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次なる得物を求めて


 魔法名だけでは、まだ断定できない。カエルも蜘蛛も、アリスエデンの神殺しには出てこなかったモンスターだ。私のようなナマコのモンスターもいなかった。スキル等の設定もゲームにはなく、この姿になってから初めて見た。ここがアリスエデンの神殺しの中と決めつけるのは、まだ早計だ。


 今はそれよりも、残りの蜘蛛達をどうするかである。彼らは仲間の一匹が私に食い殺されたのをみて、大変おかんむりだ。四方から一斉に私に向かって糸を吐きつけて来て、私の身体に絡みついて来る。

 再び拘束されてしまったけど、私はその糸を噛み千切ってやった。

 口にした糸は、普通に食べる事が出来てカエルよりも美味しかった。まぁ不味いのには変わらないんだけど、カエルよりはだいぶマシ。

 すると、習得魔法に『フィールン』という魔法が追加された。

 それが何なのか考える暇もなく、蜘蛛達が襲い掛かってくる。再び私に食らいついてきて、私を殺そうとする。だけどその牙が私を貫く事はない。どれだけ彼らのレベルが高くても、スキルのおかげで彼らが私を食べるのは不可能。

 逆に、食らいついて来た中の一匹に噛みついて、六本ある内の一本の足を噛み千切ってやった。


「ギィィィ!」


 叫び声をあげて、のたうち回る蜘蛛。彼が失った足は他の蜘蛛が拾い上げ、美味しそうに食べましたとさ。

 毒霧をかけられても、もう私には効かない。たぶん状態異常耐性があがったおかげで、彼らの霧は効かなくなった。更に蜘蛛を一匹食べた事によって、私のHPは全回復している。どうやら食べるとエネルギーとなり、回復するみたい。


 名前:── 種族:──

 Lv :40  状態:普通

 HP:774  MP:55


 どうよ。レベル1で一時HP2だった私が、ここまで強くなってるよ。

 さてさて。どうせなら、覚えた魔法とやらを試してみよっかな。

 でも魔法ってどうやって使うんだろう。とりあえず『フィオガ』を使ってみたいんだけど、ええと……ええい、とにかく出ろ。


 フィオガ!


 心の中で念じ、叫んでみた。すると私の前に赤い紋章が浮かび上がり、その中から炎の玉が射出。蜘蛛を数匹焼き払い、周囲が一気に明るくなった。

 すげぇ。私今、魔法を使ったよ。人生初めての経験に、わくわくだ。でも私の炎は、残念ながら弱かった。焼き払ったと思った蜘蛛はピンピンしていて、炎を纏いながらも生きている。


「……」


 マジか。炎効かないか。いやむしろコレはレベル差のせいなのかな。

 食べる行為はスキルイーターの力によって防御力を無視しているようだし、普通に攻撃したら効かないのはレベル差を考えれば当たり前と考えられる。それはゲームならではの話だ。現実で燃やされてダメージが一切ないなんて事、あり得ないからね。


 この作品はフィクションです。現実で燃やしたら、普通に熱いです。


 て事で、やっぱりこの世界はゲームだわ。今確信した。


「ギィギィ!」


 私に燃やされた蜘蛛は、私の魔法が効かないのをあざ笑うようにして鳴き、私に突っ込んで来た。何度やっても同じ事。私には君らの物理攻撃も、毒も効かない。

 襲って来た蜘蛛は、口を開いて食べさせてもらう。一匹食べ、また次の獲物が突っ込んで来て食べる。その繰り返し。

 私が食べた物は、一体どこへいっているんだろう。この小さな身体にありえない程のエネルギーを蓄えている気がする。それでも私の食欲はまだまだ衰えない。不味い物を食べているのに、とても不思議だ。

 彼らも彼らで、これだけ仲間が目の前で歯が立たずに死んで行っているんだから諦めて逃げればいいのに。何故か逃げる事をしないのは、彼らの本能に逃げるというシステムがないからだろうか。それともゲームらしく、敵には逃げると言うコマンドがないとか。

 ま、おかげで私のレベルはうなぎのぼりな訳で、助かるから別にいいけどねー。


 しばらくしてようやく静かになった。

 地面を覆いつくほどいた蜘蛛の群れは跡形もなく消え去り、私の身体の中である。


 名前:──  種族:──

 Lv :170  状態:普通

 HP:2990  MP:220


 全ての蜘蛛を倒した結果、私のレベルはこんな感じになった。良い感じじゃない?カエルのレベルが確かレベル1355だったっけ。まだまだ遠いけど、この調子ならすぐに追いつける気がする。

 でも偉そうなおじさんに瞬殺されてたし、それでもまだまだ弱い部類なんだろう。

 コレがアリスエデンの神殺しの世界だったら、かなり高いレベルなんだけどねぇ。あの世界だったら、レベル100でラスボス余裕で倒せちゃうから。


 まとめ。

 この世界は、何かゲームの世界っぽい。アリスエデンの神殺しの世界かどうかは分からない。私、ナマコ。


 こんな所か。うん。カオスだね。

 でもハッキリしてるのは、生きたいならそれなりに頑張らなければいけないと言う事だ。偉そうにおじさんに踏みつけられ、蜘蛛達に襲われて分かった。私は死と隣り合わせの状況にいる。死にたくなければ、強くならなければいけない。

 そのためには自分の事を知る必要がある。この身体は、とろい。魔法は使えるけど、レベル差がある相手には通用しない。

 さっき襲われた蜘蛛達のレベルから察するに、通常のレベルは130台ほどで、中ボスレベルがカエルの1300。大ボスが偉そうなおじさんくらいと考えられる。現在私のレベルが170なので、ちょっとだけ強い雑魚といった位置づけか。


 当面はレベル上げに専念すべきだ。


 そういう結論に至った。こうして私は身体を這いずらせ、獲物を求めて旅立つのだった。


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