さくらの道
春は憂鬱。
色とりどりの春の服を着た人々も、皆が灰色に見える。
私の足取りは今日も重い。
四月は新しい出会い、新しい場所との出会い、新しい人との出会い。
私は新しいことが苦手。新しいは平穏を崩す。新しいは日常を壊す。
四月になるたび、私は生まれ変わる。
すべてがリセットされ、新しいに慣れるために、一から自分を作り直す。
どうして皆は、新しいに蹂躙されてしまわないの?
どうしていつもと違うのに、いつもと同じようにふるまえるの?
ふと顔を上げる。
画面いっぱいの桜の花びらがさわさわ揺れる。
空の画角を覆いつくすように、さわさわと揺れる。
何百年もの昔から今も変わらず。
私はさくらになりたい。
変わらずさわさわ揺れるさくらになりたい。
さくらの道を通いなれた道をゆっくりと歩いていく。