戦いの前の休息
レヴの神様との戦いに関する作戦は、戦力を分散させる物だった。
まず、間違いなく2つの神仰国は動き出している。フォーラの話によれば、周辺の国に攻め込んでいてもおかしくない。その2つの神仰国に対しては、レヴ配下の魔王軍が対応してくれる。ギギルスとデサリットの兵士達もその場に送り出され、共に戦う。
魔王軍だけでは、神仰国周辺の国々に攻撃される可能性があるからね。その緩衝材として、人間の軍勢が必要なのだ。そして彼らに攻撃する意思がない事を示しながら、神様に集中して戦いを挑む。それでももし攻撃されるようなら、攻撃してきた者達にも攻撃をする。
レヴはそれを一番懸念していて、嫌で、攻撃を躊躇していた。でもそうも言っていられなくなってしまった。今回の神仰国の攻撃は、神仰国の全力を注いだものだから。デサリットへの攻撃など比ではない規模であり、放置したら神仰国が広がってしまうだけだ。なりふり構っている暇ではない。
ギギルスの軍には、ウルスさんが同行する。
そしてカトレアもデサリットの軍に同行すると言い張り、前線に出て行く事になりそうだ。私は不安で仕方がないよ。カトレアが、そんな危険な所に行くなんて……オマケに、フェイちゃんもついていくと言い張りだしてしまったので、更に不安だ。更にネルルちゃんまでもが付いて行くと言い出したんだから、不安に不安が重なってしまう。
私が傍にいるなら、まだいい。けど私にはレヴに頼まれた用事がある。
それは、アリスエデンに突如出現した壁を破る事。
レヴは、闇に包まれたアリスエデンの地で、ずっとそこに潜んでいると思われる神様を探していた。それこそ時間も忘れて長年にわたり、調査を繰り返して来た。でもどこにも神様はいなかった。アリエデンが広すぎるからというのもあるだろう。でもそれにはもっと理由があり、闇に包まれたアリスエデンは時の流れが歪で、時の流れが動くのと同時に地形もよく変化し、道が分からなくなって迷いやすいらしい。更には化け物も闊歩している。
時間の流れもよく分からなくなってしまうため、しばらく戻らない場合は、頃合いをみて外の仲間に呼びに来てもらう必要もあるらしい。
それが先日、突如として出現した結界のような壁によって、調査が邪魔された。それはフォーラが言っていた、世界を闇で包むと言う発言と関連しているのかもしれない。今までにない不気味な動きであり、その壁の向こうに神様がいる可能性が高い。レヴはそう言った。だから壁を超える必要があるのだ。
ま、アリスエデンに関しては聞いても良く分からない。実際に行ってみて、確かめたいと思う。
アリスエデンに乗り込むメンバーは、4人。私と、リーリアちゃんと、レヴと、バニシュさんだ。
テレスヤレスにはカトレアをお願いする事にした。レヴとしてはアリスエデンに乗り込むメンバーに入れたかったみたいだけど、私はどうしてもカトレアが心配なので、そこはお願いしてそちらに派遣する事にしたのだ。
テレスヤレスも、私のお願いを優先して聞くと言ってくれたので、そういう形となった。これでとりあえずは安心だ。
ところで、リーリアちゃんの修行結果が気になったので、私は彼女の同意を得てそのステータスを覗かせてもらった。
名前:リーリア・シルフィーネ 種族:リンク族
Lv :1680 状態:普通
HP:17232 MP:16390
『リーリア・シルフィーネ』習得スキル一覧
・言語理解:竜族
・竜の加護
・斬撃強化Lv4
・感覚強化Lv3
・気配遮断Lv4
・隠密行動Lv4
・病気耐性Lv3
・麻痺耐性Lv3
・威圧耐性Lv3
・毒耐性Lv2
・暗闇耐性Lv1
レベルが上がったのは勿論の事、スキルのレベルが増えたり、スキルそのものが増えている。
一番気になったのは、スキルの竜の加護だ。スキルの説明を見てみよう。
斬撃や魔法に、竜の力が宿って強化されるとある。
確かリンク族は、元々竜だったはず。それが姿形をかえて、今の人の姿となった。腕とかにある鱗は、竜だった頃の名残である。だから竜の加護なんていう名前のスキルを覚えられたのかもしれない。
でも神様は、そんなリンク族を作ったとか言ってたよね。元は竜だったのを、神様がいじって姿を変えさせたとかだろうか。
「凄く、強くなってる」
「そうでしょ?頑張ったんだから」
私が褒めると、リーリアちゃんが私の肩に頭を乗せて来た。そんなリーリアちゃんの頭の上に、私も頬を置かせてもらう。お互いにすりすり。
ちなみに今私とリーリアちゃんは、素っ裸である。広めの浴場で湯に浸かりながら、裸で手を握り合いながらくっついてイチャイチャしている。
戦う事は決定したけど、それまで時間を要する。この町に、デサリットの軍勢がやってくるのを待たなければいけないからね。
それでも、ギギルスは先行して出発する事になった。魔族の軍勢もすぐにこちらにやって来るので、それが到着し次第だ。それに合わせて、私もアリスエデンに向かって出発する。
でもそれは今ではない。戦いの時が来るまでのんびりと過ごす事になり、カトレアの提案で皆でお風呂に入る事になった。それで現在である。
「んもう。アリス様、リーリアさんとはしばらく一緒にいる事になるんですから、今は私に甘えてくださいよっ」
リーリアちゃんと反対側の肩には、カトレアが頭を乗せて甘えている。私の腕を掴み取り、自分の身体にこすりつけるようにする仕草がめっちゃエロい。
その感触を誤魔化すために、私はリーリアちゃんとイチャイチャしているのだ。だって、カトレアのあんな所やこんな所の感触を、腕で感じているんだよ。なんとも思わないはずがない。
「仕方ないじゃない。アリスは久しぶりに私に会えて、嬉しいの。私優先でしょ」
「いいえ、そんな事はありません。私優先です」
「私だから」
私を挟み、女の子2人が睨み合う。どちらも私の大切な女の子で、私はどちらにも加勢しがたい所。
「お風呂で喧嘩は、よくありません。お風呂は身体の穢れを払う、神聖な場所だとネルルさんが言っていました。なので仲良く入りましょう」
そう言って喧嘩を止めに入ったのは、テレスヤレスだ。彼女は全身泡だらけにし、身体を洗っている途中で湯船にはまだ浸かっていない。
テレスヤレスは、ほぼほぼ女の子だ。自分に性別はないと言っていたけど、リアクションとかが女の子なんだよね。皆も同じような印象を持っているみたいで、この女の子だらけのお風呂イベントに参加が許された。
「なんだって?」
テレスヤレスの今の言葉は、人語で発せられていた。ので、相変わらず竜語しか分からないリーリアちゃんに翻訳を求められた。
「お風呂では喧嘩せず、仲良くするようにだって」
「そんな事、言われなくても分かってるわよ。私はアリスと、仲良くしてるだけ。でしょ?」
リーリアちゃんに、耳元で色っぽくそう言われて私はゾクゾクしたよ。裸で密着してのそれは結構ヤバイ。
「ふふ……」
反対側では、カトレアが黙って私の腕に胸を押し付け、微笑んでいる。
私の周囲は、そんな感じ。そんな光景を、少し離れた所でお湯に浸かっているフェイちゃんが見つめている。
このお風呂は、ギギルスの王宮浴場だからね。同時に数十人は入れる広さがあり、フェイちゃんは遠慮がちに私達との距離をとってお湯に浸かっている。
「……」
彼女は顔を真っ赤にして、必死に目を逸らそうとはしているんだけど、気づけばこちらに視線を向けてしまうと言う行動を繰り返している。
自分で言うのもなんだけど、今の私を取り巻く状況は教育によろしくない。結構エッチめの光景だからね。
そんな彼女も勿論裸なんだけど、まだまだ発達途中の身体はキレイで、将来有望だと思う。
「み、皆さんっ。ここはあくまで、お風呂場ですからね。時と場所を選んでくださいね」
ネルルちゃんなんて、私達を直視できずにこちらに背を向けている。というか自分の裸が見られるのが恥ずかしいらしい。
ネルルちゃんの裸は、やっぱり胸が特徴的だね。デカイ。お尻も大きめで、太ももも大きめ。別に太っている訳ではない。普段はメイド服で隠れている彼女のムチムチボディを、私は愛している。
「み、皆さん、凄くキレイですね。それに、大きい……」
周囲を見渡し、自分の身体を見て落胆しているのは、ミズリちゃん。彼女もまた、フェイちゃんと同じように未発達の身体でお風呂に浸かっている訳だけど、落胆する必要なんてない。彼女もまだまだこれからだ。
「安心するが良い。お主もその内大きくなる」
ミズリちゃんにそうアドバイスしたのは、レヴだ。レヴはこの中で、一番の巨乳を湯面に浮かばせながら浸かっている。勿論、素っ裸で。やはり、一番見ごたえのあるセクシーな身体だ。フェイちゃんや、ネルルちゃん、ミズリちゃんの視線がそちらへ向き、皆がゴクリと唾む。
「ど、どうすれば、大きくなりますか?」
「む?そうじゃなぁ。揉めば大きくなるとよく聞くが……」
「……」
言われて、ミズリちゃんが自分の胸を揉む仕草を見せる。フェイちゃんも真似て揉んでいる。
「しかし我は揉んだ事がない。じゃから、揉まなくても大きくなる者は大きくなり、ならん者はならんっ」
じゃあそこで言葉を切らないで上げて。揉んだ2人が可愛そう。
でも残念だ。なんなら私が揉んであげようかと思ったのに。可愛い2人の胸なら、いつでも揉んであげる。胸を大きくすると言う目的の下でね。決してセクハラではない。
「ですが魔王様、本当に素晴らしいお身体ですよね。セクシーというか……男性が放っておかなそうな、魅力的なお身体です。男性に言い寄られたりはしないのですか?」
カトレアが、そんな質問をレヴに投げかけた。
確かにレヴは凄く魅力的だ。女の私から見ても、モテそう。そしてその身体をあれこれしたいという願望にかられる。
カトレアのそんな質問に対し、レヴは意味ありげに深く息を吐いて天井を見上げた。まるで、遠い過去を思い出しているかのような仕草だ。