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小品

宇宙

作者: 星野☆明美

太陽系の惑星は、太陽に近い方から、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と並んでいます。2006年までは、冥王星も惑星に含まれていたけれど、準惑星に区分されました。まだまだ調べれば他の星も見つかるかもしれないです。

私たちは、住み慣れた、母なる地球を離れて宇宙開発を行っていくことに決めました。それは、国土の領土を宇宙に広げるだけではなく、地球温暖化や大気汚染、資源枯渇、人口問題、自然災害からの脱却を意味しています。どちらにしても20万年ごとに地球の極が入れ替わり、運が悪ければそのまま地球に住むことができなくなることがわかっています。私たちはその先手を打つのです。

まずは地球に1番近い衛星、月。次に近い惑星、火星、……と、順に開拓していこう。そういうふうに決まりました。まだ他の星は未知の部分が多くて、探査機を飛ばして調査している最中です。

ミッションにあたる宇宙飛行士は、以前は体力も頭脳も優れたスペシャリストしか選ばれていなかったけれど、科学が発達していくにつれ、普通の健康な男女が参加できるようになりました。

私はアンナ・ジョンソン。かく言う私も選抜を無事クリアしました。

「ぜえぜえはあはあ、遅れちゃった!」

「どうしたんだい?君らしくないな、遅刻だぜ」

デビッド・ジョーンズが言いました。金髪碧眼の男性です。

「あのね、私今日、ここに来る途中でUFO見ちゃった!!」

私は興奮して言った。

「どうせ物好きな発明家の作った飛行物体だろう」

「それか、隕石落下でも見間違えたんじゃないのか?」

茶髪の青年ジェイムズ・スミスが言いました。

「本当にUFO だったのよ!」

男たちは肩をすくめた。

信じてもらえなくて私はむくれたけれど、すぐに思い直してトレーニングの仲間に入った。

体力をつけるためにトレーニングは欠かせない。宇宙では重力が極端に小さくて、人体への影響が懸念されるのだ。もっとも、宇宙船打ち上げの時にかかるGは半端じゃないけれど。

私たち3人は今度打ち上げる宇宙船に乗り組むことが決まっていた。

私たちは毎日欠かさず訓練を積んでいた。

トレーニングしながらついでに思考力もある程度鍛えておく。運動したら何も考えられませんでしたじゃ通用しない。計算問題やら、知識のテスト。

「毎回思うけど、これなんとかなんないかな!?」

「宇宙で死にたくなかったらやっといた方がいいんじゃないの?」

「はいはい」

「アンナ、トレーニングが終わったら、管制塔とか操縦席とか見てこないか?」

「いいね!」

何度見に行っても飽きることがない。

管制塔では地上で活躍する仲間たちが今日もひっきりなしに働いている。彼らはじきに宇宙へ旅立つ私たちのサポートに徹するのだ。心強い仲間たちだ。

まだ宇宙船内には入れないので、訓練で使用する操縦席を見に行く。レバーやボタン。その一つ一つに意味があって、私たちの頭にたたきこんである。それをみんなで再確認する。

宇宙船とその任務の解説を展示している場所もある。このあたりには、外部から見学に来る人たちが出入りできるようになっている。

ああ!憧れの宇宙。胸が高鳴る。子どもの頃からの夢だった宇宙飛行士になるのだ!


そんなこんなしているうちに時は流れて、

やがて打ち上げの日が来た。

私たち3人は、宇宙服に身を包み、宇宙船に乗り込む。

宇宙船からリフトが外され秒読み開始。

5、4、3、2、1、ゼロ……発射!

ゴゴゴゴゴゴ……

空高く上昇する。景色を見ているゆとりはないけれど、宇宙船の窓の外から差し込む光がだんだん濃い藍色になってゆく。頭の片隅に、宇宙船の爆発事故の映像がよぎる。神様!

地球から月までは384,400km

そして、地球と火星が最接近するのは約2年2ヶ月ごとでその距離7,528万km

そのほとんどを宇宙船の中で過ごさなければならない。

「宇宙船が無事月への軌道上に乗ったわ」

私たちが安心したのも束の間。警報アラームが鳴り響いた。

「どうしました?」

すかさず地上の管制塔から連絡が入る。

「デブリの穴があいたようです。船外に出て修理します」

男たちは二人でエアロックへ入って行った。宇宙服に命綱をつけて、安全確認を怠らない。

小さな宇宙ゴミが宇宙船に穴をあけていた。地球の衛星軌道上を周回している人工物体が無数にあるのだ。探査衛星や気象衛星のように現在使用されているもの以外の人工物体をスペースデブリと呼ぶ。

空気が漏れないように彼らは応急処置で穴をシリコンゴムで固めると、宇宙船と同じ材質の板とビスで補強した。

「成功しました」

デビッドの報告に、地上の管制塔から喜びの声が響いた。

私もほっとした。

長い宇宙船の旅は孤独との闘いだった。やっぱり地球に帰りたい。宇宙船の窓からそっと地球を見て想った。

いやいや、そんなこと言ってられない。私たちはたくさんの人たちの希望を背負っている。

余計な感傷はそのくらいにして、冒険への憧れで心を満たそう!


まず、無事に月へ降り立った。あらかじめ指定されている場所に記念の旗を立てる。ここにあとからいろんな人が来て、開拓してゆくんだと思ったら胸が熱くなった。ここまで来た甲斐があった。達成感が満たされた。

空に地球が満ち欠けしている。不思議な感覚。

一部の物資をここに置いて行く。

月の砂レゴリスを3Dプリンターで建物の形に作る。建物内に酸素発生装置を設置。火星へ行って戻ってきた頃には居住可能になっているという寸法だ。

AI搭載のロボットが数体作業に取り組むのだ。

「頼むぞ!」

みんなが盛り上がっているとき、私だけまたあのUFO を見た。

知っているのかしら?私だけに気づかれていることを。

もし、宇宙人がいて、私たちを見ていたらどんなことを思うのだろう?

よく思わないかもしれない。そしたらどうしたら良いだろう?

できるだけ友好的な関係が望めればいいけれど。

「さあ、次は火星だ!」

再び宇宙船の旅が始まった。

長い長い旅。地球も遠く離れて小さくなった。ときどき地球の管制塔と通信をやりとりするが、タイムラグでなかなか意思疎通ができなかった。

「磁気嵐だ。通信装置を安全な場所に格納して!」

また船外活動。磁気嵐に宇宙船が流されないように操縦席に私とデビッドは残り、ジェイムズが1人で船外の通信器を格納した。

ほっとしていたその時。

ずしん。予期せぬエンジンの振動。

「うわあ、命綱が!」

衝撃でジェイムズの命綱が切れた。幾重にもファイバーが通った頑丈な命綱なのに!

「ジェイムズ!!!」

どうすることもできない。

私たちはクルーを1人失った。

宇宙は無情だ。私たちは嘆き悲しんだ。


火星に着いた。

広大な景色。火星の衛星フォボスとダイモスが遥かに迫る。大迫力の世界。

月と同じく地表に大気は無い。

「アンナ。氷があるから、ここには生命体がいるかもしれないよ」

「火星人?!タコのおばけみたいなの」

「発想が古いなあ」

「じゃあ、デビッドはどんな生命体だと思うの?」

「ピンク色で目が3つ。ナメクジみたいな外見。ほら、少なくとも、あんな風に紫のタコじゃない」

そう言ってデビッドが指差したのは、本物の宇宙人だった。

「あわわ」

デビッドは焦って私の後ろに隠れた。

本当に、本物!

さてどうしよう?会話は通じないの?

「翻訳器は?」

「一応あるけど言語のサンプル取らないと使えない」

「使えないの?!」

軽く頭痛がした。

宇宙人。それも団体様だ。うにょうにょ、うにょうにょ、言っている。

さてどうしたものか?とりあえず宇宙服のカメラでビデオ撮影を始める。

「うにょうにょ、我々の星へようこそ」

なんだ。喋れるの。思わずガクッと気が緩んだ。

「うにょうにょ、まず、彼をお返ししましょう」

「ジェイムズ!」

「やあ」

ちょっとだけばつがわるそうに、ジェイムズ登場。

「生きてて何より」

思わぬ再会に私たちは嬉し涙を流した。

最新型の宇宙服は、汗や排泄物を分解して酸素や水を半永久的に供給するシステムだ。だから、彼の生存率が高かった。命綱が切れた後、宇宙人たちに保護されて生きて再会できたのだ。聞くと、食糧を宇宙人たちが調達してくれていたらしい。なんて親切なのだろう!

「うにょうにょ、彼、ジェイムズから聞きました。地球人は宇宙開発をするのだと。しかし、この星は我々の居住地。あなた方に荒らされては困ります」

「荒らすつもりはないの。ただ、私たちが住める場所を探しているだけよ」

「うにょうにょ、あなた方には地球以上に住み心地の良い星はないのでは?」

「地球に住めなくなる前に引っ越し先を探したいの」

「うにょうにょ、住めなくなるのですか?」

「長い目で見てそうなのです。いわば、これは保険なのです」

「うにょうにょ、なるほど」

宇宙人たちはしばらく自分たちだけでうにょうにょ、ザワザワ話していた。

「うにょうにょ、あなた方3人が地球の代表なら、私たちも3人代表を選びます」

地球の代表?どうしようかと私たちはオタオタしたけれど、すぐに腹を括った。

「地球の管制塔宛に映像を送り続けよう」

デビッドがそう提案して、私たちは宇宙人たちとの会話を全て録画・送信した。

「うにょうにょ、私、悪いかせーじん」

「うにょうにょ、私、良いかせーじん」

「うにょうにょ、私、普通の火星人」

代表の3人はそれぞれそう自己紹介した。

「どうする?悪い火星人は論外として、良い火星人と普通の火星人のどちらと主に話す?」

「良い火星人は口先だけかもね。普通の火星人と話そう。僕たちも普通の地球人だから」

私たちはそう話し合った。

「うにょうにょ、我々はアンナさんとお話したいです」

「え?私。なぜ?」

「うにょうにょ、実は長いこといつも見ていました」

ああやっぱりそうだったんだ!気のせいじゃなかったんだ。

「アンナ、がんばれ。俺たちも助け舟は出すから」

デビッドとジェイムズが言った。

「うにょうにょ、地球が住めなくなるとは災難ですね。我々も他人事ではありません」

「ありがとう」

「うにょうにょ、宇宙開発とは、他の星の環境をテラフォーミング化、つまり、地球の環境に変えることですね?」

「ええ、そうよ」

「うにょうにょ、では、真空の状態でしか生きられない我々はそこに住めなくなる」

「地球へ度々私たちの様子を見に行った時はどうしてたの?」

「うにょうにょ、宇宙船……あなた方の言うUFO の内部を真空に保っていました。それに、我々の科学でしばらくなら地球上でも活動できるのです」

宇宙人の科学!!それは私たち地球人よりも数段進んだものに違いなかった。

「その科学とやらで地球を救ってくれないか?」

とデビッドが言いました。

「うにょうにょ、なんでもはできないよーん」

すかさず悪い火星人が横から言った。さすがにむしがよすぎるお願いよね。

「では、他の星を紹介してもらえないかな?」

ジェイムズが言った。

「うにょうにょ、お安い御用です」

良い火星人が応えた。

それから私たちは、火星人たちの好意に甘えて、私たちの乗ってきた宇宙船より移動速度の速いUFO に乗って、太陽系を散歩した。

あまりに広大すぎて目がまわりそうだった。

土星の輪。木星の大赤斑。冷え固まっている星、熱く燃えたぎっている星、ガスの大気が渦巻いている星、エトセトラ、エトセトラ。

「星によって重力や大気などの条件が様々だが、どこかには住めるようにできるかもしれない。それに移住用の宇宙艇を改造してそこで暮らし、資源や物資を近くの星から調達することもできるだろう」

デビッドが言いました。

「私たちに協力してもらえますか?」

と、私が尋ねたら、

「うにょうにょ、我々と友好関係を結んでもらえればいくらでも!」

と3人の火星人はそろって応えた。良い火星人も悪い火星人も普通の火星人も同じ思いでいてくれた。

「もちろん。もちろんよ!」

嬉しくて私たちは笑った。


どこまでも広がる深淵の宇宙。その片隅で私たちは希望に向かっていた。


タイムラグを経て、地球の管制塔に私のメッセージが届いた。

もしもし、惑星地球。聞こえますか?私たちは今、頑張っています。朗報を持って帰るから、待っていてください。みんなの危機にどうか間に合いますように!

頼もしい火星人のお友達ができました。彼らと友好関係を結んで、共同で宇宙開発していきましょう。

メッセージと共に、火星人たちとのやり取りの一部始終の記録が地球に届いて、地球でちょっとしたセンセーショナルを巻き起こした。火星人の姿形を偏見の目で見る人たちも相変わらずいたけれど、徐々にお友達として受け入れられていった。









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