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たぶん進化


 私は女王はもちろん、周囲に転がっていたアリの死体もくまなく食べて自分の養分とした。食べておけば食べておくだけ、私の自動回復の養分となってくれるからね。

 こんな恐ろしい洞窟の中を彷徨っている身として、備えておいて損はない。

 さて、肝心のスキルの方だけど、女王のスキルは残念ながら覚える事はできなかった。どうやら『種の女王』と『共鳴』は、種族特有のスキルらしい。スキルイーターの説明に、種族特有のスキルは覚えられないと書いてあったので、それに当たるんだと思う。

 よく考えれば同種族の生成とか気持ちが悪い。私の場合、ナマコが生まれるだけだからね。だから覚えなくても別に良かったよ。


 代わりに、魔法を一つ覚える事が出来た。『風刃』という魔法で、発動させると女王が振り回していた鎌みたいに相手を切り裂く事が出来る。でもこれは鎌じゃなくて、風による斬撃だ。


 そして肝心のレベルの方だけど、こんな感じ。


 名前:──  種族 :──

 Lv :1007  状態:普通

 HP:19391  MP:2010


 遥かに高レベルの女王を倒した上に、配下のアリたちを殲滅した事により跳ね上がった。MPはまだ回復しきっていなくて少ないけど、回復したら増えるはず。

 この世界、レベルが上がった事によるHPとMPの回復サービスがないんだね。HPは自動回復ですぐに回復するんだけど、MPに関しては自然治癒しかないのでちょっと不便。レベルが上がるたびにMPが回復しないで、元のレベルのMPが少し回復した状態になるだけだから。

 下の方にMPのゲージが一応あるんだけど、マックスまで十分の一くらい?ただしい数字は分からないけど、大体そんなもん。

 MPの回復速度の遅さはちょっと困るなぁ。先ほども調子にのってうちまくって、尽きちゃったからね。何か自動回復と同じような方法ですぐに回復させる方法はないものか。


 ま、この洞窟は広そうだし、そのうちそんな感じのスキルを持っているモンスターが出て来るでしょ。出てきたら、いただきます。


 とりあえずここにはもう用はないし、おいとましますかね。


 と、歩き出そうとしたその時だった。自分の身体に変化がおきた。身体が光り輝き、内側から熱くなる。なんだこれ。もしかして先ほどかけられた毒が、今更私の身体を破壊しようとしている!?

 慌てだしてもどうにもならない。私は光に包まれ、そして直後に光が収まった。

 一瞬の出来事だった。気づくと私は、元の洞窟にいる。身体の熱いのも収まり、なんともない。なんだよ、驚かせやがって。私は悪態をつきながらため息を吐き、再び歩き出そうとして気づいた。

 私の身体、形が変わってる。

 4つの手足が四方にのび、その付け根には球状の本体となる部分があってパッチリおめめが1つだけついている。地面側には口がついており、前より大きくなったので獲物を食べやすそう。

 なんという事でしょう。あのただの棒状の延長線だった私が、ヒトデ風のモンスターに変わってしまいました。身体も少し大きくなった気がする。


「……」


 なんだこれ。全然嬉しくない。

 たぶん進化、だよねコレ。ステータスには特に変化は見られず、見た目が変わっただけである。ヒトデにね。ナマコから、ヒトデ。

 試しに歩いてみたけど、4つの手足を上手く使えば一応四足歩行でナマコよりは素早く動ける。でもフィールンを用いた方が百倍速い。

 今までと変わらんわ。ま、とりあえず行こうか。


 フィールン。


 私は糸を天井に伸ばし、糸に吊られてその場を去る。

 去ろうとしたんだけど、天井に吊られて上から見た時、洞窟の奥の方に何かがあるのを感じた。女王が出て来た方の洞窟だね。周囲には無数に穴があいてるけど、一際大きい穴の方だ。

 気になるので、糸を伸ばしてその洞窟の中に突入してみる。洞窟の中には様々な生き物の骨が散乱していて、ゴミ貯めと化していた。そんなゴミの中に、異彩を放つ木製の箱がある。急に人工物が現れたよ。ボスを倒したらその奥にある宝箱をゲットとか、まさにゲーム展開である。まぁまだお宝かどうかわかんないけどね。でもわくわくしてきた。私は箱にとりつくと、手足を使ってすぐさま箱を開きにかかる。

 ナマコから進化したおかげで、この辺はやりやすい。ストレスなく箱を開く事ができ、私は中を覗き込んだ。


 ふむ。中に入っていたのは、剣だ。剣というより、刀?キレイな赤い鞘に入っていて、汚れは少ない。これがゲームなら、新しい武器を手に入れてテンションあがる場面なんだろうなぁ。でも残念ながら私はナマコ──もといヒトデで、武器を操れる身体ではない。

 でも一応亜空間操作でしまっておこうか。こういう時のためにあるんだよね、この力。私は空間に穴をあけると、刀を穴の中に突っ込んだ。

 戦利品みたいなものだ。例え使わなくても、いただけるならいただいておく。


 それからまたしばらく洞窟を彷徨い歩き、遭遇した数々のモンスターを倒した。

 休憩しながらね。たまに眠ったりもした。時間感覚がないから、眠くなったら眠って疲れたら休む。そんな感じで進んでいる。

 でも残念ながら倒した中にはMP回復系のスキルを覚えてるモンスターはいなくて、新しいスキルも全体系を覚えているせいか、特に覚ええるスキルがなくてもんもんとする。最初は凄い勢いでスキルと魔法が増えて行ったんだけどなぁ。その勢いが止まってしょぼく感じてしまう。


 でも覚えた魔法を使用すると、テンション爆上がりである。

 やっぱり魔法にはロマンがある。アリ達を殲滅したおかげでだいぶ魔法も増えたし、レベルもあがったので敵にも通用するようになってきた。


 中でも便利なのが、『テラガルド』。

 これを使用すると傍の岩を利用して岩の巨人を作る事が出来る。私は現在、その岩の巨人に乗って移動中である。

 でもこれ岩の巨人を保っている間、MPを消費するんだよね。それも結構な勢いで。今はMPがけっこう回復してるからいいんだけど、MPがキツイ時には出せない。


 まぁでも、ぶっちゃけ私めっちゃ強くなったし。MPなんてなくてもなんでも倒せてしまう。そもそも私の主力武器は、口だからね。この口で食べるだけでどれだけレベルが高くて硬い相手も美味しくいただけちゃうんだから、笑いが止まりませんわ。

 でもさすがに経験値が不味くなってきたようで、レベルも上がり辛い。コレがレベル上げ目的の散歩なら、そろそろ狩場を変えなければいけない時期である。

 ていうかこの洞窟、どこまで続いてるの。進んでも進んでも終わりが見えて来ず、私もうこの光景に飽きたよ。外に出たい。

 出れないならせめて、強敵をくれ。スキルもいっぱいくれ。そして私を強くしてくれ。頼むよ神様ー。


「……!」


 そんな事を岩の巨人君の頭の上で願っていたら、何やら得体のしれない気配を感じて背筋が凍り付いた。

 いや、知っているんだ。だからこそ、怖くて背筋が凍る。私は聴覚強化の力を使って耳を澄まし、遠くから聞こえて来たその声で気配の正体を瞬時に理解。

 フィールンで岩から離れると、天井に張り付いて様子を窺う事にした。


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