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子守の魔族


 今回もアルちゃんがお留守番になってしまうので、私は彼女が寂しくならないようにするための布石を配置する事にした。

 とはいえ、今回は前回とは違う。同世代の友達も出来たし、ミルネちゃんもいる。だから彼女達がいない間だけど、彼女の相手を出来る存在を配置する必要がある。

 というのも、王様のアルちゃんに対する溺愛っぷりが最近凄いからだ。カトレアの話を聞けば、おかしな物を平気でプレゼントしそうだし、監視の目がいる。だけど立場の低いメイドさん達では王様に注意するのは難しいだろう。


「しかし私にも城の護衛という仕事があるのだぞ……グギャア」

「城の護衛なんて他に任せておけばいい。アルちゃんが一人でいる時に見かけたら、積極的に話しかけてあげるだけ。友達と遊んでいる時は、そっとしておいてあげて」

「しかしだな……子供の世話などした事がない」


 私がアルちゃんの相手に選んだのは、ピポプだ。鳥型の魔族の彼は、常識をわきまえている。それに形が人とは根本的に違うので、アルちゃんの興味を引けるはず。仲良くなれるに違いない。普通は逆だろうけど、アルちゃんには問題ない話だ。


「問題ない。話しかけて、その気があれば、アルちゃんが勝手にどうすればいいか教えてくれるから。あと、王様がアルちゃんに変な事をしようとしたら止めてあげて。具体的に言うと、通常ならあり得ない物をプレゼントしようとしたら、殴ってでも止めて」

「に、人間の王を殴れと……?それは一体、どのようなプレゼントなのだ?」

「見れば分かる事。ピポプが見て普通の物と判断したら、まぁいい」


 ピポプが若干引いている。でもそんなプレゼントはきっと稀だろう。念のために言っておいただけだ。

 元気で可愛いアルちゃんの相手を出来るのだから、ピポプにとっても悪い話ではないはず。


「アリスお姉ちゃん!」


 とそこへ、噂をすればアルちゃんがやってきた。

 廊下で立ち話をしていた私とピポプに駆け寄ってくると、私に向かってダイブしてハグしてくる。それを私も受け止めて、抱き止める。


「また、遠くへ行っちゃうの?」

「……うん。お留守番になっちゃうけど、平気?」

「お姉ちゃんも、アリスお姉ちゃんも、カトレアお姉ちゃんも、テレスヤレスちゃんもいなくなるのは寂しい。けど、大丈夫っ。お留守番、ちゃんとする!」


 私とのハグをやめると、アルちゃんは胸の前で握り拳を作って強気な姿勢を見せてくれた。

 私は思わず、この子の頭を撫でてしまう。この世界に来てから、誰かの頭を撫でるのがクセになっている気がする。でも頭を撫でたいくらい可愛い子が悪い。


 思えば、この世界に来てから本当に可愛い子ばかりに囲まれて、私は幸せ者だな。


「グギャア……」

「……」


 私の隣で鳴いた鳥の魔族に、アルちゃんの視線が移った。


「留守の間は、魔族のピポプも遊んでくれる。寂しい時は遠慮なく話しかけるといい」

「鳥さん……空を飛べるの?」

「……勿論、飛べる」

「凄い!」


 その返答を聞き、アルちゃんが目を輝かせてピポプを見る。

 フェイちゃんが空の旅をテンション上げて楽しんでいたけど、もしかしてアルちゃんも高い所が好きなのだろうか。姉妹揃って物好きだね。

 高い所って、一歩間違ったら真っ逆さまだよ。地面に当たると、痛いんだよ。あまり良い事がない。まぁ気持ち良いのは認めるけど。


「アルメラ。アリス様」


 そこに、フェイちゃんもやってきた。

 その姿を見たアルちゃんが、私にしたのと同じようにフェイちゃんに向かって駆け寄ってハグをする。


「……お話、聞かせてもらいました。私はこの子の姉、フェイメラと申します。私が留守の間、どうか妹のアルメラの事をよろしくお願いします」


 ピポプに向かって礼儀正しく頭を下げるフェイちゃん。妹の事を他の人に任せる礼儀正しい姿を見て、やはり私とは違うと思ったよ。


「グギャア……出来る限り、面倒は見る」

「時にピポプさんは空が飛べると聞きました。人を乗せて飛ぶことも可能ですか?」


 フェイちゃんが、目を輝かせながらピポプに対してそんな質問をした。アルちゃんも、再び目を輝かせてピポプを見ている。


「だ、誰かを乗せて空を飛んだ事などない。というか乗せんからな」

「えー」


 フェイちゃんとアルちゃんが声を合わせ、本当に落胆した様子を見せる。

 どんだけ空を飛びたいの。まぁアルちゃんがピポプに対して興味津々で良かったよ。この様子なら留守も任せられる。

 というかアルちゃんって苦手な人とかいるのかな。初めて私と会った時は私に対して恐怖心を抱いていたようだけど、それを乗り越えてからは誰とでもすぐに仲良くなれるようになった気がする。テレスヤレスとはフェイちゃんの事でひと悶着合ったけど、テレスヤレスの事を最初から恐れる様子もなかったし。

 リシルシアさんにも、見習ってほしいものだ。私に対してはようやくなれてきたけど、それでも距離を感じる。テレスヤレスに対しても恐怖している。それはまぁ仕方ない。魔族に対しても当然恐怖している。どんだけビビリなんだ。


「周りの人の言う事を聞いて、おとなしくしてるんだよ」

「はい!お姉ちゃんも、お仕事頑張って!」

「うん。頑張るね」


 はぁー。幼いながらも姉を応援する妹と、それに応えて笑顔を見せる姉が可愛い。可愛すぎる。

 私は2人の頭を撫でながら、心が癒されるのを感じる。


「アリス様は、ギギルスに行った事がありましたよね。何日くらいでつくのでしょうか」

「確か、五日くらい」

「カラカスよりは、だいぶ近いですね」

「近い」

「またアリス様やカトレア様と一緒に旅が出来るのは、光栄です。どうぞ、よろしくお願いします」

「よろしく」


 私に向かって頭を下げて来るフェイちゃんだけど、本当に私の方こそ光栄なんだよ。

 だって、フェイちゃんやカトレアとネルルちゃんとの旅は、こういうのもなんだけど本当に楽しかったから。その旅にテレスヤレスも加わって、もっと楽しくなると思う。

 出来ればアルちゃんもここに加わって欲しいけど、危険な目に合うかもしれない場所に、さすがにアルちゃんまで連れて行くわけにはいかない。

 その埋め合わせといったらなんだけど、用事がすんだらアルちゃんも含めて皆でどこかへ旅行に出かけるのもいいかもしれない。題して、女の子だらけの異世界触手道中・ポロリもあるよ。

 その時が楽しみになってきた。


 とりあえずは、話し合いとやらに行かないとね。楽しみが出来たし、今の私はやる気満々だよ。もし目の前に殉教者や神の使いが現れたら、本当に一瞬で食べてやる。そんな勢いである。




 そんなノリと勢いとテンションのままでギギルスに乗り込んだら、本当に神の使いが私たちの前に姿を現わした。


「──初めまして、触手の魔物、アリス。我が名は、フォーラ。偉大なる神に仕える肉体であり、神の意思を持つ者である」


 若いのに白髪の男の人。柔らかな笑顔と自信満々な目が特徴的で、イケメンと呼べる部類に入ると思う。

 彼は白の神父服に身を包んでおり、その両手の甲には神の印が刻まれている。


 名前:フォーラ 種族:神の使い

 Lv :977    状態:精神崩壊

HP:8332 MP:6810


 自分でも言っているけど、ステータスを見ての通り間違いなく神の使いだ。

 話し合いがあると言われてギギルスにやってきたら、神サイドの方からも関係者がやってきて、こうして挨拶をして来たと言う訳だ。

 まぁ話が飛び過ぎなので、少し巻き戻そう。話は私達がギギルスに辿り着いた日から始まる。


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