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異世界還りのおっさんは終末世界で無双する【漫画版5巻6/25発売!!】  作者: 羽々音色
二章

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六十六話


「みんなの、率直な意見を聞きたい。」


会議室、多くの警察官が集まる中、織田さんが口を開いた。


例の半グレのアジトであった、デパートでの初の食糧調達から数日が経った。

俺からすれば当たり前の話だが、結局織田さんが残した書き置きには何の反応もなく、それを触った形跡もなく、誰かしらがあの建物にいるという可能性は極めて低いという結論に達した。


また建物内の探索はほぼ全てが終わり、あのデパートはかなり安全なのではないか、ということにもなった。


それを踏まえての織田さんが出した提案は、この警察署を出て、あちらに移動するのはどうかという話だった。


勿論あそこを食糧調達場所としながら、ここに留まることも十分に可能だ。

だがいちいちそれをこちらに運び込むのは非常に効率が悪い。

織田さんがそう判断するほどに、あのデパートにはそれだけ大量の物資があった。

……まあ、はっきり言って多少不自然なほどに俺が運び込んでいたからな。


懸念の材料は主に三つ。


避難民を移動させる時のリスクと、そして未だ動きのない敵対グループの存在、最後にあのデパート内には空薬莢が落ちていたり銃痕が多数残されていたりしていたことだ。


一つ目に関しては、大型輸送車はさすがに駐車場には入らないから使えないが、常駐警備車を使えばそう苦でもないのではないかという話だった。


二つ目に関してはそもそも謎の部分が多く、議論するにしてもどう議論すればいいのかも分からないのが現状だ。

取り調べで大元は名前の知れた半グレグループだと織田さん達も掴んだようだったが、その情報だけでは手の打ちようもない。


最後に三つ目。

戦闘の跡があったのは明白だが、しかしすでにその場には誰もいない。

実際は人と人との戦闘の跡なのだが、ただゾンビ相手に銃器を使ったというだけの話なのではないかと織田さん達はそう結論付けたようだった。


「俺はいいと思うぜ。あれだけの物がありゃしばらく引きこもったって釣りが来る。」


「同感だな。多少掃除の必要もあるだろうし、上手いこと部屋も作ったりはしなきゃならないだろうが。」


髭面と、スキンヘッドの二人が織田さんの提案に賛成の意を示す。


敵対勢力に関しては、ここだろうが向こうだろうが、危険なのは一緒だ。

貯水タンクに水もなければ、自衛隊の救助も未だ来ず期待も出来ない。


またさらに言えば、あの場所を知らぬ誰か、それこそ例の半グレグループに先に占拠されるかも知れない。

そうなっては状況は最悪だ。


それらの意見から警察官の皆も、拠点を移すことに乗り気だった。


「それじゃあ後で避難民達にもこのことを話そう。もう少し内容を詰めようか。」


織田さんは皆の顔を見渡して、そう言った。


+++++


織田さん達が一番の懸念を抱いているのは敵対グループの存在なのだが、それはもうすでに俺が壊滅させている。


そしてその事実を知る俺が一番の懸念を抱いているのは、あの今も留置所にいる色黒鼻ピアスの存在だ。

俺は最近留置所に行き、見張りとの距離が離れているときなどに隙を見て、やつに"威圧"を掛け直している。


そのおかげかやつは未だアジトの場所や、俺のことを言ってはいないようだった。

だがこの"威圧"スキルの残滓が薄まってきたときに、やつはそれを喋る可能性がある。


俺のことを喋るだけならまだいい、すっとぼければいいだけだ。

だがそれと同時にアジトの場所まで喋られると非常に面倒なことになる可能性がある。


あのデパートに移住すればこれから先、織田さん達の安全が今よりも確かなものとなるはずなのだが、その建物がやつらのアジトだったと知った場合、織田さん達はどう行動し、またどう思うだろうか。


おそらくはあの場所を拠点とすることは選ばないのではないだろうか。

また、やつの話した俺のことと共に考えて、いらぬ疑念を抱かれる可能性が十分にあり得る。


あのデパートではなく他の店舗に物資を運び込もうかとも考えたのだが、しかしあれほどの良物件は近くにはなかった。


勿論ただ食糧調達場所にするだけなら、以前のスーパーのように全てにシャッターのある場所を探し中のゾンビを全て排除して同じようにすることはできる。

だが新たに安全な拠点とするのならば話は別だ。


シャッターの閉まったスーパーなど車で突っ込まれたらそれで終わりだ。

だがあのデパートならば二階部分から上を生活場所とすることでたとえそのようなことになっても、その後のゾンビの襲撃からは耐えられる。


その安全が確保された上で、さらにあの併設された立体駐車場から店内に入れるという仕組み。

今いる警察署と違いいらぬゾンビの誘導などせずとも車で比較的安全に出入りが出来る。

また半グレがやっていたように、侵入者に対しても防衛ラインの段階を踏んで対処することもできる。


万が一建物が火事になったとて、一度駐車場に避難してから脱出の目処を立てたりも出来るだろう。


それらを考慮すると、やはりあそこが今の行動範囲内ではおそらくはベストなのだ。


しかしあの色黒鼻ピアスをどうするか。


はっきり言ってしまえば、俺はやつを殺してしまいたかった。

そもそもやつはカエデを襲い、その時点で死して然るべき存在だ。

このコミュニティには必要ない。

無駄飯食らいの、完全なお荷物だ。


織田さん達は、やつをどうするつもりなのだろうか。

拠点を移動する際、ここに置いていってしまうくらいはして欲しいものだ。


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黒井さんは、腹黒い?

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