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かつての仲間

誤字報告ありがとうございます!


 私の知る限り、レヴはゲームの中で主人公に密かな恋心を抱いていた。その恋は物語の中で叶う事無くエンディングを迎え、邪神を倒した後の真のエンディングも視ていないのでその後どうなかったかは知らない。

 だから、正直言ってめっちゃくちゃ興味がある。レヴがその後主人公とどうなったのかとか、主人公に対する本当の想いとかを、是非とも聞かせてもらいたい所。


「我にも、過去に好いた男はいた。しかしその男は我の身体になど興味がなく、一途に己の剣と幼馴染だけを愛する男じゃった。……一度だけ、この肉体で誘惑した事はある」


 その発言に、フェイちゃんが口元を手で押さえて更に顔を赤く染めた。ネルルちゃんも反応し、レヴの方を見て正座している。

 女の子って、こういう話好きだよね。私も好き。興味あり過ぎる。


「しかしダメじゃった。その男は、我の事を最後まで女としては見てくれなかった。我としては、自信があったのじゃがな。思えばそれ以来、恋愛感情という物を失ってしまった気がする。お主らが褒めてくれた、この肉体にも自信を失ってしまった」


 レヴはそう言って、再び深いため息を吐いた。


 やはりそれは、主人公に対する想いだ。イベントで、そういうのあったから。子供ながらに、そのシーンにはドキドキさせられた。けど結局何も起きずに拍子抜けしたっけ。


 でもレヴは決して、誰かから主人公を奪おうとした訳ではない。主人公の大切な人は、神々との戦いの中で命を落としてしまったから。


「拒まれるのが怖くて、恋愛に対して奥手になってしまったのですね……」

「うむ。我はもう、男に対して恋心を抱く事はないじゃろう。千年も生きて、そのような感情は一度も抱かなかったからな」

「あ、あの……」

「なんじゃ、ミズリ」

「バニシュ君に対しても、ですか?」

「アレは尚更恋愛対象にはならん。我にとって、子供に近い存在だからな。そしてアレもまた、我の事を恋愛対象として見た事はなかったはずじゃ。というか……奴に愛する者が出来て我は嬉しく思う。まぁ思う所は色々とありすぎて複雑な気持ちではあるのじゃが……根は悪い男ではない。どうか、よろしく頼む」

「こ、こちらこそ……!」

「ははっ」


 レヴに軽く頭を下げられ、ミズリちゃんも頭を下げようとした。けどミズリちゃんは湯面に顔をつけてしまい、予期していなかった出来事に驚いて顔をあげた。

 それを見て、レヴが笑う。その笑顔は、いい笑顔だった。


「男性がダメなら、それでは女性に対してならどうでしょう?」

「お主らのように、か?」

「はい」


 レヴが、美女2人に囲まれる私の方を見た。


「……確かに、そちらの方が可能性があるかもしんな。今の我は、美しき者の方に興味がそそられる」


 レヴの返答は、意外だった。レヴも、女の子好き……だったら、それはそれでなんかイイ。


「リーリアの修行はとても楽しかった。リーリアがもし我の物になってくれるなら……それはアリかもしれん」

「っ!」

「ひゃ!?」


 私は慌てた。慌ててリーリアちゃんを触手で抱き寄せて、レヴから庇う。

 触手で触れた際、リーリアちゃんが声を上げた。でもお構いなしだ。リーリアちゃんを取られる訳にはいかないから。


「あ、アリス?どうしたのよ?」


 私達の会話は、基本人語でされている。リーリアちゃんは断片的にしか人語が分からないので、少しは理解できているかもしれないけど要領を得ていない。なのでどうして私が突然リーリアちゃんを庇ったのかも分かっていない。


「冗談じゃ。リーリアもまた、そういう対象にはなり得ん。……しかし、リーリアの修行である者の事を思い出した。千年前、かつて一緒に旅をしたリンク族の少女……リーリアにはそれに近しいものを感じた」


 それも、ゲームの中の話だ。

 クエレヴレは、密かに恋心を抱いていた主人公に加え、各種族の仲間と一緒に旅をして神様を倒した。その仲間の中には、リンク族の少女もいた。


「リーリアに修行をつけたくなったのは、実を言うとかつての仲間にリーリアを重ねていたからというのもある。そして我の期待に応え、かつての仲間のようにリーリアは強くなった。無論、まだまだ及びはせんがな。しかし近くはなったはずじゃ。やはりリーリアには才能がある。更なる死地に放り込み、追い込んでやりたい」


 レヴって案外、Sなのかもしれない。人を死地に送り込んでやりたいとか楽しそうに言う人は、大体そうだと思う。


「それはもういい。リーリアは充分に強くなった」

「そうか?残念じゃ。……しかし、こうして見ると本当に似ている。リーリアを見ていると、アレッサの面影と、剣筋が重なる」


 アレッサとは、アリスエデンの主人公パーティの1人の名前だ。アレッサはリーリアちゃんと同じリンク族で、先ほどからレヴが話しているかつての仲間と同一人物だ。


「──アレッサ?」


 その名に、リーリアちゃんが反応した。

 言葉全体の意味は分かっていなくとも、アレッサという単語に反応した形だ。


「千年前、レヴと一緒に神様を倒した仲間の一人に、アレッサという人がいる。リーリアと同じ、リンク族の女の子。何か気になるの?」

「うん。私のお祖母ちゃんの名前がアレッサっていう名前だったのよ。偶然ね」

「……」

「……」


 私とレヴは、お互いの顔を見て目を見張った。

 これは、もしかしたらもしかするのではないか。2人で絶対に同じことを考えている。


「リーリアの苗字は、シルフィーネ?」

「そうよ。父方の姓がシルフィーネで、母方の姓は確かレイフレアだったかしら」

「ああ……そうだったのか……。お主は、アレッサの孫か」


 レヴが感慨深そうにリーリアを見つめて呟いた。

 アレッサ・レイフレアは、かつてレヴと共に神様を倒したリンク族の少女。リーリアちゃんのお祖母ちゃんだと言う事が、ここに確定した。

 私も驚いたよ。まさかリーリアちゃんがアレッサの孫だったなんて、凄い偶然だ。そして心が躍った。私はレヴに加え、アレッサとも関わっていたんだ。


「わ、私のお祖母ちゃん、そんな凄い人だったの?確かにかつては村一の実力者で、聖女として絶大な力を持っていたとは聞いていたけど……」

「ああ、本当に凄かった。しかしあ奴が子供を産んでいたとはな。あ奴は飛び切りの女好きでな。我もよくアレッサにはちょっかいを出されたものだ」

「お祖母ちゃん、そんなだったんだ……。お母さんが言ってたけど、お祖父ちゃんは女の子みたいにキレイな男だったみたいよ。二人とも凄く仲が良くて、人前でもしょっちゅうイチャイチャしてたって。嫌よね、人前でなんて恥ずかしい」

「……お主はまさに、アレッサの孫じゃ」


 ま、今の状況で人の事を言える立場ではない。そもそも私はレヴの前で、2度もリーリアちゃんとのキスも披露している。まさに人前で、だ。

 そう意識すると、なんか恥ずかしくなってきたじゃない。


「しかし、そうか。アレッサの孫か……」


 レヴがどこか遠い目をして浴場の天井を見上げた。

 千年前、かつての戦いを思い出しているのかもしれない。そして今また、アレッサの孫のリーリアちゃんを仲間に迎え入れて戦いを繰り広げようとしている。


 私も、気合が入ったよ。アレッサの孫のリーリアちゃんと、クエレヴレと一緒に、再び神様を倒す時が来た。私達のこの幸せな時間を守るためにも、神様は止めなければいけない。

 そして戦いが終わったら、皆でまたこんな時間を過ごせたらいいなと、そう思った。


読んでいただきありがとうございました!

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