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お料理の時間


 その気持ち悪い邪神が、地面の闇の中に消えた。そして気づけば私の背後の闇の中から姿を現わしており、手を振りかぶってその手を私とリーリアちゃんに向かって振り下ろそうとしている。


 その手の先端にボコボコと闇が溢れ出しており、その闇が剣の形に変化してその剣で私とリーリアちゃんを切り裂こうとしているようだ。


『お料理の時間でちゅよー!』


 邪神の口調が変わった。相当ふざけた口調で、威厳を全く感じられない。

 でもその声は神様達の物が重なった物であり、声は神様なんだよね。神様のイメージが絶賛崩壊中である。


「……」


 私はその剣が降ってくる場所に、触手を構えて食べようとした。

 けど剣は私の触手に食べられる瞬間パカリと2つに割れて、触手を回避。割れた剣は触手を超えるとまた1つに戻り、降り注ぐ。


 剣に対しては、リーリアちゃんが刀を抜いて対応してくれそうだ。


 なので私は剣に避けられた触手で、剣の代わりに邪神本体を食べにかかった。


『あひゃひゃひゃひゃ!』


 狂ったように笑う邪神の顔が、私の触手に食べられる事によって一瞬にして消し飛んだ。

 しかし顔がなくとも、身体は動いている。その身体が繰り出して来た闇の剣をリーリアちゃんが刀で受け止めてくれて、私が斬られる事はなかった。


「っ!?アリス、避けて!」


 邪神の剣は、リーリアちゃんが止めてくれた。しかしそのリーリアちゃんが叫んでそう警告してきたので、私はリーリアちゃんを剣から庇いつつ回避行動をとった。


 すると、邪神の剣がリーリアちゃんの刀をすり抜けた。

 一瞬、確かに剣を受け止めたのに、リーリアちゃんの刀をすり抜けた闇の剣が私に襲い掛かる。剣は私の右肩の辺りに掠って振り抜かれた。リーリアちゃんの警告のおかげで、それだけで済んだのだ。警告がなかったら普通に当たっていた所である。


 振りぬかれた剣なんだけど、地面の闇がその斬撃で盛り上がっていき、膨れて破裂。闇の雨が周囲に降り注ぎ、私達を黒く染める。


 更に、剣が当たった私の右肩の部分から闇が噴き出し、私の肩をぶった切って切断させられてしまった。


「っ……」


 めっちゃ痛い。今までくらってきたどの攻撃よりも痛すぎて、私は小さく声をもらした。


『痛い?痛い?もう降参して、それで食べてもいい!?』


 そう尋ねて来たのは、邪神だ。

 私とリーリアちゃんの足元に、先ほど食べたはずの邪神の頭だけが闇から飛び出ていて、面白そうにそう尋ねて来る。

 むかつくので、その顔を食べてあげたい所。だけど邪神の身体が私達に向かって引き続き攻撃を仕掛けようとしている。とりあえず、仕組みがよく分からないので、避けるしかない。

 私はリーリアちゃんを抱いたまま飛び退いて、邪神から距離をとる事にした。


『ああーん!逃げちゃったー。悲しいな、悲しいなぁ!』


 攻撃を止めると、邪神の身体が地面から生えている首を拾い上げ、それを首に乗せた。すると、首と身体の互いの闇が結合し、1つとなる。


「アリス、腕が……!」

「平気。すぐに再生する。それよりも、今の攻撃は?」

「……実体はあるけど、感覚がなくなってすり抜けられた。というか凄い力だった。あのまま普通にぶつかってても、たぶん私は競り負けていたと思う」


 実際は、競り負ける事はない。だってそうなりそうだったら私が手伝うから。


『闇は物をすり抜ける。当然だろう?』


 邪神はバカにしたように、首を傾げて言って来た。


「じゃあどうしてそのすり抜ける闇に、私は腕を斬り落とされたの?」

『闇は生物を分断する。当然だろう?』


 ダメだ、話しにならない。

 そもそも闇ってなんのさって話だからね。これ以上聞いてもむかつくだけなので、質問はやめよう。

 しかし相手が闇だと言うなら、こちらには手がある。なんてったって、私聖女様だから。闇に対してはめっぽう強い存在なのだ。まぁでもそれなのに闇によって腕を吹き飛ばされてしまったわけだけど。


 ちなみに腕はもう再生した。覚醒状態の私の回復力の速さは、異常だ。


「なんなのよ、あんたは。あんたも、邪神よね?さっきまでとは喋り方も何もかもが別物に見えるんだけど。本当に同じ生き物なの?」

『ボクは邪神だよ。これ以上ないくらいに邪神だよ。アリスを見て、ボクも神の力を取り込めないかなと思ってやってみたんだ。結果、こうなった』


 身体をクネクネさせながら、自分の身体を抱き締めながら言う邪神は本当に気持ちが悪い。


「……」


 今の邪神はこんなだ。

 私の変化は髪の毛が白くなったことと、1つ目の邪神が生えた事くらい。一方であちらは同じ事をしたというのに、凄く気持ちが悪い。この差はなんだろう。もしかして、取り込んだ神様の人数の違いだろうか。だとしたら、私の中の神様が一人で本当に良かった。


『んでさ、避けられちゃうなら、避けられないようにすればいいよね。あは』


 邪神が私に向かって指を向け、その指をくいくい動かして笑う。

 行動がいちいちキモい。でもいつのまにか私の足が闇に纏わりつかれる事によって拘束され、邪神の言う通り逃げられないようにされてしまっていた。

 そこに間髪入れずに邪神が襲い掛かって来る。振りかぶった剣を正面から振り下ろし、私とリーリアちゃんを両断しようとしてくる。


「──リーリア。任せた」

「っ!」


 リーリアちゃんが咄嗟に刀を繰り出し、邪神の剣を受け止める。私はその剣にそっと手を触れて、聖女の力を注ぎこんだ。

 すると、刀が白に近い赤い光を発し、邪神の剣をしっかりと受け止める事が出来る力を得る事になった。更に、せめぎ合う事によって邪神の剣の闇を光が浄化していく。


『ボクのおお!ボクの剣が消えて行くうううううぅ!』


 邪神とリーリアちゃんの刀がせめぎ合っている間に、私の触手が邪神に向かって伸びている。邪神の剣は消え去りつつ、その力を急激に失っていく。

 そこに私の触手が忍び寄り、そして邪神の身体に襲い掛かった。


『ああああぁぁ、あ──!』


 邪神は私の触手に抵抗する間もなく、私の触手によって食べられてその姿を消してしまった。

 拘束されていた足の闇は、こちらも聖女の力で浄化して消し去っておいたので、もう私は自由だ。そして邪神も食べた。


『食べられるのって、けっこう気持ちいいね』


 それなのに、いつの間にか私の背後に邪神が立っていた。彼は何事もなかったかのように身体をくねらせて、相変わらず気持ちの悪い動きを見せている。


「貴方は無敵なの?」

『そんな事はないよぉ。ボクは君と同じで、死ぬ時は死ぬ。肉体を持つ者に死なない者はいないからね』

「じゃあどうして死んでくれないの?私が食べたのに」

『ボクはこの世界の支配者だよ。死ぬ訳がないじゃないか』


 言っている事が矛盾しすぎて、本当にむかつく。やはりこの状態の邪神は気持ちが悪い上に、会話がなりたたないようだ。

 答えてくれないなら、自分で考える必要がある。まぁ普通は自分の倒し方なんて、教えてくれはしないんだけどね。


『さぁー、どんどん行くよー!次はもっとド派手に行こうじゃないか!』


 考える間もくれず、邪神が両手を天に向かってあげた。その上空には漆黒の闇の塊が浮かんでおり、その塊には苦悶の表情を浮かべる神様達の顔が浮かび上がっている。


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