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異世界還りのおっさんは終末世界で無双する【漫画版5巻6/25発売!!】  作者: 羽々音色
二章

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六十七話


「新しい場所かー。洋服とか置いてあるかなー。」


「割と沢山あったぞ。」


「えっ!先輩それほんとですか?」


夕食を終えて、ユキとカエデはいつものように俺の部屋にきていた。


「あぁ、そこそこの大きさの店舗だしな。結構色んなテナントが入っていたぞ。と言うかユキは行ったことくらいあるんじゃないか?」


すでに避難民にも拠点移動の件については伝えられている。

ユキはその先がデパートと知って、少しワクワクとした様子だった。

普通ならば不安が先立つものだろうが、そこは信頼する織田さん達が決めたことだとあってか、そんなそぶりは見せなかった。

もしかしたら、目の前にいるカエデを不安にさせたくはない、と強がっているだけかもしれないが。


そんなカエデはといえば、足を崩し女の子座りで床に手をついて、俺の方をじぃと見ていた。


「……どうした?」


「あっ……いえ、どんなところなのかなと思いまして。」


「取り敢えず見た感じは安全そうだ。何より、さっき織田さん達も言っていたが、物資が大量にある。しばらく引きこもっても問題ないくらいにはな。」


「そうなんですか。それは、良いですね。」


「あぁ。」


外に出なくても大丈夫、それは織田さん達がこれから先今までほどのリスクを負わずに済むということでもある。

食糧調達に出るのは警察官達だから別にその理由自体はカエデには関係ないのだが、彼らを慮ったのだろうカエデはそう言った。

しかしやはり不安もあるのだろう、その表情には、多少曇りも見受けられた。


「移動に関しても問題はないとは思うし、まあそう不安がるな。」


「そうだよー。織田さん達に任せておけば大丈夫だよ。」


「ユキの言う通りだ。」


「……はい。」


俺とユキの言葉にそう返事をしながらも、未だ何かを含んだ視線を向けるカエデだったが、まあ無事に向こうについて生活すればそれもなくなるだろう。


「心配するな。俺も手伝うしな。」


「はぁ……心配するなって、カエデちゃんは、先輩のことも心配なんですからね。あんまり無茶しないでくださいね。」


ユキがため息をついてそう言うと、カエデはなんだか複雑な表情をして、少しだけ顔をほころばせながらこくりと頷いた。


+++++


一日を挟み、ついにデパートへの移動日になった。

それだけの時間がかかったのは、あちら側に持っていく物の整理に手間取ったからだ。


それは主に向こう側には無い武器の類で、特に今の装備品である斧や拳銃以外にも、押収物保管庫にある強力な銃器の類がそれであった。

勿論機動隊の防具やライオットシールド、またドローンなどの機械の類もあり、その量はかなりのものだ。

全てを持っていくことはさすがに無理があると判断して、それの選別にも時間がかかった。


避難民の移動、物資の運搬、それには長い時間がかかる。

作戦の開始は日も昇り始めた早朝からのものとなった。


いつもの外出の手順を踏み、全ての男性警察官達と共に外へと繰り出す。

まずはデパートの安全の再確認からだ。


この作業が一番時間がかかると言ってもいい。

広い店内をグループ分けして再度探索していく。

地下フロアは暗いため、最後に全員での探索となる。

もっともこの数日で、全てのフロアは一度織田さん達と見回ってはいるのだが。


他の警察官達はこの場所が初見だけに、かなり緊張した面持ちだ。

僅かな音も聞き逃さないよう、静かに、しかし迅速に隅々まで調べていく。


それだけで、すでに時計の針はとっくに昼を回っていた。


安全確認を終えて、次は避難民達の移動となる。

武器の類はある程度はこちらに来るときに一緒に持ってきてはいるが、まだ運んで来ていないものもたくさんあった。


「さすがに今日中には終わらないかもしれないね。」


「そうだな。」


男性警察官数人をデパートに残して、二台の車はまた警察署へと戻る。

道すがら、ハンドルを握る織田さんの言葉に俺は頷いた。


「日が落ちたら作業は一旦中止せざるを得ないからね。」


「まあ避難民の移動さえしてしまえば、後はどうとでもなるだろう。」


あの避難民達ならパニックを起こすとか、何かそういう問題が起きるようなこともないだろうから、それについても特に心配はしていないのだがな。

常駐警備車である程度一気に運ぶつもりだから、時間もそこまではかからないだろう。


むしろ時間がかかりそうなのは、警察署に溜め込んである物資の運搬作業の方か。

置いていくという選択肢もないわけではないが、やはり食料はあればあるだけいい。

それを捨てるような真似はしたくはないのだろう。


「なんとかなるさ。俺も最後まで手伝う。」


「柳木さん、ありがとう。よろしく頼むよ。」


俺の言葉に、織田さんはそう言って笑った。


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