私と彼とセックス
これは私の夢で見たお話です。
小説を書くのも初めてでつたない部分もありますが暖かい目で見ていただけたら幸いです。
設定等何か通じるものがある方は完遂までお付き合いくださいませ。
「…セックスしたい」
彼が私の髪に触れる。真っ黒な瞳が私を真っ直ぐに捉え段々と近づいて
唇と唇を強く触れさせる。
ゴムとゴムが擦れる音がする。お互いの唇は乾いていたけれど、それでも噛み付くように強くぶつかり合う。
これは何度目のキスだろうか。なんの意味があってする事なのだろうか。
きっと彼も分かっていない。
それでも今からする行為にとって大事な儀式なのだと思う。
ずっと埃っぽい室内に二人きりだった。
湿度も温度もほんの数ヶ月前までは管理されていたこの部屋は今はもう見る影もなく暑くて湿っぽい。
それでも汗をかかない私達には関係の無いことだった。
彼の手が私の髪から頬へ。そして首に、胸に降りてくる。
ゆっくりと味わうようにふにふにと胸を揉み、
そして座っていたソファに身体を沈められた。
金糸の様な私の長い髪が埃の積もる床に落ちる。
「髪が乱れるわ。もっと気を使って」
「あとで櫛を入れてあげる。だから今は」
こっちに集中してと悪びれもしない彼が私のドレスの裾を膝で踏んだ。
カチャリ、と小さな部屋に金属音が響く。
彼の学生服のズボンのベルトを外す音だった。
「わたしもドレス脱ぎたいわ。しわが」
「君のは脱ぐのも着るのもめんどくさいじゃないか。それにもうしわくちゃだよ」
シワになってしまうと文句を言ってやろうと思ったけれどそれもそうだ。もう幾月とドレスを変えていないのだからしわとほこりだらけになっている。
「あなたの服はいいわね。楽そうで」
むっと頬を膨らましてそう呟くと君はドレスが似合うよと困ったように笑われた。
「脱がないなら私の下着脱がせて」
「はいはい」
ドレスの裾から冷たい彼の手が滑り込んであたしの足を撫でる。
ゾクゾクとする感覚に「んっ」と息を漏らせばチラッと黒い瞳がこちらを向いた。
「足、感じた?」
「バカ」
意地の悪い顔をする彼の一言に恥ずかしくなり蹴りのひとつでもお見舞いしてやろうと片足を浮かせる。
それを待ってましたとばかりに片手で受け止めると脛から太もも、腰の付け根の細い紐を引っ張った。
下腹部にほんの少しの開放感と白い薄布をひらひらと指先で振り回す彼が目に入り下着を返せと手を差し出す。
彼もそれに応えて渡してくれた。
「私︎︎の“そこ”どうなってる?」
「“いつもどおり“だね」
そっか。と目に手を置く。持っていた下着の紐がこそばゆいけど気にしない。
下着を顔の上に乗せるなんてはしたないよ、と言われたけれど聞こえないふりをする。
ただの布だもの。汚くもないのだから。
「濡れたいな」
ぽそっと呟く。困った顔をしているであろう彼の表情は見なくてもわかる。
「きっと明日は濡れてるよ。それでまた一緒にセックスしよう」
そんな気休めを言う彼に「そうね」と一言。
濡れるわけがないのだ。だって私達は涙も汗も唾液も出ない。
血も通ってないし爪も生えない。
肌は衰えないし髪も伸びない。
そんなことはお互いわかっているけれどそれでも希望を持ち続けているのだ。
髪を梳かそうかと彼が私の手からまた下着を取ると慣れた手つきで私に履かせた。
また下半身に窮屈な感覚を感じるとそのままソファの上で丸まる。
「ご主人様がいたらまたあの潤滑油を塗っていただけるかもしれないのに」
「…今日もご主人様来てくれなかったね」
ご主人様と呼んだその人は私達を我が子のように可愛がってくれたおばあさまの事だ。
身寄りのない私達を買い取り部屋を与え毎日綺麗なお洋服を着せてくれた方。
これは私が夢で見た話です。
慣れないところもありますがよろしくお願いします。
そんなご主人様が数ヶ月前からこの部屋を訪れなくなったのだ。
たまに数日訪れないことはあったがそれでも決まって溢れんばかりの綺麗な包み紙に包まれたお土産を持って帰ってくるから今回も旅行なのだと思っていたのだが、いくらなんでも長すぎる。
「私達のこと嫌いになっちゃったのかな」
ぐっと目頭に力が入る。きっと人間ならここで涙のひとつでも流すのだろう。でも私は泣けなかった。
「きっと長い長い旅行だよ。今に部屋に入りきらないお土産を持って帰ってくるさ」
それから数日後、ご主人様が死んだことを知るのはすぐだった。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
続きは不定期ですが更新するつもりです。
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