表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/164

不味い


 スキルの名前だけを見ても、効果が分からない。

 暗闇耐性ってのは、なんとなく分かるよ。今周囲には光が一切なく真っ暗なはずなのに、何故か周囲の状況を感じ取れるのはこのスキルのおかげだ。

 レベル1とあるけど、コレはなんだろう。レベルがあがれば、もっとハッキリと見えるようになるのかな。

 アナライズってのは、なんとなく分かる。分析という意味で、ファンタジーゲームとかでよくあるスキルだ。相手の強さを見たり、状態をみるスキルだね。この力のおかげでカエルのステータス画面を見る事ができたという訳だ。

 他2つはよく分からん。亜空間操作と、スキルイーター……一体どういうスキルなんだろう。そう想ったら新しい画面が開いた。その画面にはこう書かれている。


 スキル『亜空間操作』

 亜空間への扉を開き、そこに拾ったアイテムなどを収容できる。収容量は無限。

 生物を亜空間へ保存する事は不可。生物は亜空間に入った瞬間、消滅する。


 なんと、スキルの説明画面が出たのだ。

 その説明によると、某ネコ型ロボットが携えているアレみたいに、好きな時に好きな量の物をしまっておけるという事か。試しに開いてみよう。

 念じると、目の前に黒い穴がポッカリと開いた。空中にだよ。裏に何かがある訳ではなく、完全にどこかに繋がっている漆黒の穴が開いたのだ。この中にアイテムをしまっておけるんだね。便利ー。


 続いてスキルイーターの説明画面を開いてみる。


 スキル『スキルイーター』

 食べた相手が所有していたスキルを奪う事が出来る。食べる行為にレベル差や防御系のスキルは影響しない。

 覚えたスキルのスキルレベルは初期から始まる。称号系のスキルや種族固有のスキル等特殊スキルは覚えられない。


 なるほど、相手を食べるとそのスキルを物に出来ると言う訳か。称号系やら種族固有のスキルと言うのはよく分からないけど、けっこういいスキルじゃん。

 ただ問題は、この身体でどうやって食べるかだ。基本、お肉はしっかり火を通して焼かないとダメだよ。じゃないと食中毒になったり、寄生虫に身体を冒される危険性がある。


 だからね、目の前にカエルの死体があるけど絶対に食べちゃダメ。凄く美味しそうな匂いがするけど、絶対にダメ。焼かないとダメ。いい、自分。絶対にダメだよ。

 私は先ほどからかぐわしい香りを放つカエルの死体を、実はチラチラと見ていた。だって、本当に美味しそうな匂いがするんだよ。こんなの絶対に美味しいはずがないのに、何故かだよ。


「……」


 ぐっと堪えていたけど、どの道何かを食べなければ生きてはいけない。この身体は目の前の餌を欲し、私の脳に訴えかけている。

 よく考えれば今の私は人ではない。だから多少生で食べたって、もしかしたら問題ないのではないか。身体は目の前のカエルを欲している。踏まれて歪んだ身体を治すのには栄養が必要だ。何より私はお腹が減っていた。飢えているのに、目の前のご馳走を食べずに見逃す事はできない。

 ズルズルと身体を引き摺り、私はカエルの死体の肉片の一部へとやってきた。この部分は足の付け根だ。表面はイボイボでごつくて堅そうだけど、肉厚で美味しそう。そう感じるのがまずおかしい。おかしいと思うんだけど、我慢できない。

 私は意を決して小さな口でその足に食らいついた。

 硬く分厚いカエルの皮は、普通なら噛み千切るなんて無理なくらいぶよぶよで頑丈だ。でも何故か私の口は、そんな皮を貫いて食べる事が出来た。歯も何もないのに、口の中に入って咀嚼するとまるで綿のように口の中で溶けだして、同時に味を感じる事が出来る。


 ぶっ。お、おえぇぇぇぇぇ!まっず!本気で不味い!

 生臭すぎて、まるでドブを食べているかのような強烈な不快感に襲われる。


 なのに、どうして。何故か美味しそうで食欲が収まらない。

 皮を突き破り、中のお肉に到達すると更に不味い。皮がドブなら、肉は生ゴミだ。今私は、私が知る限りで一番不味い物を食べている。

 普通なら吐いて死んでいる所だ。それくらい不味い。だけどこの身体は、どれだけ不味い物を口にしても吐く事はない。そして飢えをしのぐため、身体は動き続ける。私はあっという間にカエルの足を食い尽くすと、今度は胴体の破片に食らいついた。次は手。次は足。そして胴体の破片に頭。最後に残っていた足の欠片を食べ、その全てを残らず身体の糧とした。

 後に残ったのは肉がなくなって、骨だけになったカエルの死体だけ。内臓も食べたよ。もう全部が美味しそうで、でも不味くて、止まらなかった。


 ぼおおええええぇぇぇぇぇ!


 全てを食べ尽くした頃になると、踏まれて形が変わってしまっていた身体が復活していた。苦しいのが完全に治ったよ。代わりに強烈に気持ち悪い。だけど気持ち悪いだけで吐けない。吐く物がない。

 ただ不味い物を食べたという気持ち悪さなので、本当に純粋にただただ気持ちが悪い。だから大丈夫。気持ち悪い事以外は絶好調になり、ナマコは完全復活を果たした。


 すると、自分のステータス画面に変化が表れた。主に変化があったのは、習得したスキル一覧の画面だ。


 名前:── 種族:──

 Lv :1  状態:普通

 HP:15  MP:0

 スキル一覧


 こんなに気持ち悪いのに状態が普通ってのが気に入らないけど、お腹いっぱいになったからかHPは回復している。続いてスキル一覧の方だ。


 『──』習得スキル一覧

 ・亜空間操作

 ・スキルイーター

 ・自動回復

 ・言語理解:人語

 ・言語理解:竜語

 ・言語理解:魔族語

 ・アナライズLv1

 ・物理攻撃耐性Lv1

 ・攻撃魔法耐性Lv1

 ・弱体魔法耐性Lv1

 ・全状態異常耐性Lv1

 ・暗闇耐性Lv1

 ・自然環境耐性:熱Lv1

 ・自然環境耐性:水Lv1


 一気にめっちゃ増えたやないかい。カエルのスキルをスキルイーターの効果でそのままゲットする事ができ、色々と凄い事になっている。画面は一ページでは追いつかず、スクロールして下にいくという始末。

 各種レベルは1からやり直しのようだけど、まぁ凄いでしょ。特に言語理解とか、言語を理解して発する事が出来る能力。文字を読む事も出来る、だってよ。一瞬にして私は3か国語を喋れるようになったとか、ヤバくない?いや、喋る事はできないけどね。なにせナマコだもんで。


 そこでようやく一息つく事が出来た。まずはなんとかピンチを脱することができたかな。


 でも次なるピンチはすぐそこに迫っていたのだ。具体的に言うと、私の後方10メートルくらいにね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ