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懐かしい環境

誤字報告ありがとうございます!


 あどけない少年が、大量の骨を眼下にして笑いながら立つ姿は、とても不気味だ。ただでさえ神様と言うだけで不気味な存在なのにね。


「レヴの所に帰して」

「君達が、ボク達の居場所を聞いたんじゃないか。その場所に連れて来てあげたのに、次は元の場所に帰せとか我儘が過ぎるよ」

「……レヴの大切な仲間を、レヴと戦わせるなんて許せない」

「そうだねぇ。クエレヴレは千年前、邪神との戦いで傷つき、そして命を失った仲間の魂をここでずっと探していた。その魂を、闇から解放させるためだね。でも見つける事は出来ず、生物にとって途方もない年月が経過した。本来なら彼女もとうに寿命を迎えているはずなのに、まだ若く、生きているのは闇に呑まれたアリスエデンの地に長くとどまり過ぎたからだ」

「人の気持ちを弄ぶのも、いい加減にして。私は今、ちょっと怒っている」


 神様のやり方は、承知している。人の気持ちを平気で踏みにじり、勝つためなら人の心を平気で利用する。

 でもいざ実際に私の仲間の心が踏みにじられる姿を目の当たりにすると、やっぱりゲームで第三者としていた時とは違う。本気の怒りがこみあげて来て、今すぐに食べたい衝動に駆られる。

 でもどうせ今私達の目の前にいるメドは、また幻影だ。本体はこの場所のどこかにいるはず。


「ボク達はちゃんと、平和的に解決する道を示したはずだ。それを、気持ちを弄んだとか、心外だなぁ」

「御託はいい。私達はあんた達神とかいう存在を、殺しに来たの。だからさっさと姿を現わしてくれない?ここにいるんでしょ?こっちはあんた達をさっさと殺してレヴ様の下に帰りたいのよ」

「……そうだね。いい加減、君達みたいな下等な生物に舐めた口を利かれるのもうんざりしてきた所だ。いいよ。玩具にしてあげる」


 そう言い残すと、メドの姿が消えた。

 一瞬逃げたのかと思ったけど、そうではない。

 私達がいる洞窟が揺れだすと、私が知らない神様の像以外の、神々の像が砕け散り、その中から強力な光の塊が出て来た。その光は祭壇の上に集まり、そしてくっつくと更に強烈な光を放ち、目を開けていられなくなる。

 それも少しの間で、次に目を開くとそこには一体の巨大な像が立っていた。


 背にいくつもの腕を生やし、首は6つある。首は、神様達の顔を模した像の首だ。首の上に所狭しと生えていて、ちょっと窮屈そう。その背には神々しい光の輪が浮いてついているんだけど、その光の輪にも顔が浮かび上がっている。その顔は、神様の顔ではない。色々な種族の人々の、苦し気な顔が浮かび上がっている。


『殺してやるぞ、矮小なる生物ども』


 神様達の声が1つに重なり、その声が地鳴りをおこす。同時に神様達の目が私の方を向く。

 これが、今の神様の姿なんだね。醜くて、神様と呼ぶには相応しくない。


「アリス」

「うん。アレを倒して、レヴの下に戻る」

「ええ!」


 リーリアちゃんが元気よく返事をすると、刀を抜いて駆けだした。


 私はというと、まだ2本目の触手が回復した所である。いくら自動回復のスキルを持っているとはいえ、その回復速度は中々に遅い。

 そんな状態の私だからこそ、神様たちは私になら勝てると踏んだのだろう。だからレヴと分断し、私たちは自らの手で屠るためにここに連れて来た。

 ちょっと甘いよ。


 アナライズによって、神様のステータスは見る事は出来ない。おそらく鑑定阻害のスキルを持っているからだろう。

 でもね。何故か負ける気がしないんだよ。


「はあああぁぁぁ!」


 巨大な像の足に、リーリアちゃんが斬りかかろうとしている。でもリーリアちゃんは何かに気づき、急ブレーキでその足を止めた。

 そこに神様が一本の手で祈るようなポーズをとると、リーリアちゃんの頭上に紋章が出現。そこから雷が降り注ぎ、リーリアちゃんに襲い掛かった。


「っ!?」


 紋章から出現する雷は、一発や二発ではない。いくつもの強力な雷が次々と出現し、リーリアちゃんはその雷を回避するための行動に専念する事になる。

 私はその隙にフィールンで糸を天井に伸ばし、空から神様に襲い掛かろうとした。

 勿論神様も私のその動きは察知している。別の手で再び祈るようなポーズをとると、その手の先端に紋章が出現。そこから火の玉が飛び出して、私に襲い掛かって来る。

 だけど私は飛んでくる火の玉を、触手で食べて食べて食べまくる。そうしながら落下していき、神様の顔がたくさんある上に着地しようとした。


「──アリス!壁がある!」


 雷を避けるのに専念していたリーリアちゃんが、叫んだ。それまでは叫ぶ余裕もなかったみたいで、情報をくれるのが遅くなってしまったようだ。

 壁とはなんだと考えたけど、それはこのクラークの町を囲んでいた壁の事だろう。触れる者を弾き飛ばし、攻撃するあの壁だ。私はその壁のせいで大ダメージを喰らったわけで、その壁に神様も守られているのだとしたら、たまったものじゃない。


 でも既に私は、その壁によって守られる神様の上に着地しようとしている訳で、早速のピンチである。


 リーリアちゃんの言う通り、近づくとその壁の存在に私も気づいた。透明なその壁は、気付きにくい。でも確かにあの壁と同じ物だ。


「ファストシャモール」


 私は魔法を発動させると、足元に風を巻き起こした。その風により、神様を守る壁に触れる前に身体が浮かび上がり、宙を飛んでいく。

 しかし神様はそれを許してくれない。再びお祈りのポーズをすると、私の進行方向に紋章が出現。そこから矢の形をした氷がたくさん飛び出して来て、私に襲い掛かって来た。

 更に後方にも紋章が出現して、そこからは重そうな石の塊がいくつも飛んでくる。

 依然としてリーリアちゃんには雷が襲っているのに、その上でいくつも魔法を発動させるなんて器用な神様だなと感心させられたよ。


 まぁ感心している場合ではない。このままでは私は、氷の矢にめった刺しにされた上に、石で身体をぐちゃぐちゃに潰されてしまう。

 そうならないために、私も魔法を発動出せる。


「フィオガバース」


 私の掌の前に、紋章が現れた。その紋章は私の背よりも大きく、その紋章から大きな火の玉が出現。迫り来る氷の矢に向かって放たれた。

 もう一方の石の塊には、触手で対処する。氷の矢と比べれば、こちらは大した数ではないからね。

 そちらに気を取られている時だった。私はある事に気づいたよ。なんか空気の流れが変だなってね。その空気の流れを変えているのは、私の下方から迫り来る巨大な拳だ。神様のたくさんある手の内の一本が、私に向かってアッパーを仕掛けてきている。神様らしからぬ、完全なる物理攻撃だ。


 私はその拳を、自らが放った火の玉につけた糸で身体を引っ張る事で回避し、事なきをえた。

 しかしその拳が直撃した洞窟の天井は大きく崩れ、落盤が発生。岩が降り注いでくる事になる。まぁただの岩なら問題ない。私はファストシャモールで風をおこして岩を回避しながら素早く移動し、とりあえずリーリアちゃんに襲い掛かる雷を生む紋章を触手で食べておいた。そして一旦合流しておく。


「ありがとう、アリス。とりあえず、どんな感じ?」

「……まぁまぁ」


 最初のぶつかり合いは、五分五分と行った所だろう。互いに何もダメージがないからね。ただ、壁は厄介だな。どうやって壊そうかな。

 などと考えていると、ちょっと懐かしくて笑ってしまう。心の中でね。

 思い出すんだよね、この感じ。この環境が、どうしても被るのだ。薄暗い洞窟の中。強敵との邂逅。命を懸けた戦い。

 今のこの状況は、私がこの世界に生まれたあの洞窟の中のようだ。


読んでいただきありがとうございました!

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