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七月八日(土) 午後一時 図書館

「おかえりー…って、なにかあった?」


テラスへと帰ってきたぼくの顔を見て花梨が首をかしげる。どうして、なにかあったかなんてわかったんだ?


「機嫌がよさそうだし、顔がにやけてんだよ。そんなの、だれが見てもいいことがあったんだなって思うぜ」


駿英がそう言うと隣で花梨もうんうんと頷く。


「お前、嘘つくの下手だからな。バレバレだぜ。人狼ゲームなんてやったらすぐにばれるだろうな」


ニヤニヤとした表情で駿英がいう。嘘をつくのは確かに苦手だけど、表情にもでてたなんて……あれ?


「…人狼ゲームってなんだっけ」


「やったことなかったか? 頭を使うしつばきはハマると思うけど…今度一緒にやろうぜ」


「じゃあ、期末テスト終わったらな」


「おう、メンバー集めは任せとけ!」


「ちょっと、その話はいまじゃなくてもできるでしょ。それでつばき君。わたしたちが戻ったあとに公園で何があったの?」


脇道にそれた会話を続けるぼくたちの間に割って入ってきた花梨が、ぼくの正面に立つ。花梨がいなかったらこのまま雑談が続いていただろう。感謝しとこう。


「それが――。」


花梨と駿英に、公園で山本先輩に会ったこと、先輩からゲームを提案されたこと、裏山について調べろと言っていたこと、そして、とある少女が書いたということ、ぼくは全部話した。二人は驚いたり、考え込むようにしながら話を聞いていた。


「きっと山本先輩だよね……」


「あの先輩、最近カノジョが出来たらしいんだよ。ここ最近は毎日、放課後女子と二人で帰っているってクラスの小田(おだ)から聞いたぜ。なんか関係あるかもな」


「そんな投げやりな…。でも先輩は何か知っているような雰囲気だったんだよね」


「うん。あの怪文書に対してぼくにヒントになるようなことを言ってきたんだ」


「それがウソってことも…」


「それは考えすぎよ。だって、先輩には嘘をつく理由がないんだよ。それにつばき君の言ったとおりなら先輩はおそらく謎の答えを知ってるだろうし、ここは素直に従ってみたらいいんじゃないかな?」


「花梨の言うことに賛成だよ。もし先輩が正しいことを言っていたら、提示してきた期限まで時間がない。それぞれ探索を開始しよう。ぼくは、どうしようかな」


「じゃあおれ、裏山の地図をとってくるぜ。さっき図書館の地図を二人で見たから場所は知ってる。たしか一階の北側だったよな。ちょっとトイレにも行くから若干遅れるかもしれないけど。……それにしても裏山かぁ。でもなんであそこなんだ? 波とか関係してるようには思えねーし。ま、いっか。行ってくるぜー」


そういうと、駿英は立ち上がり一階へと続く階段を下りて行った。


「じゃあわたしは、裏山を含めたこの地域のことについて調べてこようかな。椿くんはひとまず手に持ってるものを片付けてからにしようね」


花梨からの一言で、ぼくはここに帰ってきてから荷物を持ったままずっと話していたことに気づいた。荷物をカバンの中にしまっていると花梨の声が横から聞こえてきた。


「ねえ、一つ質問してもいいかな?」


「うん、どうしたの?」


「どうしてつばき君は図書室で裏山について調べていたの?」


「あー、実は――」


自分が裏山に行ったことがないことと、夏休みに冒険しようとしていることを話した。


「あそこには、近寄るなって言われてたんだけど何かあるのかな?」


「えー……なにかあったかな。わたしは小さいころからよく行ってたけど、特に何も思いつかないよ」


「そっか……。ありがとう。それについても、これから調べるさ」


「うん! ……じゃあ、さ。期末テストが終わった週末の夕方、二人で行ってみない?」


突然、花梨からそんなことを言われてたじろぐ。


「え、二人…ぼくと花梨でってこと?」


「だめ…かな?」


その声はいつもより小さく、上擦っていた。ここで、断ったらきっと、なにか取り返しがつかなくなる、そんな気がした。


「わかった行こう。なにがあるか、確かめたいんだ」


「ほんと!? じゃあ待ち合わせ場所とかはまた後で伝えるね。わたし、調べに行ってくる!」


そう言って彼女は立ち上がり、駿英が下りた階段とは逆の階段から降りていった。心なしかいつもよりテンションが高いように見える。花梨は裏山になにがあるのか知ってるのかな? 

とりあえず、そのことは一回置いといて、いまは怪文を解読しよう。

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