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十七話


結論から言うと、高校には生存者を発見できなかった。

念のため屋上も見てみたのだが、数匹ゾンビが佇んでいただけだった。


気になるのは、屋上には生活の跡があり、そこにいるゾンビのうち一体が無傷だったように見えたことだ。

頭を飛ばしたのち、失礼だが服を脱がせて体を見たのだがやはり傷らしい傷は見当たらなかった。


頭に傷でも負っていたのを見落としたのだろうか。


人がゾンビ化するには、異世界であれば基本的にゾンビから呪いを受けなければならない。

その呪いが体にまわり死に至る、もしくは呪いを受けた体が死にやがて呪いがまわる、順序はどちらでも構わないのだが、何にせよゾンビからの攻撃を受けねばゾンビ化はしないはずなのだが。


例外として、ネクロマンサーなどが死体に魔力を込めて操ったり、アンデッド化させるということはあるが。


ちなみにだが、ゾンビの呪いはその呪いを打ち消すほどの魔力を持っていれば傷を受けてもゾンビ化の影響は受けない。

俺の持っていたスキル"状態異常無効"でも同様だ。

聖女イーリスのように神官や僧侶であればそれらがないものでも死ぬ前ならば呪いを解き癒すことも可能だ。


カエデの話では、腕を噛まれただけの母親は夜から朝方にかけてのおそらく六時間かそこらでゾンビ化したことになる。

これは随分と呪いが回るのが早いと思う。


例の動画の方はまだ、呪いを送り込む技術は置いておいて、注射器に即死するような毒を入れていたと仮定すれば理解出来るんだが。

死んで抵抗のなくなった身体に呪いはすぐに回るからな。


やはり何かゾンビに違いがあるのか、それとも異世界では皆大小はあれどその身に宿していた魔力がこちらの世界の人間にはないせいで抵抗出来ず呪いが回るのが早いということなのか。


こうして冷静になって考えて見れば、ゾンビ共は素肌は勿論のこと、服の上からも噛み付かれて傷を負っている跡がいくつも見受けられた。


その服が薄いものならまだしも、パンデミックが起きた時期の関係もあるだろう、革ジャンなどの厚手の革製品のものなんかも当然ある。

それらも食い破られていることから、やはり魔力が関係しているとしか思えなかった。


魔力で身体強化でもしない限りそれらを歯で噛み切ろうとすれば、元々の人間のスペックでは先に歯が全て抜けてしまってもおかしくないだろう。

しかし俺の知る異世界のゾンビはその呪いから発する魔力によって、僅かだが身体強化されている。


また、"常在戦場"の気配感知は、確かにこのゾンビ共を"アンデッド"と認識している。

であるならば、それは事実すでに死んでいると言うことでもあり、例えば何かウイルスの類の線は薄いように思う。

死者を動かす、と言うことが魔力や呪い以外に出来るとは思えないからだ。


しかしいずれにせよ、何故この屋上に無傷のゾンビが?


疑問を抱きながらも俺はカエデの高校の探索を終えて、次の目的地へと急ぐのだった。


+++++


市役所への道中にはもう一つ学校があったので寄って見たのだが、そこもカエデの通うはずだった高校と状況は変わらなかった。


避難所はどこも初動で致命的なミスをしてしまったのだろう。

ゾンビに噛まれた奴が避難民の中に一人でも居たらそこでおしまいだからな。

カエデの話では外にはもう多数のゾンビがいたみたいだし、避難所からまた逃げようにも困難だろう。


こうなると、残念だが市役所も期待は出来ないか……


「む?」


もうすぐ市役所へと着くかという頃、大通りを走り抜けようとした矢先、俺は咄嗟に付近の建物の陰に隠れた。


視線感知に反応があったのだ。

ゾンビのものでなく、生者の反応だ。


気配感知と違って、視線感知や危機感知は俺の貧弱な魔力量でも有効範囲はえらく広い。

まあ広いというより、自分にその視線や危機のベクトルが向いていると言えばいいのか、それが届いている時に反応するからなのだが。


「見られたか……?」


この暗闇の中だ、そこらにいるゾンビとそう区別はつかないだろうが、やや不安が募る。

と同時に、まだ生存者がいたことに安堵もした。


視線は今向かっている市役所の方から向けられていたはずだ。

取り敢えずはここからは少し慎重に進むとしよう。

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