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分断


 皆が黒い化け物と戦っている間、私は壁に向かって触手を伸ばしてみた。すると、やはり電撃のような物が流れて触手が弾かれてしまう。口を開いてその電撃ごと壁を食べようとするけど、やはり弾かれる。

 ダメージもきっちり入っているので、この壁はやはり特殊だ。


「……」


 さて、困った。この壁、触手で食べるのも難しそうだ。レヴの魔法も通用しないと言う事は、私の魔法はもっと無理だろう。


 となると、やはり触手が必要だ。でも弾かれてしまうんだよなぁ。そこで私は考えた。


「レデンウォール」


 まず、触手の先端に魔法で壁を作り出す。そして触手で壁に突撃される。

 するとやはり、電撃が発生して弾こうとしてくる。でもレデンウォールによって触手がダメージを防がれているので、そのまま力押しで触手が壁に迫って行く。

 しかしレデンウォールが破壊され、触手に電撃がぶつかって弾かれてしまった。これも失敗である。


 そうしている間に、私の周囲は中々にスゴイ事になっていた。

 レヴが、魔法を駆使して周辺の化け物たちを倒している。バニシュさんも黒い剣を振り回し、化け物を薙ぎ払っている。2人とも、私に化け物が近づかないように、大量の化け物をちゃんと倒してくれているのだ。

 それでも、取りこぼしはある。その取りこぼしは、リーリアちゃんが刀で斬りつけて倒してくれている。

 私に化け物が近づかないよう、皆が協力して頑張ってくれているのだ。でも敵の数がさすがに多すぎる気がする。本当に、いつもはこんな感じなの?


「さすがに化け物どもの数が多すぎる!アリス!早くしないとヤバイかも!」


 リーリアちゃんがそう叫んでいる。

 どうやらやはり、通常時よりも敵の数が多いみたい。だよね。化け物の数はレヴとバニシュさんが薙ぎ払っているのにも関わらず、むしろ増えてるもん。こんなのがいつも通りだったら、さすがにヤバすぎる。

 それでも私だけが攻撃されていないのは、皆が頑張ってくれているからだ。その頑張りに応えるには、やはり壁を壊す事が一番だろう。

 でもこの壁はさすがに頑丈すぎる。というか触れられない。触手で触れる事さえできれば、後はスキルイーターの防御力無視の力で破壊する事は出来るんだろうけど、そもそも触れられないんじゃあな……。


 ……ここでもたもたしていたら外での時間はどんどん過ぎていってしまう。外で頑張っているカトレア達のためにも、躊躇している場合ではないよね。


 私は自分の触手を手で撫でてから、覚悟を決めた。


 仕方ない。ここは力技で行こう。私は4本の触手たちを集合させると、大きく口を開かせてから突撃を敢行する事にした。


 一際大きな電撃が触手たちに襲い掛かる。触手が焼け焦げ、私のHPが減って行く。それでも私は弾かれないように踏ん張り、触手を電撃の嵐の中を進ませ続ける。

 やがて、触手の先端が壁に到達した。そして食べようとしたけど、触手の一本が耐え切れずに黒焦げとなって炭となり、先が消え去ってしまった。それに続くように、もう一本の触手がダメになった。

 残るは2本である。すかさず1本の触手でもう1本の触手を庇うような態勢を取ると、先陣を切った触手が炭となってしまった。

 でも、その後ろに構えていた触手がやってくれた。彼が壁に到達し、その壁に食らいついて壁に穴を開けてくれたのだ。

 その触手も役目を終えた直後に、黒焦げになって先端が失われてしまった。


 すると、僅かにあいたその壁が修復を始めるではないか。


「っ!」


 私は慌てて自らの手を差し出し、その穴が塞がぬように手で押さえた。電撃が、腕を、身体を襲う。でも構わずに修復されようとするその穴を押し開くと、壁がガラスが砕けたかのように砕け散り、人が入れるだけの大きさの穴が開いた。


「リーリア」

「レヴ様!バニシュ!壁に穴が開いた!でもすぐに塞がっちゃいそう!私とアリスは先に中に行く!」


 リーリアちゃんはそう叫ぶと、手近な化け物を斬りつけてから私に合流。壁に命懸けで穴を開けた私を腕に抱くと、そのまま開いた穴の中へと突撃した。

 続いて、バニシュさんがこちらへとやってくる。私にとりつかないよう、化け物たちを黒い剣でなぎ倒す活躍を見せていたバニシュさんだけど、さすがにこの数を相手にするのは中々骨が折れるようで。中々こちらへはやって来られない。

 穴の周囲には、私達を追って化け物たちが集まっているからね。それが更に外の2人の行動を邪魔している。

 オマケに、壁は小さくなり続けている。その壁にリーリアちゃんが手を伸ばして塞がるのを防ごうとするも、リーリアちゃんの力では触れる事も叶わない。私は私で、触手を失ったうえ両腕もボロボロだ。

 悪いけど、これ以上は何もしてあげられない。閉じていく壁を見守るだけだ。


「──メテオフレア」


 壁の外で、大きな爆炎が発生した。壁のすぐ外にいた化け物たちが炎に飲み込まれ、一瞬にして消し炭にされた。あまりの炎の激しさに、レヴとバニシュさんが吹っ飛んだのかと思ったよ。

 私とリーリアちゃんは壁の中にいるから安全だけどさ。


「今じゃ!先に入れ、バニシュ!」


 その炎の魔法を発動させたのは、レヴだった。

 壁の中でよく見えなかったけど、とてつもない炎の魔法を発動させたレヴが、バニシュさんに先に穴の中へ入るように促している。そのレヴは、未だに穴から少し遠い所にいる。


「……」


 しかしバニシュさんは入ってこようとはしない。バニシュさんは、今なら急げばフリーで入れる状態なのにだ。

 そして黒い剣を投げつけて、レヴに襲い掛かろうとする化け物を倒して援護を始める。


「オレが動線を確保します!魔王様は、一直線に穴を目指してください!」

「っ!」


 レヴの判断は早かった。レヴは化け物たちの退治をバニシュさんに任せると、自らは魔法を発動させる。


「ファストシャモール!」


 レヴの足元に風が発生した。その風がレヴの身体を押し、加速してこちらへと一直線に飛んでくる。

 そんなレヴを邪魔しようと化け物が襲い掛かるけど、でもバニシュさんが邪魔を許さない。剣を投げつけ、穴の前の化け物は斬りつけ、レヴの邪魔になりそうな化け物を次々と屠っていく。

 その姿は、ちょっとカッコイイなと思ったよ。なんか悔しいけどね。


「レヴ様!」


 やがて、レヴが穴の間を通って壁の向こうのこちら側へとやって来た。加速してやってきたレヴをリーリアちゃんが両腕で受け止めたんだけど、地面を滑っていって最初の位置からはだいぶ離れた場所でようやく止まったよ。


「……バニシュ」


 レヴが通り抜けると、穴はもう人が通り抜けられるほどの大きさを維持してはいなかった。どんどん塞がっていき、その塞がろうとする穴からバニシュさんがこちらを覗き込んでいる。

 リーリアちゃんとレヴは吹き飛んで行ってしまったので、その彼と目が合っているのは私だけだ。


「悔しいが、魔王様の援護は貴様達に任せる」

「バニシュはどうするの?」


 壁の外は、化け物で覆われている。そんな場所に、さすがにバニシュさんだけを残していくのは心苦しい。あの数は、キツイよ。いくらバニシュさんが強いと言っても、もしかしたら死んでしまうかもしれない。

 でも、私の心配をよそに、バニシュさんは片眼鏡の位置を指で直しながら笑ってみせた。


「──殲滅する。そちらはそちらの仕事を全うしろ」

「……分かった。約束」


 そう言葉を交わした直後、壁が塞がれてバニシュさんとはそこで分断されてしまった。


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