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護衛の魔族


 数日後、カトレアの言っていた交易隊が町に到着し、同時に魔族がこの町に入って来た。

 町の、お城へと続く大通りは魔族を一目見ようとする人々で溢れかえり、賑わいを見せている。魔族が来ると言う事はあらかじめ伝えられていたので、人々に混乱はない。

 魔族を見る目は人それぞれだけどね。でも大半は興味本位で見つめているだけの人々で埋め尽くされていて、割と歓迎されている方だとは思う。無邪気な子供は手を振ったりもしている。嫌悪感を露にしている人もいるようだけど、僅かだ。

 どうやら人々は、魔族よりも人を食べる魔物の方が恐ろしいらしい。つまり、私の方が怖いと。別にいいけどね。


「久しいな、アリス!元気にしていたか!」


 それは、巨大な馬に跨った巨人の魔族だった。低く唸るような声と、息を吐く馬は大迫力である。


「クァルダウラ」

「がははは!」


 私が名を呼ぶと、彼は何故か上機嫌に笑った。笑うと、彼の口から炎が出て出迎えたお城の兵士達が驚いている。


 クァルダウラとは過去に戦った事がある。その戦いは私の勝利となり、彼は敗北を認めて私の要求を呑んでくれた。

 きっちりと約束を守ってくれるし、声がデカくて迫力があってうるさいけど、気のいいおじさんって感じだ。


 馬からクァルダウラが降りると、ズシリと地面がなった。

 そして私に駆け寄って来て、私を抱き締めようとしてくるので触手でそれを制した。

 彼とは体格差がありすぎて、絞め殺されそうな勢いだからね。まぁ実際は死なないんだろうけど。

 でも女の子に抱きしめられるのはともかく、異性に抱きしめられるのはちょっとね……。


「クァルダウラが、この町の護衛?」

「うむ!ピポプとウーゴもいるぞ!」


 クァルダウラが指さした方向には、牛頭の魔族と鳥の魔族がいる。この2人はリーリアちゃんが戦い、リーリアちゃんに敗北した魔族だ。

 なんだか私と接点があるみたいな感じで言われたけど、特にはない。だから紹介されても困る。向こうも困ってるよ。


「それで、この国の王はどれだ?」

「……そこの人」

「っ!」


 クァルダルラに王様を尋ねられたので、私と同じくお城の外まで出迎えに来ていていた王様を指さして教えてあげた。

 指を指されて王様がビビってる。けど王様らしく、そこは堂々としていてもらいたいものだ。私と初めて出会った時みたいに、虚勢を張っておけばいい。

 別に私は、あの時の王様の発言を恨んでいる訳ではないよ。邪悪な魔物とか言われたのとか、ホントどうでもいい。ホントだよ。


「ほう。これがこの国の王か。我が名はクァルダウラ。アリスに代わってこの町の護衛を担当する。しばらく厄介になるが、よろしく頼むぞ!」


 王様へそう挨拶をするクァルダウラだけど、目つきが怖すぎて王様が委縮してしまっている。あと、王様への挨拶だというのに割と偉そう。腕を組んで胸をそらしながら王様に挨拶する人って、初めて見たよ。

 そして例によって王様には魔族語が通じない。なので彼の隣にいるリシルシアさんがクァルダウラの言葉をビクビクとしながら翻訳し、伝えている。

 ちなみに今は殺のシャツを着ていない。ちゃんとした礼服姿で、翻訳の仕事をしている。当然か。


「わ、我が名はゲイルグ・ベルハート・レ・デサリット。この町の護衛のためにやって来てくれたこと、誠に感謝するぞクァルダウラ殿。……リシルシア、この人怒っているのか?ワシ王様なのに、凄く睨まれているんだが」

「た、たぶん怒ってはいません。ただちょっと目つきが悪いだけだと思います……。大丈夫。いざとなったら逃げましょう。というか私逃げてもいいですか」

「ダメだ」

「くっ……」


 王様とリシルシアさんが、クァルダウラを怖がってしまっている。そりゃあ、こんな目つきの悪い巨人に睨まれたら怖いよね。私より怖いよね。


「グギャア。恐れながらクァルダウラ様。相手は人間の王です。そのように頭を高くし、胸を張ったらいけません」


 クァルダウラに対してそう助言したのは、鳥頭の魔族だ。手足が長いのが特徴で、顔は鳥で身体は人に近いんだけど、手には羽根がついており、それで空も飛ぶことが出来る。名前はピポプ。


「む。そうだな、そうだったな。しかし人間の王より頭を低くするのは難しい!だから無理だ!がははは!」

「……王への対応は、私が担当いたしましょう。グギャア」

「頼んだぞ、ピポプ!オレはとりあえず、この町を守る兵士達と交流がしたい!誰か案内してくれ!」

「くれぐれも、失礼のないようにしてくださいよ!ウーゴ、付いていけ!」


 ズンズンと歩いてその場を去って行こうとするクァルダウラに、慌てて牛頭の魔族がついて行った。


「我が軍団長が、失礼いたしました。私の名は、ピポプ。クァルダウラ様と同じくこの町の護衛に配置された魔族です。グギャア」


 ピポプは人語が話せるらしく、人語で王様にそう自己紹介をしてみせた。

 羽の手を胸にあて、ペコリと頭を下げるその姿はとても礼儀正しい。クァルダウラとは違って腰が低く、人と比べて異形ではあるもののこちらの方が幾分か話しやすいだろう。


「う、うむ。長旅ご苦労であった。気持ちばかりだが、もてなしの食事を用意してある。今日はゆっくりと休んでほしい」

「お気遣い感謝します」


 とりあえず、ピポプ相手なら王様も大丈夫そうだ。リシルシアさんも……こちらはちょっと固まっているけど、たぶん大丈夫。


 このお城に滞在する事になったのは、総勢500名程の魔族達。その戦力はクァルダウラを筆頭にして、かなり高いと言えるだろう。これなら、安心して留守を任せられそうだ。


 さて、魔族達が到着して翌日には町を出発する事になったんだけど、今回も前回と同じようなメンバーでギギルスを目指す事となった。

 私と、カトレアと、ネルルちゃんとフェイちゃんは同じ。これに加えてテレスヤレスも同伴し、ギギルスへと向かう。


 スルーしかけていたけど、話し合いって一体なんの話だろう。神様に動きがあったって言っていたけど、それってかなり重要な事だよね。

 この世界には電話とかがないので、情報の交換が不便だ。でもそんな不便も、終わりを告げようとしている。私は転移魔法が使えるようになったからね。亜空間操作でしまいこんである水晶をギギルスに設置すれば、いつでもデサリットとギギルスを行き来する事が出来る。これは連絡手段としても使えるので、超便利。早く水晶をそこら中に配置したい。


 リーリアちゃんも、ギギルスに来ているなら水晶を持たせて滞在先に設置させ、万一また別れる事になってもいつでも会えるようになる。それで私から逃げる事は不可能になる。


 ふふ……楽しみだ。


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