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アリの大群


 はい、大きなアリさん達。お食事中すみませんね。


 テラ!


 私の魔法が発動し、大きく開いた空間を覆いつくほどの巨大なアリの群れの足元の地面が隆起した。隆起した部分にはまず紋章が浮かび上がり、そこから土が盛り上がってアリを攻撃。数匹のアリが一撃で死に絶え、突然おきた異変にパニック状態に陥る。


 名前:── 種族:ジェリアント族働きアリ

 Lv :59 状態:普通

 HP:409 MP:55


 アリのステータスはこんな感じ。

 あまり強くない分、数が凄い。始めに遭遇した蜘蛛なんて目じゃないくらいの数がいるんだから、見た目もグロい。

 でも頭はあまり良くないようだ。狼狽えるばかりで、天井に糸をさげてぶら下がる私に気づく様子もない。

 今がチャーンス。テラ!テラ!テラ!テラララララ!

 私が魔法を連発すると、空間の地面が大きく形を変える。彼らにとって地面や壁が突然自分たちに牙をむいて来て、悪夢のようだろう。


 一体一体の経験値はそうでもないけど、数をこなせるのでコレは美味い。レベルもだけど、魔法の経験値も積む事にも成功。『テラブロー』という魔法を覚えた。

 やはり私の推測は正しくて、アリスエデンの神殺しの世界のように、魔法を使えば使う程経験値をつんで新たな魔法を覚える事ができるようだ。


 アリさん達には悪いけど、このまま私の経験値の糧になってもらうよ。死体は後で私が不味くいただくから安心してほしい。


「キキャアアァァァァ!」


 完全に油断していた。私は地面に群がっている雑魚だけだと思っていたんだけど、違った。

 下にいるアリよりも大きな身体を持つ個体がいて、私が先程ステータスを覗いたアリよりも大きな口と牙に頑丈そうな皮膚で覆われた身体を持っている。それが突然群れの中から凄い跳躍力を見せて飛び出し、私に向かって一直線に飛んできた。


 名前:──  種族:ジェリアント族兵隊アリ

 Lv :380 状態:興奮

 HP:6090 MP:190


 兵隊アリ……そうか、下の雑魚は働きアリで、戦う専門の兵隊アリも別にいたんだ。

 兵隊アリは働きアリよりも遥かにレベルが高く、見た目もゴツイ。そんなアリが私に噛みついて来て、私を顎で挟んだまま地面に落下。天井はかなり高く、そんな高さから落ちたもので、その時の衝撃で私を地面に落としたアリは足がおかしな方向に向いた。

 それでも私をその口から放そうとはしない。


「ギギャオオォゥ!」


 そこに別の兵隊アリが襲い掛かって来た。2匹で私の身体を牙で挟み込み、食いちぎろうとする。でもちぎれない。

 蜘蛛の時と同じだ。私を傷つけようとしても、物理攻撃耐性で受けるダメージは極端に低く、自動回復によってすぐにHPが回復する。


 レベルも私より低いし、死ぬ気がしない。

 んじゃ、引き続き魔法の経験値でもあげさせてもらいますか。


 テラブロー!


 魔法を使用すると、空中に紋章が浮かび上がった。そしてその紋章の中から大きな岩が飛び出して、私に襲い掛かって来たアリに直撃。アリはぐしゃりと潰れる音をたてて、死に絶えた。

 更に魔法を使いながら、私に噛みついて離さない兵隊アリの牙を食べて体内に侵入し、体内から全てを食らいつくしてやった。

 そしてとても不味かった。


 おえぇぇぇ……テラブロー!おぇ……テラブロー!おおえぇぇ。


 ははは、潰れろ潰れろー。

 アリの体内から出て来てもなお、私は魔法を放ちまくる。吐き気を催しながら、アリ達を虐殺だ。アリよりも大きかった人間の頃と変わらない。アリは人間にとって、絶対なる弱者。虐げられ、人間の自由意思で駆逐される存在なのだ。

 ま、今私はナマコなんだけどね。


 とまたもや調子に乗った所で、突然身体に液体がふりかかった。うえ、何だこれ。口に入っちゃったけど、滅茶苦茶不味いじゃないか。どうせなら、甘くておいしい炭酸のジュースが飲みたいな。

 というか……あ、熱!?あつつつつつ!?身体の中が、外が燃えるように熱い。もしかしてこの液体のせい!?ヤバイ滅茶苦茶熱い!


 私は地面をのたうち回りながら身体に付着した液体をとろうとするけど、そこにすかさずまた液体が放たれた。

 この液体は周囲の兵隊アリが私に向かって吐き出した物で、どうやら物を溶かす効果があるようだ。岩も溶かすほど強力な液体で、地面に落ちた液体が煙をあげて地面をも溶かしている。そんな物がかかって平気な訳がない。ましてや私はそれを、食べてしまったんだ。

 身体がただれた上に穴が開き始め、HPが急激に減っていく。自動回復のスキルも、この液体がかかっている状態では発動しないようだ。回復せずにただ減っていくだけで、私は一気にピンチに陥った。


 このままではさすがにマズイ。本当に、本当にピンチである。


 という訳で一旦逃げようか。スキル、『土内移動』。コレを利用して、私は自分の足元に頭を突っ込んだ。すると、地面に穴が開いて私が入れるスペースが出来上がる。私は更に身体をくねらせてつっこみ、身体を隠す事に成功。この小さな穴ではアリ達が入ってこれない。

 私は土の中を進みながら身体を擦り付ける事で、身体についた液体を拭う。でも飲んでしまった液体は私を苦しめ続ける。本当に熱い。身体の中が燃えているよう。

 いやまさかこんなネタスキルと思われたスキルが役にたつなんて、思いもしなかったよ。


 それにしても……許せない。この私をこんなつらい目に合わせるなんて、絶対に許せない。


 私は土の上にいるであろうアリたちに向かい、魔法を放った。


 テラ!テラテラテラテラ!テラブロー!テラ、テラブロー!


 アリ達の断末魔の悲鳴が、土の中にまで聞こえてくる。それでも私は攻撃の手を緩めない。

 殺す。殺す、殺す、殺す殺す。沸き起こる殺意に従い、私はアリを殺した。でも途中でMPが尽きてしまい、私はそこで攻撃の手を一旦止める事になる。止めざるを得なかった。


 ……静かだ。あれだけ騒がしかったのに、何の音もしない。

 気づけば身体にかかっていた液体も無事に取れ、体内の熱いのも収まっている。自動回復が無事に発動し、身体は元通りである。


 回復した訳だし私は恐る恐る自分が通って来た穴を戻り、地上に顔を出してみた。


 うわぁ。酷い光景。


 そこには岩で潰された多くのアリがいて、地面も隆起しまくって中には先端に頭だけのアリが乗っている物もあり、地獄絵図と化していた。

 一体誰がこんな事を。へへ、私だ。経験値も大量に入ったし、魔法も新たに『テラブラッシュ』と『テラガルド』を覚えている。


 さぁて、ステータスの確認でもしながら死体を食い荒らそうかね。私は上機嫌で戦闘後の処理を開始しようとしたけど、突然背後から殺気を感じて振り返る。


 そこにいたのは、更に巨大なアリだった。


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