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異世界還りのおっさんは終末世界で無双する【漫画版5巻6/25発売!!】  作者: 羽々音色
二章

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五十八話


アジトは、駅から少しだけ離れた場所にある、デパートだった。

併設された立体駐車場の入り口にはワゴン車がそれを塞ぐように並べられ、ゾンビの侵入を防いでいる。

一階正面入り口のガラス戸は破られ内部にゾンビの侵入を許しているが、坊主頭の話によれば、中にある階段やエスカレーターをバリケードで塞ぎ、二階から上を拠点としているらしい。


普段の出入りは立体駐車場からしているようで、見張りもそこにいるようだ。


俺は行く手を阻むゾンビ共に少々手こずるふりをしながらも、そこへ近づいて行く。

すでに、駐車場からの視線は感知している。


見つからず行くことも不可能では無かったろうが、関係ない。

入り口を塞ぐワゴンを乗り越えて、坂を進む。

その折り返しに、またワゴン車が並んでいる。


「止まれ。」


台にでも乗っているのだろうか、そのワゴン車の裏から上半身を出して拳銃を構える男が現れた。

その男の言葉通り、俺は歩みを止める。


「アニキ、なんか変な奴が来てますよ。」


無線機か何かで喋っているのだろう、そのワゴンの陰からまた別の男の声が聞こえた。

何度か交信したあと、ワゴン車の裏から、先程無線機で喋っていただろう男が顔を出す。


「おたく、何の用?どこから来たの?」


「……お前達を殺しに来た。」


「あっそ。」


パン、と乾いた音が響くと同時、チュイン、と甲高い音がなる。


「あ?」


殺意を最初から感じてはいたが、随分とあっさり撃つものだな。

まあ殺しに来たなんて物騒なことを言うやつに、向こうも遠慮はしないか。


銃を撃った当人は、おおよそ人に当たったとは思えない音と、弾が当たったはずなのに倒れない俺を見て、間抜けな声をあげた。


「こういう場合は、正当防衛と言えるのかわからんが。悪いが死んでもらう。」


瞬歩で一気に間合いを詰めると跳躍し、やつらの後ろへと回り込む。

そして手に持ったバールを、俺を撃ったやつの肩口から袈裟斬りの要領で振り抜いた。

綺麗に斜めに線が入り、時間差でずるりと血を溢れさせながら身体が二つへと分かれていく。


「っ……」


斬られた男は勿論のこと、隣にいた男も、声が出せなかった。


二つに分かれた体のうち上の部分が滑り落ち、びしゃりと音を立てて地面に着くと、下半身もそれにつられた様にゆっくりと倒れていく。


「ひっ……」


その様を見て、やっと隣の男は小さな悲鳴をあげた。


そしてすぐに、気配感知に新たなアンデッドの反応が生まれる。

先程斬った男だ。

なるほど、坊主頭の言ったことはどうやら本当の様だな。


まともな部位は片腕だけという、新たに生まれたゾンビの頭を片足で踏み潰し、俺は残った男の胸ぐらを掴む。


「お前らのボスは、今どこにいる?」


そして、目を見開き激しく肩で息をしながら怯える男に、そう問いかけた。


+++++


暗い店内にフラッシュライトの光が飛び交い、その中を俺は縦横無尽に駆け回った。

殺意のこもった大きな敵意を全身に浴びながら、魔力を込めたバールでそれを発する人間を一振りで斬り伏せる。


すでにフロア内は生きているものと、新たに生まれたアンデッドが殆ど同じ数だけ存在していた。


「くそっ!全員階段に向かえ!上で叩くぞ!」


誰が言ったか、その言葉でフロアにいた気配が皆非常階段へと向かった。

わざわざまとまってくれるとは、手間が省ける。


俺はゆっくりと階段へと歩みを進めると、その踊り場に立つ集団へと視線を向ける。


「撃て!殺せ!」


その声を合図に、雨のように銃弾が降り注いだ。


そう、雨のように。


「ばっ、化け物……」


全身に魔力を込め、着ている服に魔力を通せば、銃弾など雨と変わらない。

銃声が止み、平然と立つ俺の姿を見て、誰ががぼそりとそう零した。


俺がゆっくりと階段を上ると、数で勝るはずの面々はそれに合わせるかのように後ずさり、ついには上階へと走り出した。


階段を"全段抜かし"で上り、やつらの前へと降り立つ。


「悪いが、一人も逃がすつもりはない。」


そう宣言して、階段を下りながらバールを振る。

振るたびに生者の反応が消えて、アンデッドの反応が生まれていく。


「ゆっ、許してくれ……」


腰を抜かしたのか、階段内にいた最後の生者が踊り場の壁際にへたり込み、そう小さく言っては潤んだ瞳を向ける。

俺は背後に迫ってきた新たに生まれたゾンビの髪の毛を掴み、その男へと放り投げた。


「ま、待っ……ぐうぁ……」


目の前の餌に夢中なゾンビを一瞥して、上の階へと一足飛びに上がる。

これで、この階段は通れないだろう。

後は上の階にいるボスとやらを始末するだけだ。


それにしても、化け物、か。


誰かが零したその言葉に苦笑しながら、俺は歩みを進めるのだった。


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黒井さんは、腹黒い?

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