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神様がいなくなった世界


 ここで私たち以外の、皆の様子を語っておこうと思う。


 まずカトレアだけど、向かった先のルッフマリン神仰国と戦闘になり、魔族とデサリットの兵士両方に、多数の死傷者を出す事となってしまった。ルッフマリンには大勢の殉教者がいて、周辺の村々を襲い、虐殺を繰り広げていたらしい。そんな狂気に染まった軍勢に対応できる勢力は周辺にはおらず、彼らはやりたい放題だった。

 そこにカトレア達が救世主として現れ、ルッフマリン神仰国の狂った人々を鎮圧。それ以上の虐殺を阻止する事に成功し、多くの犠牲者が出たもののそこで侵攻を食い止める事が出来た。

 しかし中にはかなりの強敵もいたようで、一時カトレアの命も危ぶまれたらしい。でも同行させたテレスヤレスや、魔族に、フェイちゃんを始めとするデサリットの兵士達も必死に戦ってくれて、それで無事だった。

 テレスヤレスを同行させて、本当によかったよ。

 神仰国を押し戻した後は、人間側との交渉でカトレアが活躍してくれた。カトレアは魅了のスキルに苦手意識を持っているようだけど、その時はここぞとばかりにそのスキルを活かし、周辺の人々を魅了。

 ルッフマリン神仰国を倒してくれたものの、突如として現れた魔族に対して警戒心を抱く国は多かった。攻撃も辞さない勢いだったみたいだけど、カトレアが説得して回って攻撃を回避。魔族や、デサリットが攻撃も侵略もする意思もなく、ただ単に神仰国を倒しに来ただけだと理解してもらい、神仰国を倒したお礼に食料等の支援も受けられたとか。


 そしてカトレアは、その地方でこう呼ばれるようになった。『救世の女神』、とね。私と同じ二つ名をゲットした訳だけど、何故だろう。私よりもめっちゃ良くね?私なんて、『滅殺の悪魔』だよ。カラカスでは『山喰いの悪魔』なんてクソださい名前をつけられそうになった。

 この扱いの差はなんだろう。


 まぁいいんだけどね。カトレアは確かに、女神のように美しい。恋人の私から言わせてもらえば、彼女にピッタリのいい名前だと思う。そこは、素直に嬉しい。


 一方でウルスさん達、ジスレクト神仰国に向かった一行は、更なる難関に遭遇する事になった。

 こちらも多数の死者が出て、魔族と人間双方の大勢が傷つく事となってしまった。

 ジスレクト神仰国は、彼らが到着した時既に大きな町を一つ攻め落としていて、その町の中でやりたい放題やっていたらしい。町の人々を救うために攻撃を開始した魔族の軍勢に対し、神仰国は人間の盾を利用しながら抵抗。狂気が渦巻く戦場となり、戦いが終わった時は肉体的にも精神的にも、ダメージを負ってしまった者が多い。

 オマケに、ようやく戦いが終わったと思えばそこに周辺の国の軍勢がやってきて、その惨状を魔族によってもたらされた物だと勘違いされてしまったらしい。

 その勘違いをどうにかしてくれたのが、ウルスさんだ。彼は今にも攻撃を仕掛けて来そうな軍勢に対し、たった一人で交渉に向かって惨状が神による物だと訴えた。

 最初は疑われたけど、ウルスさんの必死な説得と、救われた町の人々の証言により、どうにか疑いを晴らす事が出来て戦闘は回避。最後にはお礼と支援物資まで貰う事が出来て、全てが丸く収まった。


 カラカス王国の方でも動きがあったみたいで、突然サンド王国が周辺のザイール諸王国に対して宣戦を布告。侵攻を開始したみたい。

 サンド王国には、神様によって殉教者が配置されていた。そんな物を自ら引き入れて、大きな力を手に入れたと勘違いしたサンド王様が神様の動きに呼応するような形で動き出したのだ。

 だけどその動きはカラカス王様に察知されていて、阻止された。ワイバーンを駆るカラカスの軍によって、殉教者はなすすべなく殲滅。サンド王国の兵士達はほとんど殉教者頼みの戦力だったので、それからはあっという間に鎮圧され、サンド王国は滅びる事になった。

 今はエルヘンドさんが統治を務める事になり、エリューソ王国の一部になる事でザイール諸王国が合意した。元々エリューソ王国はあまり大きくない国で、余裕があるからという理由でだ。それでもたぶん、大変には違いない。

 でもエルヘンドさんなら、大丈夫だろう。


 私達の留守を狙い、デサリットにも襲撃があった。殉教者による襲撃だ。でもクァルダウラの活躍で被害は小さく済み、こちらは死者は出さずに済んだ。

 前にも留守を狙われた事があるけど、それと同じ事が繰り返されたと言う訳だ。前回は、テレスヤレス。今回は、クァルダウラのおかげで事なきを得る事が出来た。

 ただ……クァルダウラの火によって火災が発生し、町の外がちょっと燃えたらしい。けどこちらも大した被害ではない。


 私がアリスエデンに行っている間、各方面で戦闘があり、皆が皆の役割を果たしてくれておかげで全てが丸く収まった。


 生き残った殉教者達は、私達がアリスエデンで神様を倒した瞬間に皆一斉に気を失い、しばらくして目が覚めると元の人間の人格に戻っていたらしい。念のため、皆檻の中に入れられて監視される事になったけど、神様に操られていた時の記憶を失っている彼らは本当に普通の人間で、ただただ怯えるだけだったみたい。

 という訳で、すぐに解放されて自由の身となった。神様が消えた事により、殉教者は元に戻る事が出来たんだね。


 皆の様子は、そんな感じ。

 自分のなすべき事を終えてからギギルスに集合し、互いの健闘を称え合った。特にカトレアは私に抱き着き、褒めて欲しくて頭を差し出してくる始末。フェイちゃんとネルルちゃんと、テレスヤレスも同じような感じ。

 私は皆を褒めた。逆に褒められたりもした。皆で掴み取ったこの勝利を、皆で称え合う。

 皆、本当に頑張ってくれた。皆最高過ぎて、私は嬉しい。


 こうして、この世界から神様はいなくなった。でもまたいつか、きっと復活する。その時がいつになるかは分からないけど、とりあえず私や皆がいる内は安全だ。復活したら、また倒して見せるから。


 今は神様のいない平和な時を、ただただ満喫しようと思う。


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