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緊張感のない会議


 場所を変えても、私はリーリアちゃんとカトレアとくっつきっぱなしだ。イスに座れば両サイドに美少女2人が座り、私の腕にくっつてい来る。立てば腕を組んだり手を繋いだりで、言葉を交わして見つめ合えば微笑みを返してくれる。


 私が求めていた物が、今ここにある。リーリアちゃんとカトレアの共演は、強烈だ。強烈すぎる。


「私が留守の間、本当に上手くやったみたいね。私が言った通りだったでしょ?アリスも、あんたの事が好きだって」

「ええ、自信はありませんでしたが、思い切ってキスしてみて良かったです」

「それについては後日、しっかりと聞かせてもらうから」

「私とアリス様が、結ばれるまでのお話ですか?好きなだけ聞かせて差し上げますよ。なんなら、本にして残しておいてもいいくらいです」

「そこまではいいわ」


 興奮気味に言うカトレアに対し、リーリアちゃんは冷たい反応だった。

 それにしても、私とカトレアの話を聞いてリーリアちゃんはどうするつもりなんだろう。まさか……まさかとは思うけど、NTR好きが発覚……?

 と思ったけど、違うか。リーリアちゃんはカトレアに対して結構嫉妬もしてるし、反応的にそうではない。


「それにしても、アリス様の唇、瑞々しくて柔らかく、とっても美味しかったです。食べてみたい衝動にかられます」

「分かるわ。アリスの唇、私も食べてみたい」


 2人して、そんな怖い事を言ってくる。

 恋人の唇を食べたいとか、ホントちょっと怖いよ。そう思ったけど、私は2人の事を唇だけではなく全身食べたいと思う時がある。私の方が怖いかもしれない。


「……うるさいね、メスども。こちらは今、魔王様に神との交渉について報告している最中だぞ。少しくらい静かにできないのかね?」


 応接室のような、さほど広くない部屋の中には、レヴとバニシュさん。テレスヤレスやフェイちゃんと、ネルルちゃんもいる。それから、ウルスさんとミズリちゃんも。

 レヴは一際豪華なイスに深く座り、足を組んでちょっとセクシーなポーズを見せている。その足元で、バニシュさんが床に跪いたままレヴに神との交渉について報告している所だ。


 ちなみに町の方は、もう神の使いが去ったので元通り、賑やかになっている。


「リーリア様、相変わらずキレイで、何より元気そうで良かったです。アリス様も嬉しそう」

「そうですね。リーリア様がいなくなってしばらくの間を思い出します。誰彼構わず抱きしめて、リーリア様ではないと呟いて彷徨っていましたよね」

「はい。アレには少し、驚きました。アルメラは笑っていましたけど」


 フェイちゃんとネルルちゃんが、私の方を見てそんな会話をしている。私は耳がいいので、小さな声で話しているつもりなんだろうけど丸聞こえだよ。

 そして確かにあの時の自分は酷かったなと、思い出してしまった。でもそれだけ、リーリアちゃんがいなくなってしまった事がショックだったんだよ。


「私も、抱き締められました。アリスさんの抱擁は、心地が良いですよね。私、もっと抱きしめてもらいたいです」

「……」

「……」


 テレスヤレスもそう言って会話に参加したけど、2人はテレスヤレスに同意する事無く黙り込み、顔を少し赤くして俯いてしまった。

 なに、その反応。どういう意味?テレスヤレスも訳が分からないと言った様子で、首を傾げている。


「神との交渉が決裂。これから喧嘩を始めようって時だってのに、緊張感がまるでない。なんだこの状況は」

「ま、まぁまぁ、お父さん。こういう時間も、きっと大切なんだよ」


 ウルスさんは国王だというのに、ボロボロの木のイスに座っている。そして呆れ気味に呟いた。主に、私達に向かってね。


「──我が留守の間、皆各々がすべきことをきちんとこなしてくれていたようだな。我は良き部下と仲間に囲まれ、嬉しく思うぞ」


 バニシュさんからの報告を聞き終えたレヴが、皆に向かって言い放つ。

 同時に足を組みかえたんだけど、その時パンツが見えそうだったのを私は見逃さない。まぁ見えなかったけど。


「聞いての通り、神は交渉決裂をもって攻撃を仕掛けるはずじゃ。実際、こうしている間も神仰国から周囲に攻め入り、殺戮と支配を広めている可能性がある。我はそれを、止めたい。なので軍を送るつもりじゃ」

「しかし人間が魔族を受け入れるとは、とても……」

「見捨てれば神の支配を広めるだけ。見捨てず行動を起こせば、我らが敵とみなされる可能性がある。どちらも茨の道じゃが、我は神の支配を止める方を選ぶ事にした。ただちに軍を派遣し、神仰国の連中を殲滅する。もし神に支配されておらぬのに邪魔をする人間がいれば……それも排除するまで。なりふり構っている場合ではなくなってしまったからな」

「遅いかもしれませんが、正しい決断かと」

「お主は甘いと思っていたかもしれんが、我は魔族を人間にとっての畏怖の対象としたくはなかったのじゃ。それは分かってくれ」

「分かっています。魔王様が守りたかった物を、オレもようやく理解できました。オレは、貴女についてきて本当に良かった。今心からそう思っています」

「……なんかお主、少し変わったか?前より色々と丸く収まった気がするぞ」

「自覚はありませんが、もしそう感じるのならそれは愛の力です。オレは、愛を知ってしまったのです。紹介します。オレが愛し、将来を誓った我が愛しの人、ミズリです!ミズリ、こちらへ!魔王様にご挨拶を!」


 バニシュさんに促される形で、ミズリちゃんが若干引きながらレヴの下へとやってきた。そしてバニシュさんの隣でレヴに向かって跪く。


「う、ウルス・ヘッグヴェルの娘、ミズリです」

「魔王、レヴじゃ。……お主、人間だな。実際の年齢はいくつじゃ?見た目通りじゃよな?この娘に将来を誓ったのか?え、バニシュは何を言っておるんじゃ?」

「愛です」

「……」


 レヴが凄い目でバニシュさんを見ている。目で引いて、軽蔑し、蔑んでいるね。こいつマジかよって感じ。

 その気持ちはよく分かる。私もそうだったから。


「バニシュ君とは今の所将来を誓った訳ではありませんが、私が大人になるのを待っていただき、正式に返事をするつもりです。……あまりにもしつこかった上に、断れば死ぬと言われて仕方がなく、この形に落ち着きました」

「……迷惑をかけてすまぬ」


 レヴが頭を抱えてしまった。まさか、こんな事になるとはレヴも思ってもみなかったのだろう。


「迷惑だなんて、そんな。オレは何もしていません。ただ、好きだと愛を囁いているだけです」

「それが迷惑だと言っている。人間の王、ウルス。お主は良いのか。大切な娘に、こんなどこの馬の骨とも分からん魔族がまとわりついていて」

「……正直言えば、最初はこの男が何を言っているか分かりませんでした。けど娘を本気で好きだと言ってもらって、嬉しさもあります。年の差はあるようですが……でも娘が大人になるのを待ち、その時まで手を出さず、改めて返事をするという事で同意してもらえたので、父親としてはそれでいいかなと」

「……はぁ。予想外じゃ。神との本格的な戦いが始まろうとしているこの大事な時に、衝撃的すぎる。ワシはもう何も言わん。この件についてはお主らに任せるぞ」


 レヴはそう言ってから、私の方を見た。額の、唯一開いている目でね。


「我とリーリアは、アリスエデンの地に籠もっていたと言ったな。そこで過ごし、リーリアの修行ついでに神を探していた」


 バニシュさんが、地獄と言っていたアリスエデン。今は闇に包まれていて、化け物が闊歩していると言っていたっけ。


「しかし先日、アリスエデンに中に不気味な咆哮が響き渡った。もしや神がいるのではないかと思い、咆哮の聞こえてくる方へと進もうとしたのじゃが……しかしそこには壁があり、それ以上進むことが出来なかった。恐らく魔法で出来た壁なのじゃが、我の魔法でも歯がたたなくてな。直前にはバニシュから神側から使者が来ると言う報告を受けていたので、外で何かおこっているのではないかと思い一旦戻って来たと言う訳じゃ。本当はあと一年程は籠もるつもりだったのじゃがな」


 あと1年も……。そんなに長い間リーリアちゃんと会えないと考えると、本当に恐ろしい。その点では神様ナイスかもしれない。


「魔王様の魔法でも歯がたたないとは……」

「しかしアリスの触手でならどうだ?もしや、壁を食べて破壊できるのではないか?」

「……やってみないと、分からない。一度、封印系の魔法に閉じ込められて、出られなくなったことがあるから。その壁は食べる事が出来なかった」

「物は試しじゃ。やってみてほしい。それから──」

「イヤ」


 私はレヴの申し出を、キッパリと断った。すると、次の発言をしようとしていたレヴが固まる。場の空気も固まった。


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