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ボスの弱点


 冷静になって考えよう。この世界は、ゲームの中だ。ゲームのボスには、絶対に弱点がある。あの壁を取り除く方法が何かあるはずだ。


「でもどうするの?あの壁をまたアリスに壊してもらう訳にもいかないでしょ?」


 今のこの状況で動けなくなってしまえば、それは敗北を意味する。いくら壁を壊したところで、あの巨体をすぐに倒せる訳ではないからね。

 そういう意味では私はあの壁を壊せない。勿論リーリアちゃんも攻撃を仕掛ける訳にはいかない。


「……レヴが言っていた。神様は、魂を使って強力な魔法を使う。そのエネルギー源の魂は、どこにあると思う?」

「魂……」


 私に問われ、リーリアちゃんが神様のその巨体を見上げる。

 彼らも、こちらを見ている。そして再び片手で拝むようなポーズを取ると、神様の周囲にいくつもの紋章が出現した。

 その紋章の中から出現したのは、先ほど私が放ったのと同じような火の玉だ。出現した数十の火の玉が、私達に向かって放たれて飛んで来ようとしている。

 その紋章が浮かび上がる際に、神様の背に浮いている光の輪っかが光り輝いた。


「──……なるほど。あの輪っかに魂が詰まってて、そこから力を貰ってる訳ね」


 こちらに向かい来る火の玉を前にして、リーリアちゃんは冷静にそう分析した。

 正解なので、私はご褒美にリーリアちゃんの頭を撫でておく。その両手は、だいぶ回復してきた。触手も、回復している。

 まぁそれが本当に正解かどうかは、やってみなければ分からない。


「そう。あの輪っかを壊せば、壁も消える。と思う。私が引き付ける。リーリアには、輪っかをお願いしたい。……出来る?」

「勿論。私はアリスと共闘するために、強くなったんだから。だから、出来ないなんて言わない。私に任せてくれる?」

「うん。任せた」

「ひひっ」


 リーリアちゃんは私の返事を聞くと、無邪気に笑いながら私の頬にキスをした。それから、向かい来る火の玉に向かって駆けだして行く。


 まったく、本当に狡いよ。私にこんな事をして、あんな笑顔を見せてくれて、元気が出てみなぎっちゃうじゃないか。


 リーリアちゃんは自らに襲い来る火の玉に向かって刀で斬りつけ、破壊しながら左右に回避行動をとりながら神様との距離を詰めていく。私は、その場に立って私に向かってくる火の玉を食べて迎え撃った。

 と同時に、魔法を発動させる。


「テラガルド」


 魔法を発動させると、地面がボコボコと盛り上がって岩石の兵士が作り出された。作り出された兵士は、3体。大きいけど、神様の像と比べればあまりにも小さい。

 彼らは出現と同時に、更に向かってきていた火の玉の攻撃に晒される事になる。けど、腕で火の玉をガードしながら突撃し、神様に襲い掛かって行く。


『小賢しい。このように矮小でブサイクな魔法で、このワシに勝てるとでもおもっているのか?』


 6人の神様の声が重なった声で、私の岩石の兵士が笑われた。

 この喋り方は……老人の、アスラの喋り方だね。


「矮小だろうと、ちょっと形が歪だろうと、関係ない。貴方を倒せれば、それでいい」

『無理に決まっているだろう。君達ではこの私に勝つ事は出来ない。頼みの魔王は、今頃私達の秘密兵器に殺されている頃合いかもしれないな。あーあ。あの時私達の申し出を断らなければ、こんな事にはならずに済んだのに』


 また、口調が変わった。この口調はフォーラ……たぶん、ジスレクトの口調だ。


「こんな事、とは?まだ何も起きていない。だから、後悔しようがない」

『すぐに分かるわよ。例えば、私の背後でコソコソとしているリンク族の女の子が死んじゃうかも』


 神様がルッフマリンの口調でそう言うと、その腕達が動き出した。

 光の輪っかを狙って動き出したリーリアちゃんが狙われている。そう察した私は、神様の気をこちらに逸らすために更に魔法を発動させる。


「テラルード」


 魔法を発動させると、周囲に砂嵐が巻き起こった。砂は後半に渡って洞窟内を包み込み、私とリーリアちゃんの姿を神様から隠してくれる。

 でも、大きすぎる神様は隠れられない。


「ジアスブロート」


 私は大きな物体がある方向に向けて掌を構えると、そこから炎の竜が放たれた。真っすぐに神様に向かっていき、神様を炎で飲み込もうとする。けど、竜は神様に触れる事無く壁にぶち当たり、神様を守る壁の反撃効果によって消し去られてしまった。


『無駄だよ、アリス。お前たちの攻撃がこの私に届く事は決してない。無駄な戦いはここまでにしよう。ア・ルートメア』


 突如として、空から一筋の白い光が注いだ。

 その光はレーザー光線のように私の触手を一本貫通して吹き飛ばし、更に軌道が逸れて私の本体も攻撃しようとしてくる。私はその光を身体を屈めて咄嗟に躱すと、すぐにその場を離れてやり過ごす。

 砂嵐で私の姿は見えていないはず。でも光は次々に私に襲い掛かって来て、私を殺そうとしてくる。

 見えているのかといえば、そうではない。単純に、光の数が多いのだ。無差別に、適当に砂嵐の中を攻撃している。


「風刃」


 私は砂嵐を発動させた魔法で吹き飛ばしながら、風の刃を神様に向かって放った。

 姿が露になった私に向かい、神様の指先が一斉にこちらへと向く。光線は、神様の何本も生えている手の、人差し指の先端から放たれていた。そして光線が一斉に私に向かって注がれる事になる。

 風の刃は、当然壁にぶつかって消し去られた。でも私に攻撃が集中したならそれでいい。


「レデンウォール」


 私はバリアを張ると、光線を壁で防いだり横跳びで光線を回避したりと、守りの態勢を取る事になる。

 あの光線は、かなりの威力だ。私の触手が一瞬にして吹き飛ばされてしまう程の威力であり、当たったらけっこうヤバイ。なので割と必死だ。


「……っ!」


 そして攻撃が私に集中している隙を見計らい、砂煙の中からリーリアちゃんが空高くジャンプして舞い上がった。

 神様の背後を完全に取っていたリーリアちゃんは、神様の背に浮く輪っかに向かって一直線に飛んでいく。


『あはははははは!』


 すると、ヴァレオリラが──神様が笑い出した。


『ジ・ブロント』


 神様の輪っかの中に、紋章が出現した。そしてその紋章に黒い塊が集まっていき、かと思えば次の瞬間、急激に膨れ上がって爆ぜた。

 爆ぜた闇に、そこに向かって飛んで行っていたリーリアちゃんが巻き込まれてしまう。なんとか刀でガードしているようだけど、でも無理だ。闇にその華奢な身体を蝕まれてから、くるくると回転しながら地面に向かって勢いよく落下していく。


「リーリア……!」


 リーリアちゃんのHPを覗けば、まだHPは結構残っている。かなりのダメージをくらったものの、健在だ。

 でもこのまま地面に落ちたらわからない。のだけど、リーリアちゃんの落下していく方向には、先程私が作り出した岩石の兵士が待ち構えている。

 リーリアちゃんは空中で回転する自らの体勢を整えると、岩石の兵士に足を向けた。そして2体の岩石の兵士が掌同士を合わせて着地できる場所を作り、その掌にリーリアちゃんが着地した瞬間に手を引いて勢いを殺す。

 そして今度は逆に、着地したリーリアちゃんを輪っかに向かって放り出した。放り出される直前にはリーリアちゃんも足を思いきり踏ん張り、岩石の兵士の手が砕けてしまう。岩石の兵士の役目はそこで終わり、その場で崩れ去る。


「はあああぁぁぁ!」


 岩石の力と、リーリアちゃんの跳躍力によってリーリアちゃんのスピードは格段にあがった。神様の魔法も、回避行動も間に合わない。

 リーリアちゃんが輪っかの中を通り抜け、同時に一筋の光が通り抜けた。


 その瞬間、私に襲い掛かっていた光線が止んだ。神様の動きも止まり、静かになる。


 一方でリーリアちゃんはそのままま勢いよく天井に激突してしまうけど、足から天井に着地して天井を砕きながらも、無事だ。それから、私の方に向かって飛び降りて降って来る。


 そんなリーリアちゃんを、私は触手で受け止めて迎え入れた。


「やったわ」

「凄い。さすが、リーリア」


 私はやりのけてくれたリーリアちゃんに、軽く唇を重ねてご褒美のちゅーをした。

 すると嬉しそうに笑ってくれて、私も嬉しくなる。

 この子は、本当に強くなったと思う。だからこの困難な状況に対処出来て、あの強烈な攻撃にも耐える事が出来た。そこはレヴに感謝だね。


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