い、大きな旗を取り出してそれを掲げた。なんか、軍隊の行軍って感じでカッコイイ。

 そんなカッコイイ状態で少し進むと、森が開けた場所に先ほど頭上を通り抜けたのと同じような魔物がいた。

 それは、羽の生えた大きなトカゲだった。見方によってはドラゴンだけど、それほど立派な物ではない。人を2、3人乗せたらもう乗る場所がないような、馬に長い尻尾と羽がはえたくらいの大きさだ。魔物の上には鎧を着こんだ人が乗っていて、魔物に装着された手綱を握っている。人が乗っていない魔物も手綱を木に繋がれておとなしくしており、その魔物が人の支配下にある事を示している。

 それ以外にも人はいて、どうやらこの場で検問でも張っていたようだ。道にはちょっとした要塞があり、そこには数十名の兵士がいる。


「総員敬礼!」


 彼らが、訪れた私達に向かって胸に手をあてて姿勢を正し、敬意を示して来た。そんな中で馬車が止まると、カトレアが降りていく。続いて私達も降りていくと、カトレアがお辞儀を返す事で敬礼が解かれた。


「デサリット王国の姫、カトレア・リグハート・ラ・デサリット様とお見受けいたします!」


 私達に近づきながらそう話しかけて来たのは、竜の兜を被った、たぶん女性だ。声が女の人だし、匂いも女の人だから。

 兜は目つきが鋭く、頭から角が飛び出した本当に竜のようなデザイン。兜だけじゃなくて、その下の鎧も凄い。全身赤黒い鱗で覆われており、肩からはトゲが飛び出していて動きづらそう。


「その通りです。そちらは、カラカス王国が姫君、姫騎士シェリア・リル・クルグージョア様ですね」


 カトレアに名前を呼ばれた騎士さんが、兜に手をかけた。そしてその兜を取り外すと、その顔を私達に晒す。


「ああ!久しぶり、カトレア!元気だった!?」


 晒された顔は、ゴツイ鎧とは裏腹な元気いっぱいな笑顔だった。


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